ファイル棚に防災用品を。
キングジム社が防災市場に参入した背景と商品へのこだわりに迫る
オフィスにおける高い知名度を誇る「テプラ」や「キングファイル」を代表に、企業向けオフィス用品の開発を手掛ける株式会社キングジム。ファイルや事務用品、デスク用品といった商品展開のイメージが先行する同社ですが、実はオフィス向けの防災用品も手掛けていることはご存知でしょうか。
特に同社のこだわりが詰まった商品が、オフィスの書庫やキャビネットにぴったり収まるA4・A5サイズの箱に防災用品がまとめられた「災害対策セット」シリーズです。弊社が運営するオフィス用品通販サービス「smartoffice(スマートオフィス)」でも販売させていただいている災害対策セットシリーズを開発するに至った背景やこだわりのポイント、そして今後の展望について、営業戦略部 商品課の柘植 史織 様と対談させていただきました。
※インタビュアー:丸山 茜(防災士)
…当サイト運営元であるプラス株式会社ジョインテックスカンパニーにて防災・BCP商材、サービスの企画/推進、専用カタログ「危機対策のキホン」の企画/監修担当
目次
他社とは違う、独創的な商品の開発を強みに持つキングジム社
丸山:キングジム社の商品開発には、どのような特徴があるのでしょうか。
- 柘植 様:
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「独創的な商品を開発し、新たな文化の創造をもって社会に貢献する」を経営理念に掲げているほど、会社全体として商品開発に力を入れています。他社の商品を決して模倣せず、必ずキングジムならではのエッセンスを商品開発に取り入れることを意識しており、それが社内風土に根付いていることが弊社の強みです。
丸山:「災害対策セット」シリーズをはじめ、防災用品の開発を手掛けている営業戦略部商品課とは、どのような部署なのでしょうか。
- 柘植 様:
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実は営業戦略部商品課は、設立からまだ2年ほどの若い部署となります。開発部門ではなく、営業部門に属しながら開発業務を行っていることがポイントで、弊社としても非常にチャレンジングな部署です。
これまでの商品開発とは違った視点、つまり営業目線から新しいカテゴリに挑戦して今売れそうな商材を開発、そして市場へスピーディに投下することを一番のミッションとしています。
丸山:キングジム社といえば、オフィス向けファイルや事務用品のイメージが先行します。そもそもどのようなきっかけで防災用品を手掛けることになったのでしょうか。
- 柘植 様:
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弊社が持つ事務用品の販売ルート上で拡販できる、新しい商材を開発するプロジェクトが立ち上がったことがきっかけです。そして、当時さまざまなカテゴリを検討する中で、「政府による災害時の事業継承計画(BCP)の推進」や「災害帰宅支援マップサービスが普及する」など、じわじわと注目されてきていたカテゴリが「防災」でした。そこで弊社の強みである「オフィスの課題解決」と「防災」を掛け合わせることで、何か新しい商材が開発できるのではないかとのアイデアが出たのです。
そこからは手探りで防災用品の開発に着手していくことになりました。
ポイントは「分散備蓄」。オフィスにおける災害対策の在り方
丸山:オフィスでの災害対策を想定した防災用品の開発にあたり、どのようなポイントを大事にしていましたか。
- 柘植 様:
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オフィスにおける防災用品でキーワードになるのが「分散備蓄」です。これまではオフィス内の防災倉庫にすべての防災用品を備蓄する「集中備蓄」が主流でした。それに対して「分散備蓄」は、ワーキングスペースのあらゆるところに防災用品を分散して備蓄するという考え方です。
この「分散備蓄」のメリットは、災害発生時に企業の防災担当者様が、防災用品を一人ひとりにわざわざ配布しなくてもよい点です。社員自らが、自席からすぐ近くの防災用品を手に取り、そのまま使用できます。
また、もうひとつ考慮した点は、オフィス用の防災用品は誰にでも使用できるものではなくてはならないということです。社員にはアレルギーを持っている人もいれば、英語しか読めない人もいます。社員の多様性を認識した上で、誰もが使用できる防災用品になっていることを確認する必要があります。
丸山:防災用品の「分散備蓄」を進める企業は確かに増えてきましたね。企業の防災担当者の方のひとつのお悩みとして、担当者以外の社員に防災用品の保管場所や備蓄品目を周知できていないという点があります。これでは、いざ災害が起きた時に初動対応に遅れが生じてしまいます。
「分散備蓄」=「災害対策セット」シリーズのように普段から社員の目につく場所に中身がわかるパッケージで保管ができるということは、こういった課題解決にも繋がりますね。
- 柘植 様:
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もうひとつ、オフィスで使える防災用品として考えなければならないことは、「安全に帰宅できるためのアイテムがあるかどうか」です。東日本大震災では、多くの公共交通機関がストップし、復旧まで時間がかかってしまいました。
東京都では帰宅困難者対策条例で一斉帰宅の抑制を掲げているため、帰宅困難者向けの防災用品の重要性がますます高まっています。
オフィスに防災用品が馴染むために。キングジム社のこだわり
丸山:「分散備蓄」というキーワードから、これまでキングジム社ではどのような防災用品を開発してきたのでしょうか。
- 柘植 様:
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これまでオフィス向けの商品を開発してきたノウハウを活かし、A4サイズの棚に収納できる“手元に備える災害対策セット”を開発しました。こちらはシリーズで展開しておりまして、2023年4月現在で13種類のラインナップを揃えています。たとえば、食料・水・トイレなど災害用備蓄として必需品とされているアイテムを1箱にまとめた「災害備蓄セットⅡ」や、オフィスから自宅への帰宅を支援する「災害帰宅セットⅡ」、災害時の体を清潔を保つアイテムを集めた「災害衛生セット」など、お客さまのニーズや働き方に合わせた幅広いラインナップをご用意しています。
丸山:災害対策セットシリーズが、お客さまに支持されている理由は何でしょうか。
- 柘植 様:
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防災用品を備蓄したい、というお客さまの中で多くの方がお悩みなのが、「収納スペースがない」ということです。
一方で、昨今のペーパーレス化を受けて、元々ファイルが収納されていた棚に空きスペースが生まれるようになりました。この空いたスペースへ「防災用品を備蓄できる」ということがお客さまに支持されているポイントであると考えています。またA4・A5サイズであれば、個人の引き出しやロッカーにもスッと置いていただけるので、お客さまに合わせた備蓄が可能になります。
丸山:今年の2月には災害対策セットシリーズの新商品として「災害給水セット」「災害トイレセットⅡ」をリリースされましたよね。新商品はどのように生み出されているのですか。
- 柘植 様:
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商品課内のメンバーでアイデアを持ち寄ったり、さまざまな展示会に足を運び業界内外の方と情報交換をしながら、少しずつ商品を形作っています。そして、お客さまの利用シーンをイメージしながら「帰宅するときには、軍手やナップサックがあるといいよね」「オフィスに泊まるとお風呂に入れないので、臭いが気になるよね」といったディスカッションを重ね、セットの中に詰める防災用品を選定しています。
丸山:災害対策セットシリーズの外装デザインには、どのようなこだわりを持たれていますか。
- 柘植 様:
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オフィスに馴染むような「見せる収納」としてのデザインを意識しています。その一方で、災害発生で慌てているときにパッと見て分かるように、シンプルかつ分かりやすい文字でセット名を記載しています。
また、裏側には英語でもセット名が表記されていまして、英語しか読めない人にも親切なデザインになっています。加えて、もっと防災感を減らしたいという方にとっても、英語表記だとおしゃれ感が増し、よりオフィスに馴染むようにとデザインには工夫を凝らしています。
キングジム社が感じる、卸としてのジョインテックス社の強みとは
丸山:災害対策セットシリーズは、弊社が運営する企業向けオフィス用品通販サービス「smartoffice(スマートオフィス)」でも販売をさせていただいています。
貴社製品は、弊社含めて数多くの販売パートナー様を経由して販売展開をされている。そんな中で、特に弊社に求めていることや、魅力に感じられていることなどはありますでしょうか。
- 柘植 様:
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ジョインテックス社はユーザーダイレクトビジネスを展開されているため、お客さまへの情報提供がスピーディかつ効率的だと感じています。これは他社の代理店様とは違う、ジョインテックス社ならではの強みですね。
また、防災分野に限らず、トータルコーディネイト力も魅力だと思います。防災士の資格を持っている丸山さんをはじめ、それぞれの分野に詳しい方々がいらっしゃるので、多くの商材を取り扱いながらも最適な商品やサービスを組み合わせながらお客さまに提示することができていると思います。
丸山:メーカーではなく、商品を仕入れてお客さまへご提供するという卸の立場だからこそ、さまざまな仕入先様の商品それぞれのこだわりや特徴をしっかりお伝えして、お客さまニーズとのマッチングが最適に行われるように努めています。
貴社同様、弊社も「お客さまのお困りごとは何なのか?」を起点にしています。
防災対策のために「モノ」を購入したいというニーズを持ったお客さまであっても「知識がない・時間がない」だから対策ができていないという担当者様の声も多く、だったらまずはそこを解決するための「コト」が必要なのではないか?ということで、2020年に防災備蓄品選定ツール「サクッとstock」をリリースしました。
すると今度は、「備蓄はしているけど、在庫や期限管理が煩雑で困っている」という担当者様の声が多く上がってきました。そこで2022年にリリースしたのが、防災備蓄品管理ツール「サクッとkeep」です。これらのサービスによって、お客さまの課題を少しでも軽減し、業務効率化のお手伝いができているのではないかと思っています。
さらに同年12月には、防災・BCPに関する情報サイト「キキタイマガジン」をリリースしました。こちらのサイトは防災・BCPに関してさまざまな課題をお持ちの担当者様たちにとって、いわば“百科事典”のような役割を担っています。対策検討の際の情報収集の場としてご活用いただいています。
変化する防災のあり方にあわせ、必要な商品を開発していきたい
丸山:対談の最後に防災分野の将来と、今後の展望をお聞かせください。
- 柘植 様:
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一昔前の防災は「とりあえず防災用品を備えればいい」というくらいの意識だったと思います。しかし、大きな震災や新型コロナウイルスの感染拡大といった社会の変化を受けて、防災のあり方がアップデートされたのではないでしょうか。
そして今後も、社会環境が変化するたびに防災のあり方が常に変わっていくはずです。私たちキングジムは、積極的に新しい情報を仕入れ、時流にあった災害対策とそのために必要な商品ラインナップ拡充に力を入れていきたいですね。
丸山:キングジム社のスピード感ある開発だけでなく、アイデアレベルの高さは非常に魅力的だと感じています。また、オフィスワーカーの方たちからの認知度が高いこともポイントですよね。そこに弊社の強みをかけ合わせ、今後も企業の防災における課題解決に取り組んでいければと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
弊社が運営する企業向けオフィス用品通販サービス「smartoffice(スマートオフィス)」では、本日ご紹介いただいたキングジム様の「災害対策セット」シリーズを含めた【シーン別!オフィスのための防災用品特集ページ】を開設しております。ぜひこちらのページもご覧いただき、皆様の防災・BCP対策にお役立てください。