「防災×アウトドア」キャンプグッズの利点を活かした
防災市場へのアプローチ
「Enjoy Outing!(エンジョイ・アウティング!)」を合言葉に掲げ、メイプルリーフのロゴで親しまれる日本発のアウトドアブランド「LOGOS(ロゴス)」を手掛ける株式会社ロゴスコーポレーション。主にキャンプ初心者の方やファミリー層をターゲットとしたキャンプグッズを展開する一方、「キャンプグッズ ✕ 防災」を意識した商品開発やキャンプグッズの活用方法を提案していることをご存知でしょうか。
ロゴスが防災を意識するようになったきっかけや商品開発に対する思い、そしておすすめしたいキャンプグッズの防災利用について、株式会社ロゴスコーポレーションで取締役専務執行役員を務めている吉田 良治 様と対談させていただきました。
目次
海辺5メートルから標高800メートルまでのエリアを意識したキャンプグッズ
丸山:アウトドアブランドの「LOGOS」といえば、メイプルの葉のロゴを思い浮かべます。
改めて、ブランドに込められた思いについてお聞かせください。
吉田 様:
弊社の創業は1928年、つまりあと3年で100年目を迎える、歴史ある会社です。キャンプグッズを展開し始めたのが1985年のことで、アウトドアブランドの「LOGOS」もその頃に生まれました。「Enjoy Outing!(エンジョイ・アウティング!)」、つまり「アウトドアを楽しもう!」を合言葉に掲げており、アウトドアと人をつなぐこと、そしてアウトドアのさまざまな楽しみやスタイルを提案しつづけることをミッションとしています。
丸山:キャンプグッズを開発する上で、どのような考え方を大事にしているのでしょうか。
吉田 様:
ファミリーブランドLOGOSのモノづくりはすべて、「海辺5メートルから標高800メートルまで」のエリアで使われることを意識しています。海辺から5メートルよりも海側に行くとマリンスポーツの領域で、筑波山くらいの標高800メートルよりも高くなると登山の領域です。マリンスポーツや登山のアイテムではなく、軽いハイキングやライトなキャンプを楽しむ、キャンプ初心者の方やファミリー層をターゲットとしています。
お父さん、お母さん、お子さん、おじいさん、おばあさん、家族みんなが笑顔になるようなアウトドアブランドであり続けていくことは、ブランド立ち上げ当初から変わっていません。
阪神・淡路大震災をきっかけにスタートした「キャンプグッズ ✕ 防災」
丸山:
「備えるキャンプグッズ」と題したWeb特集や、「アウトドアブランドだからこそできる防災グッズ」をコンセプトにした商品開発など、ロゴスでは「キャンプグッズ✕ 防災」という視点での提案もされています。そもそもどのようなきっかけから防災市場への商品展開が始まったのでしょうか。
吉田 様:
きっかけは1995年の阪神・淡路大震災です。当時から大阪に本社を置いていたため、弊社の社員も相当数が被災しました。揺れで家屋が倒壊しただけでなく、大規模な火災が発生したこともあり、多くの被災者が住む場所を失いました。
当時も避難所は開設されていましたが、現在ほど整備や備蓄がされておらず、また避難所のキャパシティを超えてしまった地域もあったため、避難所ではない公園や空き地で寝泊まりをする被災者の方々が続出したのです。そうした状況を受け、弊社では行政からの要請に応える形でテントや寝袋、ランタンなどのキャンプグッズを避難用の支援物資として提供しました。
こうした経験から「キャンプグッズ ✕ 防災」を会社として意識するようになったのです。そして阪神・淡路大震災から10年が経った2005年、「アウトドアブランドだからこそできる防災グッズ」のコンセプトをもとに開発された新たなシリーズ「LOGOS LIFE LINE」のキャンプグッズがリリースされました。さらに既存のキャンプグッズについても、災害時にどのように役立つかを考え、お客さまに伝えるようになりました。
「小さく収納、大きく使用」。キャンプグッズと防災用品の共通点
丸山:キャップグッズと防災用品は、どのような要素に親和性があるのでしょうか。
吉田 様:
現在、キャンプグッズを開発するうえで重要なポイントは、「大きく使う」と「小さく収納する」をうまく両立させることです。バブル景気の1990年代、つまり第一次キャンプブームの頃は大きな車が好まれたように、キャンプグッズもサイズが大きいものが主流だったのですが、最近では都市部に住む方々も週末にアウトドアを楽しむことが増えた結果、自宅でもコンパクトに収納できるキャンプグッズの人気が高まってきたのです。
この考えは普段は小さく備蓄し、いざという時でも快適に使用できることが重要である防災用品と似ていると思います。
丸山:2024年の能登半島地震では、避難所になった体育館の中に200以上のテントが並んだ様子がメディアで報道されました。テントのおかげで世帯ごとに居住スペースを明確に区切ることができ、プライバシーも守られます。以前はブルーシートの上に毛布を敷き、段ボールで簡易的に仕切るだけの避難所も珍しくなかったことを考えると、地域の災害対策は着実に進んでいるなと感じます。
吉田 様:
特にファミリー向けに開発されたLOGOSの製品は、キャンプ初心者でも簡単に扱えるような工夫がされています。たとえば「Q-TOP フルシェード」という商品は、フレームとテントが一体となっているため、誰でもワンアクションで簡単に設営することができます。当然、避難所のスタッフ全員がキャンプ経験者ではありませんので、組み立てやすいことは災害時において大きなメリットですね。
発災から72時間を生き残るために。ロゴスが提案する防災用品
丸山:防災グッズとして企画された「LOGOS LIFE LINE」をはじめ、防災にも活用できるLOGOSのキャンプグッズは、どのような考えから開発されているのでしょうか。
吉田 様:
「発災から72時間」を生き延びるために役立つことを重視して開発しています。一般的に自然災害が発生してから72時間が人命救助におけるタイムリミットの目安であり、それ以上時間が経過すると生存率が大幅に低下するとされています。これは「72時間の壁」と呼ばれていますが、この壁を乗り越えて生き延びるためのモノづくりをしてきました。
丸山:防災にも活用できるLOGOSのキャンプグッズは数多くありますよね。そのなかでも特に吉田 様が推すキャンプグッズと、その活用シーンを教えてください。
吉田 様:
まずご紹介したいのが強力な保冷剤である「氷点下パック®︎シリーズ」です。一般的な保冷剤と比べ、保冷力の持続時間が約8倍も長く、災害時や急な停電でも冷凍庫内を冷やし続けることができます。2011年の東日本大震災直後に首都圏で実施された計画停電の際に注目されたのが「氷点下パック®︎シリーズ」です。実際にご利用いただいたお客さまからは「停電になっても、冷凍庫内は冷凍状態のままだった」という声をいただきました。
もうひとつご紹介したいのが「LOGOS シェイク洗濯袋」です。もともとは電気がないキャンプ場でも洗濯板を使わず、簡単に洗濯できる商品として開発されました。能登半島地震でも飲料水は比較的早くに給水されましたが、断水のために生活用水が復旧するまでは時間がかかりました。そのため断水地域から金沢市まで行き、コインランドリーで洗濯をしたという被災者の方もいたそうです。
そこで経済産業省からの要請を受け、「LOGOS シェイク洗濯袋」の在庫の全量を被災地に支援物資として提供させていただきました。つい後回しにしがちですが、洗濯は快適な日常生活に必要不可欠ですので、備蓄対策を考える際に思い出していただけると嬉しいですね。
いざという時にも使っていただける、愛される商品開発を
丸山:キャンプグッズを防災用品として活用していくうえでのアドバイスをいただけますか。
吉田 様:
防災用品はただ備蓄するのではなく、定期的にメンテナンスすることが大事です。そうした意味で、キャンプは防災用品を試してみるよい機会にもなると思います。たとえば手回し充電式のランタンを使ってみたり、川遊びのあとに水と電池があれば使える簡易シャワーを使ったりと、防災用品にもなるキャンプグッズの使い方をあらかじめ覚えておくことで、いざという時に慌てずに済みます。キャンプを楽しみつつ備えることで、防災をより身近な存在にできるのではないでしょうか。
丸山:取材の最後に「キャンプグッズ ✕ 防災」の今後の展望をお聞かせください。
吉田 様:
「海辺5メートルから標高800メートルまで」を意識したLOGOSのモノづくりは、お客さまに愛されてこそ成り立ちます。そして、お客さまに愛される商品でなければ、生命に関わる有事に使っていただけません。そのためにもキャンプに行くときだけでなく、日常からお客さまに愛していただける、見た目も機能も優れた商品開発を今後も深めていきます。
※インタビュアー:丸山 茜(防災士)
当サイトの運営元であるプラス株式会社ジョインテックスカンパニーにて防災・BCP商材、サービスの企画/推進、「危機対策のキホン」カタログ、オウンドメディアサイト「もっとキキタイマガジン」の企画/監修