【学校の暑さ対策7選】登下校・部活動・運動会など場面別のポイント

夏季の気温上昇に伴い、学校現場における暑さ対策の重要性は年々高まっています。特に登下校や運動会、校外学習といった屋外活動では、短時間でも熱中症のリスクが高まり、重大な事故につながるおそれがあります。
一方で、「具体的に何をすればよいのか分からない」「現場で実行できる対策を知りたい」と悩む学校職員の方も少なくありません。
本記事では、学校における暑さ対策を紹介し、登下校や屋外活動などの場面別で注意すべきポイントについても具体的に解説します。
目次
学校で暑さ対策が必要な理由
日本スポーツ振興センター(JSC)の災害共済給付データ(医療費、過去3年間)によると、学校の管理下における熱中症の発生件数は、幼稚園・小学校・中学校・高等学校などを合算すると年間およそ3,000件前後で推移しています(2022〜2024年度)。
参考:熱中症データを見る|日本スポーツ振興センター(JSC)
文部科学省でも、全国の学校に熱中症対策を行うよう求めており、学校が組織として取り組むべき安全管理の基本になりました。
参考:「学校における熱中症対策ガイドライン作成の手引き」について(令和6年4月更新):文部科学省
子どもは大人より熱中症リスクが高い
児童生徒は発達段階によって体温調節機能や体調管理能力に差があり、特に低学年ほど暑さの影響を受けやすい傾向があります。また、自分で体調不良をうまく伝えられないこともあり、気づいたときには症状が進行しているケースもあります。
教育活動の質を維持するため
気温が高い環境では、児童生徒の集中力や判断力が低下しやすくなります。その結果、授業の理解度や学習効率にも影響が出やすくなります。
また、体調不良による離脱が増えることで、授業進行にも支障が出ることがあります。授業の質を保つためにも、暑さ対策は欠かせない取り組みです。
屋外活動では特にリスクが高まる
登下校、運動会、校外学習など、学校生活には空調のない屋外で長時間過ごす場面が多くあります。直射日光や地面からの照り返しが加わるため、気温がそれほど高くなくても、暑さの影響を受けやすいことがあります。
熱中症は屋内でも発生する
JSCのデータによると、学校での熱中症の約2割強が校舎内(教室・体育館・廊下など)で発生しています。近年は教室へのエアコン設置が進んでいるものの、体育館などの大型施設では冷房設備が未整備、もしくは十分に機能しないケースも少なくありません。全校集会や屋内での体育活動など、多人数が集まる場面では体感温度がさらに上昇します。屋内だから大丈夫という思い込みから、重大な事故につながる可能性があります。
公立学校施設の空調(冷房)設備設置状況について(令和6年9月1日現在)|文部科学省[PDF]
暑さ対策の基本はWBGTの把握
学校の暑さ対策は、まず「暑さを数値で見える化すること」から始まりますその指標となるのがWBGT(暑さ指数)です。。WBGTは気温だけでなく、湿度や輻射熱を含めた総合的な指標で、活動の可否を決めるもっとも信頼性の高い基準とされています。
文部科学省「学校における熱中症対策ガイドライン作成の手引き(概要)」(令和6年4月更新)では、暑さ指数に応じた注意事項と熱中症予防運動指針を以下のように整理しています。

出典:学校における熱中症対策ガイドライン作成の手引き(概要)(令和6年4月更新)|文部科学省 [PDF]
環境省の「熱中症予防情報サイト」では、地域ごとのWBGTの実況値・予測値を確認できます。これは観測地点のデータであり、校庭や体育館など実際の活動場所の状況とは異なる場合があります。そのため、参考情報として活用しつつ、可能であれば携帯型の測定器を用いて活動場所ごとに計測することが望ましいでしょう。
学校で実施すべき暑さ対策7選
ここからは、学校で取り組むべき暑さ対策を7つ紹介します。
1. エアコンの温度管理の調整
教室ごとに日当たりや人数が異なるため、温度計を設置して実測に基づいた調整を行うのが効果的です。特別教室や少人数教室など空調が未整備の部屋については、使用時間帯の工夫や可搬式冷風機の導入も検討しましょう。「エアコンをつけているから大丈夫」ではなく、室温を定期的に確認する運用が大切です。



2. 遮光・日よけ・通風の工夫
校舎の窓に遮光フィルムやすだれを設置するだけでも、室温の上昇を緩和できます。校庭側の窓にはグリーンカーテンや遮光ネットが有効で、比較的低コストで導入可能です。廊下や昇降口の窓を開放して風の通り道をつくるなど、空調と自然換気を組み合わせる運用も効果があります。



3. 体育館・校庭の設備追加
体育館は構造上、熱がこもりやすく午後にかけてWBGTが急上昇します。大型スポットクーラーや送風機の導入、遮光カーテンの活用で室温上昇を抑えましょう。



校庭では、テント設置やミストシャワー、散水(打ち水)などが有効です。テントについては、通常の白い幕のテントだけでなく、遮熱性能の高いテントも販売されており、より効果的に暑さを軽減できます。


4. 活動中止・変更の判断フロー
現場で判断が遅れる最大の原因は、「誰が決めるのか」が曖昧なことです。管理職→学年主任→担任といった判断・伝達の流れをあらかじめ決め、危機管理マニュアルに明記しておきましょう。校外学習の引率時には、判断に迷った場合は中止・撤退を原則とし、全教職員で共通認識を持つことが大切です。
5. 飲水・体調申告の習慣化
「喉が渇く前に飲む」「体調が悪いと感じたらすぐに先生に伝える」、この2つを繰り返し指導し、習慣として定着させましょう。特に、小学校の低学年ほど体調変化を言葉にしにくいため、「頭が痛い」「気持ち悪い」など具体的な表現を教えておくと、いざというときに訴えやすくなります。
6. 保護者への周知
水筒の準備、帽子の着用、朝食の摂取、十分な睡眠など、家庭での協力が不可欠な対策は多くあります。学校だよりや連絡アプリを通じて、暑さ対策の方針と協力をお願いしたい項目を具体的に伝えましょう。
7. 教職員向け研修とマニュアル整備
熱中症の初期症状の見分け方、応急処置の手順、救急要請の判断基準など、教職員が知っておくべき知識を研修で共有しましょう。年度初めの研修に加え、夏本番前にリマインドを行うと効果的です。マニュアルは判断基準・連絡先・備品の保管場所まで具体的に記載し、「読めば迷わず動ける」レベルに仕上げておくことがポイントです。
【学校生活の場面別】暑さ対策のポイント
暑さ対策は場面によって押さえるべきポイントが異なります。ここでは学校生活の主な4場面ごとに、具体的な対策を整理します。
登下校時
帽子や日傘の使用許可は、直射日光を避ける手軽で効果の高い対策です。近年では、登下校時の暑さ対策としてファン付きウエアを試験的に導入する学校も出てきています。水筒の携行を推奨し、出発前に水分を摂取する習慣づけも家庭と連携して進めましょう。
小学生の通学路には、特に配慮が必要です。日陰が少ないエリアがある場合は、ルートの見直しや見守りボランティアの配置なども検討してください。
授業中
エアコンは「つけていれば安心」ではなく、室温28℃以下を目安に適切な温度管理と換気のバランスをとることが重要です。エアコンだけでは空気を循環させることが難しいため、工場で使用される送風用扇風機を使用し、教室内の空気を循環させることで室内の快適性向上にも役立ちます。
また、気温・湿度が高い日は授業中でも水筒での水分補給を認めるルールを設けておきましょう。担任による体調観察も欠かせず、顔色や発汗の様子など、子ども自身が訴えにくい変化に教職員が気づける体制が基本です。室内の環境把握が難しい場合は周辺の気温・湿度をもとに機器の発する光の色で参考にできるものもあるので、導入を検討しましょう。


体育・部活動
体育の授業では、WBGTの数値に基づいて実施・内容変更・中止を判断する基準を事前に決めておくことが前提です。実施可能と判断した場合でも、運動強度の高いメニューを避ける、持久走をリレー形式に変えるなど、内容面での調整を行い、活動と休憩を短いサイクルで繰り返す運営を行うことが重要です。
体育館の空調設備の設置が十分でない場合は、大型扇風機の導入や移動式のスポットクーラー、気化式冷風機の導入なども検討しましょう。



夏場の部活動は、気温がピークとなる日中を避けて朝や夕方に活動時間をずらすことが基本です。顧問には「WBGT○○以上で練習中止」など、個人の感覚に頼らない明確な判断基準を持たせることが不可欠です。
活動中は一定時間ごとに強制的に休憩を入れるルールを設け、生徒の自己申告だけに頼らない仕組みにすることが求められます。激しい運動の場合には、 30分に1回以上休憩をとることが望ましいとされています。
運動会・屋外行事
運動会などの学校行事では、長時間屋外で活動するため、熱中症リスクが高まります。競技中だけでなく、待機中や応援時にも体温が上昇しやすく、注意が必要です。
対策としては、児童生徒席へのテント設置や、こまめな休憩・給水時間の確保が基本です。スポーツドリンクや塩分入りタブレットなどの活用も行い、適度に塩分の摂取ができる環境を設けるとよいでしょう。あわせて、炎天下での待機時間を減らすようプログラムを見直すことを検討します。
また、WBGTや気温に応じて競技内容の変更・短縮・中止を判断する基準を事前に決めておくことも重要です。



万が一学校で熱中症が起きた場合の対処方法
熱中症が疑われたら、次のことを行いましょう。
- 涼しい場所へ移動
- 衣服をゆるめて首・脇・太ももの付け根を冷やす
- 意識があれば水分・塩分を補給
この3ステップを迷わず実行することが基本です。救急車の到着は、猛暑日の出動集中時期や校外学習中などでは、時間がかかるケースもあります。
そこで、現場で冷却を続けられる備えが欠かせません。保健室はもちろん、引率バッグや救護テントにも、冷却パック、冷却タオル、経口補水液、体温計をまとめた応急セットを配備しておきましょう。市販の熱中症応急キットを活用すれば一式まとめて管理でき、いざというときに迷わず対応できます。



学校の暑さ対策は体制・設備など複数のポイントで対応

学校の暑さ対策は、WBGTによる判断基準の整備を土台に進めます。
そのうえで、授業・体育・部活・登下校といった場面ごとの対策、テントやミスト・エアコン・温湿度アラームなどの環境整備、そして教職員・児童生徒・保護者への指導と周知を組み合わせて進めることが重要です。万が一に備え、冷却パックや経口補水液などの応急セットを保健室だけでなく引率バッグや救護テントにも配備しておきましょう。
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