事務所荒らしの手口と対策|狙われやすいオフィスの特徴と防犯のポイント

休日や夜間のオフィスを狙った事務所荒らしは、金品の盗難だけでなく、顧客情報や機密データの流出リスクも伴う深刻な脅威です。実際に、テナントビルや人通りの少ないエリアにある事務所では、防犯対策が不十分なまま被害に遭うケースが後を絶ちません。侵入・窃盗などの犯罪被害については、事業継続を脅かすリスクとして十分に認識されていないケースも見られます。
本記事では、事務所荒らしに狙われやすいオフィスの特徴から具体的な侵入手口、効果的な防犯対策、そして被害を最小化するための体制づくりまで解説していきます。
目次
事務所荒らしに狙われやすいオフィスの特徴
事務所荒らしの犯人は、侵入しやすく、かつ発覚しにくいオフィスを選んで犯行に及びます。ここでは、狙われやすいオフィスの特徴を3つの観点から解説します。
立地・環境面でのリスク要因
立地や周辺環境は、事務所荒らしのターゲット選定に大きく影響します。
人通りが少ないエリア
夜間や休日に人通りが途絶える立地は、犯人にとって理想的な環境です。ビジネス街でも、平日日中は賑わっていても夜間や週末は無人に近い状態になる場所では、侵入作業中に目撃されるリスクが低くなるため、狙われやすくなります。
テナントビル内のオフィス
複数のテナントが入居するビルでは、不特定多数の人が出入りするため、部外者が紛れ込んでも気づかれにくい特徴があります。特に、1階エントランスのセキュリティが甘いビルでは、侵入者が堂々と侵入し、各フロアのテナントを物色することも可能です。
路地裏や目立たない場所
大通りから奥まった場所や、視認性の低い立地も狙われやすくなります。侵入時や犯行中に通行人から見えにくいため、犯人は時間をかけて侵入作業を行うことができます。
セキュリティ面での脆弱性
防犯設備やセキュリティ体制の不備も、事務所荒らしに狙われる大きな要因です。
無人時間帯が長い
夜間や休日に完全に無人になるオフィスは、最も狙われやすいタイプです。特に、定期的に無人になる時間帯が決まっている場合、犯人は下見によってその時間帯を把握し、計画的に犯行に及びます。
防犯カメラや警備システムの不備
防犯カメラが設置されていない、もしくは設置されていても死角が多い、ダミーカメラのみといったケースでは、犯人に「侵入しやすい」と判断されてしまいます。また、警報システムが導入されていないオフィスも、リスクが高まります。
窓や扉の防犯性が低い
古い建物で防犯性の低い錠前を使用している、窓ガラスが一般的なガラスのままといった物理的な脆弱性も問題です。補助錠や防犯フィルムなどの対策が施されていない場合、短時間での侵入を許してしまいます。
業種・規模による違い
業種や会社規模によっても、狙われやすさは変わってきます。
金融・士業などの現金取扱業種
税理士事務所、行政書士事務所、不動産仲介業など、現金や金券を扱う業種は特に狙われやすい傾向があります。顧客から預かった現金や、事務所内に保管された印鑑・重要書類なども犯人のターゲットになります。
IT企業や開発系企業
ノートパソコンやタブレット、サーバー機器など、換金性の高い電子機器が多数ある企業も要注意です。また、これらの機器に保存された顧客データや開発中のソフトウェア情報が盗まれた場合、金銭的被害以上の損失につながる可能性があります。
中小規模のオフィス
大企業に比べて防犯予算が限られている中小企業は、セキュリティ対策が手薄になりがちです。また、従業員数が少なく、夜間警備員を配置していないケースも多いため、狙われやすくなります。
事務所荒らしの主な手口と被害実態
事務所荒らしの犯人は、どのような手口で侵入し、何を狙っているのでしょうか。具体的な手口を知ることで、効果的な対策につなげることができます。
代表的な侵入手口
事務所荒らしで最も多い侵入手口は、以下の3つです。
ガラス破り
窓ガラスを破って侵入する手口は、最も一般的な方法です。バールなどの工具でガラスを割り、クレセント錠(窓の鍵)を開けて侵入します。最近では、ガスバーナーでガラスを溶かして穴を開ける「焼き破り」という手法も報告されています。この手口は比較的短時間で実行でき、1階や低層階のオフィスで多く見られます。
無施錠の出入口からの侵入
意外に多いのが、施錠忘れによる侵入です。従業員が最後に退社する際、裏口や非常口、窓などの施錠確認を怠ったことで侵入を許してしまうケースが少なくありません。また、共用部のトイレや喫煙所の窓が無施錠だったことから侵入されることもあります。
ピッキングやサムターン回し
防犯性の低い古いタイプの錠前に対しては、専用工具を使ったピッキング(鍵穴から解錠)や、ドアの隙間から工具を差し込んでサムターン(内側のつまみ)を回す手口が用いられます。これらの手口は痕跡が残りにくく、侵入に気づかれにくい特徴があります。
犯行が多い時間帯と曜日
事務所荒らしの犯行は、特定の時間帯や曜日に集中する傾向があります。
夜間から早朝(午後10時〜午前6時)
最も多いのは、従業員が退社した後の深夜帯です。周囲も静かになり、人目につきにくくなるこの時間帯は、犯人にとって都合が良い環境といえます。
週末・連休中
土日祝日や年末年始、ゴールデンウィークなどの長期休暇中も狙われやすいタイミングです。オフィスが数日間無人になることを見越して、犯人は時間をかけて犯行に及ぶことができます。
定休日が明確な業種
定休日が決まっている業種(例:水曜定休の不動産会社など)では、その定休日を狙った犯行が起こりやすくなります。犯人は事前に下見を行い、確実に無人になる日時を把握してから実行に移します。
事務所内で狙われるもの
事務所荒らしで盗まれる物品は、主に以下の4つに分類されます。
現金・金券類
小口現金、売上金、商品券、プリペイドカードなど、即座に換金できるものは最優先で狙われます。金庫が設置されていても、持ち運び可能な小型金庫は金庫ごと盗まれるケースもあります。
ノートパソコン・タブレット・スマートフォン
電子機器は換金性が高く、持ち運びも容易なため盗難被害が多い品目です。また、これらの機器に保存された顧客情報や社内機密データが流出するリスクも伴います。パスワード設定がされていても、専門業者に持ち込めばデータを抽出される可能性があります。
顧客情報・機密書類
紙媒体の顧客名簿、契約書、企画書、設計図面なども盗難の対象になります。特に、個人情報保護法の観点から、顧客情報が流出した場合は企業の信頼を大きく損ねる結果につながります。
印鑑・クレジットカード・通帳類
代表者印、銀行印などの重要な印鑑、社用のクレジットカード、銀行通帳なども狙われます。これらが悪用された場合、金銭的被害だけでなく、取引先や金融機関への対応に多大な労力を要することになります。
効果的な事務所荒らし対策
事務所荒らしの被害を防ぐには、侵入を物理的に困難にする対策と、侵入されても被害を最小限に抑える対策の両方が必要です。
侵入を防ぐ物理的対策
まず基本となるのが、物理的に侵入を困難にする対策です。
補助錠の設置
玄関ドアや窓に補助錠を追加することで、侵入に要する時間を大幅に延ばすことができます。犯人の多くは、侵入に5分以上かかると諦める傾向があるため、複数の錠前による「時間稼ぎ」は効果的な抑止力になります。
防犯フィルムの施工
窓ガラスに防犯フィルムを貼ることで、ガラス破りへの耐性が高まります。CPマーク(防犯性能の高い建物部品)認定のフィルムであれば、バールなどでの破壊に5分以上耐える性能があり、侵入を諦めさせる効果が期待できます。
防犯ガラスへの交換
予算に余裕がある場合は、窓ガラス自体を防犯性能の高い複層ガラスに交換することも検討しましょう。特に1階や低層階の窓は優先的に対策を講じる必要があります。
センサーライトの設置
夜間に人の動きを感知して点灯するセンサーライトは、侵入者を威嚇する効果があります。建物外周部や駐車場など、死角になりやすい場所に設置することで、下見段階での抑止力にもつながります。
入退室管理と情報セキュリティ
物理的対策に加えて、入退室管理やデジタル面でのセキュリティ対策も重要です。
防犯カメラの設置
防犯カメラは、犯罪の抑止と証拠保全の両面で効果を発揮します。エントランス、事務室内、金庫周辺など重要箇所には必ず設置しましょう。また、録画映像は最低1ヶ月分保存し、定期的に正常動作を確認することが大切です。
入退室管理システムの導入
ICカードや生体認証を使った入退室管理システムを導入することで、誰がいつ出入りしたかを記録できます。特に、元従業員による犯行を防ぐためには、退職時に確実にアクセス権限を削除する運用が重要です。
クリーンデスクの徹底
退社時には機密書類や貴重品を施錠可能な引き出しやキャビネットに保管し、デスク上には何も置かない「クリーンデスク」を徹底しましょう。これにより、万が一侵入されても、短時間での情報窃取を防ぐことができます。
金品・情報の保管方法
重要な資産は適切に保管することで、被害を最小化できます。
防盗金庫の設置
現金や重要書類は、耐火性だけでなく防盗性能を持つ金庫に保管しましょう。持ち運びが困難な大型金庫や、床や壁に固定できるタイプを選ぶことで、金庫ごと盗まれるリスクを減らせます。
データのバックアップとクラウド化
重要なデータは定期的にバックアップを取り、可能であればクラウドサービスに保管することで、物理的な盗難リスクから切り離すことができます。ノートパソコンが盗まれてもデータは守られる体制を整えましょう。
貴重品の分散保管
すべての現金や貴重品を1箇所にまとめず、複数の場所に分散して保管することも有効です。また、高額現金は極力オフィスに置かず、こまめに銀行に預けるようにしましょう。
被害を最小化する体制づくりと事後対応
万全の対策を講じていても、100%被害を防げるとは限りません。日常的な体制整備と、被害時の適切な対応も重要です。
日常的な防犯チェック体制
防犯対策は導入して終わりではなく、日常的な運用が重要です。
退社時の施錠確認ルール
最終退社者が全ての窓・ドアの施錠を確認するチェックリストを作成し、確実に実施する体制を整えましょう。可能であれば、複数人でのダブルチェック体制が理想的です。
防犯設備の定期点検
防犯カメラの映像が正常に記録されているか、センサーライトが正常に作動するかなど、定期的な動作確認を行いましょう。機器の故障に気づかないまま放置すると、いざという時に役立ちません。
従業員への防犯教育
防犯意識を高めるため、定期的に従業員向けの勉強会や注意喚起を行うことも効果的です。特に、不審者を見かけた際の報告ルートや、SNSでのオフィス情報発信時の注意点などを共有しましょう。
万が一被害に遭った場合の対応手順
被害に気づいた際の初動対応を事前に決めておくことで、被害拡大を防ぎます。
1. すぐに警察へ通報
事務所荒らしの被害に気づいたら、まずは110番通報してください。現場をできるだけそのまま保存し、警察の実況見分に協力することで、犯人検挙の可能性が高まります。
2. 被害状況の確認と記録
盗まれた物品のリストを作成し、防犯カメラ映像があれば速やかに保全します。また、入退室記録やパソコンのログなども重要な証拠になる可能性があります。
3. 関係者への連絡
顧客情報や機密データが流出した可能性がある場合は、速やかに関係者への連絡と対応策の検討が必要です。個人情報保護委員会への報告義務が生じるケースもあるため、専門家に相談しながら進めましょう。
4. 保険会社への連絡
事業者向けの火災保険や盗難保険に加入している場合は、保険会社にも速やかに連絡してください。被害額の補償を受けられる可能性があります。
危機対策における防犯の位置づけ
事務所荒らし対策は、単なる「防犯」の枠を超えて、企業の危機管理・BCP対策の一環として捉えることが重要です。
地震や水害などの災害と同様に、事務所荒らしも事業継続を脅かすリスクです。特に、顧客情報の流出や重要書類の盗難は、金銭的損失以上に企業の信頼を損ね、取引先との関係悪化や訴訟リスクにもつながりかねません。
防災対策と同じように、防犯対策についても平時から計画的に取り組み、予算を確保して段階的に体制を整えていくことが、企業の安全性と信頼性の向上につながります。
総合的な危機対策として事務所荒らし対策を
事務所荒らし対策は、金品の損失を防ぐだけでなく、情報漏えいや事業継続リスクを軽減する重要な取り組みです。紹介した対策を参考に、自社オフィスの脆弱性を洗い出し、優先順位をつけて段階的に防犯体制を強化していきましょう。防災対策と同様に、防犯面でも計画的な備えを進めることが、企業の安全性と信頼性の向上につながります。
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