ホテル宿泊者、そして地域防災に貢献するために。
広島の老舗企業が感じた、災害用備蓄スタンドの可能性
G7広島サミット2023が開催され、ますますインバウンド需要の高まりを見せる広島市。世界遺産にも登録された原爆ドームがある平和記念公園から徒歩5分ほどの好立地に2021年オープンしたホテルが「グランドベース広島平和公園前」です。水害や土砂災害に悩まされてきた広島でホテルを経営する上で、防災への取り組みや地域への貢献は重要な要素であり、その一環として2台の災害用備蓄スタンド「BISTA」を導入いただきました。
同ホテルを経営する、創業から70年以上の歴史がある広島の老舗企業、株式会社光花の会長である花本 泰孝 様と、ホテル経営に携わる沖田 香絵子 様に、防災への取り組みと「BISTA」導入についてお話を伺いました。
目次
ホテル事業を通じて地域に貢献し、「平和の尊さ」を世界に伝えたい
ー 貴社が運営するホテル「グランドベース広島平和公園前」についてお聞かせください。
- 花本 様:
-
弊社は「グランドベース広島平和公園前」が位置する広島市・中区 土橋町で私の祖父が建設業として創業し、地域の皆さまにお世話になりながら今日まで事業を続けることができました。当ホテルがある土地にはもともと弊社が経営する立体駐車場があったのですが、老朽化のため取り壊すことになり、何か新しい施設を建てることになったのです。
そこで選ばれたのがホテル事業でした。弊社にとってホテル経営は初めてのことだったのですが、将来的に海外からインバウンド観光の増加が見込まれたこと、そして原爆ドームからほど近い場所でホテルを経営することは、「平和の尊さを世界に伝える」という被爆地・広島の使命に貢献することでもあると考えたことから、ホテルの建設を決定したのです。
設計にあたっては、3世代家族でも宿泊できるファミリー、グループ向けの部屋の広さを確保し、体が不自由な方でも車椅子で館内と部屋を移動できるよう、バリアフリーであることを意識しました。
また、ホテルの開業が新型コロナウイルスの話題一色であった2021年ということもあり、ホテルの従業員とは非対面のままチェックインやチェックアウト、手荷物預かりができるような設備を採用したことも、大きな特徴です。
水害、土砂災害がたびたび発生する広島の災害リスク
ー 「グランドベース広島平和公園前」の立地と災害リスクについて教えてください。
- 花本 様:
-
広島という街は、市街地を流れる太田川によってできた大きな三角州の上に広がるように発展してきました。中心地域はかつて海だったこともあって高波や津波のリスクも心配ですが、近年特に被害が大きいのが大雨による土砂洪水災害です。直近では平成26年8月豪雨(2014年)、平成30年7月豪雨(2018年)の豪雨による土砂災害が記憶に新しいですね。平成30年7月豪雨による土砂災害では、広島県だけで100名以上の方が亡くなっています。
「グランドベース広島平和公園前」は川からすぐの場所ですので、液状化対策のために普通の建物よりも杭をより深く、より多く打っており、さらには耐震性にも配慮しています。
ー 災害時には、どのような対応を想定されているのでしょうか。
- 沖田 様:
-
宿泊されているお客さまはもちろん、平和記念公園から近い距離にあるホテルであるため、宿泊されていない観光客の方であっても一時的な避難場所として提供する想定でいます。また、「地域防災」の観点から近隣住民の方にも避難場所として開放することも想定しています。災害時の必要物資については、国からの物資支援等も含めて、できる限り提供することも考えています。
防災用品で重視していたのは、発電機と充電器が備わっていること
ー どのようなきっかけから防災用品の導入を検討されたのでしょうか。
- 沖田 様:
-
無事にホテルがオープンして落ち着いてきた頃、防火管理者として消防計画を作成することになりました。その際に、備蓄している災害時用の物資をリスト化していたのですが、消防計画に必要な物資やAEDだけでは不十分ではないかと感じたのです。
また、同じ頃に放送されていたニュースでは、災害時にスマートフォンの充電に列をなしている現場の様子が報道されていたことも印象に残っており、災害に備えた物資の備蓄に加えて非常用電源の備蓄も検討することになりました。
ー 「BISTA」はどのようにお知りになったのでしょうか。また、どのような要素を重視していましたか。
- 沖田 様:
-
大規模災害を経験したスタッフが社内にいなかったため、「災害時本当に必要な備蓄ってなんだろう」という疑問から「災害・備蓄」といったキーワードで検索してみたところ、災害時の初動に必要な備蓄品がオールインワンで揃っている「BISTA」を紹介するWebページを見つけ、まさにこれだと感じました。
防災用品の導入にあたって、最も重視していたのが情報収集手段の確保でした。発電機と充電器で電源を確保することができれば、外国人の方でもお手持ちのスマートフォンで自ら情報を得ることができます。通常のホテル受付は無人ですが、災害時にはすぐに従業員が駆けつけることになっているものの、従業員全員が英語に堪能な訳ではありません。だからこそ、最新の情報はご自身で収集していただき、従業員はそのお手伝いをするという運用体制をとることにしました。
その他に重視したポイントとして、発電機、充電器以外にも衛生用品や簡易トイレなどが一通り揃っていること、新しいホテルに馴染むデザインであることが挙げられます。
花本 様:
-
2022年頃、G7サミット2023が広島で開催されることを機にインバウンド需要の回復が見込まれたため、観光施設向けに補助金が交付されることが決定しました。インバウンド対策として補助金を活用し、英語版のWebサイト構築などとあわせて「BISTA」の導入を決定しています。
非常用電源の確保と、ホテルの雰囲気に馴染むデザインが高評価
ー 災害時には「BISTA」をどのように活用される予定でしょうか。
- 沖田 様:
-
当ホテルは2階建てということ、また宿泊されていない観光客の方も支援したいとの思いから、2台の「BISTA」を販売代理店の株式会社フジビジネス広島さんに注文させていただき、およそ1ヶ月ほどで納入いただきました。ガスボンベも通常より多めに確保し、災害時には地域の充電スポットとして開放できるように整えています。
設置場所としては、従業員とお客さまの目につきやすく、災害時に人が集まれるスペースを選びました。災害時には駆けつけたスタッフが「BISTA」を解錠し、避難されてきた方へ物資を配布することを想定しています。次回の防災訓練では、従業員が実際に「BISTA」に収納されている防災用品を手にとって、その使い方や運用方法を改めて確認する予定です。
ー 実際に「BISTA」をご覧いただき、どのような点を評価いただいていますか。
- 花本 様:
-
導入の決め手でもありましたが、発電機と充電器のセットで、一度に10台のスマートフォンを充電できることが高評価ですね。建築の現場でもよく発電機を使うことがあるのですが、大きな発電機の燃料はガソリンのため、長期保存には向かず、持ち運びや管理が大変です。一方、ガスボンベであれば家庭で扱い慣れていることから、緊急時でも安心して始動させることができます。
沖田 様:
-
ひとつのシンプルな箱に防災用品がまとまっているので、共用部に置いても違和感がないことです。一般的に備蓄する防災用品は、倉庫やオフィスの奥にしまいがちなため、防災用品の存在も防災意識も遠のいてしまいがちですが、いつも目に付く場所に置いておくことで、いざという時でも慌てることはありません。普段から防災を意識することができ、加えて“いかつくない”デザインのため、まだ建設から日が浅い当ホテルにも馴染んでいます。
災害時に地域の方々を助けること、そのために準備すること
ー 「BISTA」の導入を受けて、今後の展望をお聞かせください。
- 沖田 様:
-
私自身、「BISTA」の導入をきっかけに、以前よりも防災を意識するようになりました。そこで地域防災の状況を調べてみたのですが、災害時における企業同士の連携がまだまだ充分ではないように感じられたのです。「どのビルにどんなものが備蓄されているのか」「災害時にそれぞれの企業がどのような役割を果たすのか」「水害時にどのような連携をするのか」といった想定が、正直なところ足りていません。今後は災害が起きた際の準備だけでなく、日頃から防災意識を高めるためにできることを地域の企業同士で考えていければと思います。
花本 様:
-
今回の「BISTA」の導入は、防災における地域貢献にも繋がったと思います。この場所でホテルを経営させていただくことは近隣の皆さまのご理解あってのこと。いざ災害が起きた時に地域の方々を私たちが助けること、そのために日頃から準備することは重要だと考えてきましたので、「BISTA」はまさに私たちが求めていた理想の製品でした。
創業から70年以上もお世話になっている地域の方々に対して、引き続き防災面で貢献させていただきながら、さらには地域の魅力や情報の発信といった観光面での貢献も進めていきたいと思います。
<BISTA導入施設>
・グランドベース広島平和公園前:
https://www.gb-hiroshima-peacememorialpark-hotel.jp/
—————————————————-
<取材にご協力いただいたお客様>
株式会社光花
会長 花本 泰孝 様
沖田 香絵子 様
<担当販売店>
株式会社フジビジネス広島:http://www.fujibusiness.com/
—————————————————-