「災害対策に正解はない」
名古屋市の公共施設を管理運営する株式会社JPNが、
災害時のBCPを策定する中でBISTAを選んだワケ

名古屋市東部地域の指定管理者として、公共のスポーツ施設の管理運営を担っている株式会社JPN
「地域社会への貢献」を掲げ、地域に密着した施設運営に取り組む同社では、災害時を想定した公共施設のBCP(事業継続計画)やDCP(地域継続計画)の策定にも力を入れており、その一環として管理運営している6施設に災害用備蓄スタンド「BISTA」を設置しています。「BISTA」を採用した背景にあった課題や導入までの流れ、そして今後の災害対策のあり方について、同社代表取締役の濱田 英之 様にお話を伺いました。

地域との関係性を重視しながら、公共施設を管理運営するJPN

ー スポーツ・文化施設の指定運営(指定管理者制度)の事業で大切にしている考えをお聞かせください。

濱田 様:

公共施設は、地域の皆さまの生活に根ざした施設です。だからこそ、地域の皆さまにご満足いただけるサービスの提供、愛される施設運営を弊社では目指しています。

特に弊社では、地域の皆さまとの関係性を大事にしており、美化活動やお祭りなどの地域イベントにも積極的に参加・協力をしています。また、弊社では保健センターをはじめ様々な地域サービスを行う公所、団体とも協働し、講師の派遣や企画提供などを実施していることも特徴です。

ー 名古屋市の東部地域は、どのような災害リスクがあるのでしょうか。

濱田 様:

名古屋市中心から車で30分の名古屋市東部地域は、戦後に開発が進められた新興住宅街であり、いわゆるベッドタウンです。もともとは丘陵地帯であった土地が宅地開発されたという背景があるため、南海トラフ地震のような災害時には土砂崩れや液状化の被害が懸念されています

BCP策定委員会を機に、発災時にスタッフ自ら判断できるように

BCP策定委員会で災害時の対応をディスカッション

ー 災害時の公共施設は、どのような役割を担うのでしょうか。また、普段からどのような災害対策に取り組んでいますか。

濱田 様:

弊社で管理運営している施設は、避難所や帰宅困難者の一時受け入れ施設としての役割を担うことになっています。発災時には行政に施設管理の権限を戻すことになるのですが、行政から指示が下るまでは自分たちで判断して行動しなければなりません。そのため、日頃からの訓練と当座の備蓄が重要です。

管理施設での訓練は、年間計画に沿って各施設で実施しています。最近の新しい取り組みとしては、弊社内でBCP策定委員会を立ち上げ、さまざまな緊急事態を想定した対策案のディスカッションと実行プランの策定を行っています。

当座の備蓄に関しては、帰宅困難者を一時的に受け入れ、帰宅の目処が立つまで過ごすことができる状態を想定して準備しています。行政が準備している備蓄品もあるのですが、その備蓄品はそれぞれの施設が担う役割に合わせて準備がなされていますので、弊社ではそれらを補完する物資をBCP策定委員会や施設スタッフで検討し備蓄しています。

ー 公共施設における災害対策について、どのような考えをお持ちですか。

濱田 様:

重要なのは「判断」だと思っています。発災時は指揮命令系統が混乱し、突発的なトラブルが発生することも想定されるため、施設スタッフ一人ひとりが自ら判断し、的確に動かねばなりません。

そして、施設スタッフが正しく判断するために必要になるものの1つは「正しい情報」です。各個人が持っているスマートフォンが常に充電されていて、継続的に使える状態であることは、最新の情報を入手する上で重要だと考えています。また、SOSや安否情報を発信する際にも必要です。

そしてもう1つ、「共助」の考えも重要です。公共施設という役割上、災害時は地域の皆さまの集まる場になります。できるだけ長い間、地域の皆さまが安心して過ごしていただける場をご提供することが、私たち管理側に求められているのではないでしょうか。

帰宅困難者にとって重要なのは、最新情報を得ることと安否の発信

ー 災害用備蓄スタンド「BISTA」の導入背景をお聞かせください。

濱田 様:

弊社で管理運営する施設では、現場が中心に判断し、行政が準備している備蓄品を補完するような物品を備蓄していました。しかし、帰宅困難者を一時的に受け入れる場合の備蓄品は、正直なところ手薄だったと思っています。

実際、BCP対策についての理解を深めていく中で、現場で準備すべき備蓄品は本当に多岐にわたるということが、調べて分かりました。どんな備蓄品を、いくつ用意すべきかを自分たちで想定し、実際に用意するのは大変なことでした。

また、中長期的な停電対応が不十分な点も課題です。世界の災害ニュースを見ても、災害時に停電が起きるとスマートフォンの充電に人々が困っている光景が報道されているのを目にします。当然、災害時には私たちの施設でも同じ光景になるだろうという想定が容易にできます。空調や冷蔵庫、テレビ向けの生活電源までは不要ですが、スマートフォンやPC向けの発電機と充電器は必要であると感じました。

ー 「BISTA」の採用を決めた理由をお聞かせください。

濱田 様:

各施設のBCP対策として、私たちは何を準備すべきか悩んでいたときにご提案いただいたのが「BISTA」でした。

まず感動したポイントが、必要な防災用品がオールインワンにまとまっていることです。およそ50人分の防災用品がコンパクトに収納されており、よく考えられていると感じました。特に50人分という想定は、私たちの施設で試算していた帰宅困難者数ともちょうど合致しています。

また、カセットボンベで動く発電機は想像していたよりも小型であり、従来のガソリンで動く発電機と比べても安全である点は高評価です。
 
さらには帰宅の目処が立つまで過ごすためだけの備蓄ではなく、地域住民の皆さまがご自宅に戻られる際にお渡しするという使い方もできるため、地域に貢献するDCPの観点からも優れていると思います。

AEDのように目に留まる場所に設置し、施設利用者に安心感を

ー 「BISTA」の導入にあたって、他社製品との比較検討はされましたか。

濱田 様:

防災グッズを詰め合わせた、リュックサック型の防災用品の導入も検討しましたが、50人分ものリックサックを置く場所がなく、置けたとしても倉庫になってしまい、そうなると発災してすぐに活用することができません。

一方の「BISTA」は、どこに置いても馴染みやすいシンプルなデザインが良いと思います。正方形のサイズはどこでも置きやすいですし、中に何が入っているか分かりやすい小窓もついているので、地域の皆さまの目につく場所にも置きやすいですね。

リュックサック型の防災用品と比べると、どうしても費用は高くなってしまいますが、私は「BISTA」にAED(自動体外式除細動器)と近いイメージを持っています。一般的な防災用品は発災して初めて役割を持ちますが、AEDや「BISTA」は目に留まるところに設置されることで、施設利用者に「この施設は何かあったときも安心だ」という印象を与える効果が期待できるのです。

災害訓練時に使い方を確認。キャスターで簡単に動かせる点を評価

名古屋市香流橋(かなればし)プールにて

ー 現在の「BISTA」の導入状況をお聞かせください。

濱田 様:

現場への設置は、発注から1,2週間ほどでした。弊社が管理運営している、6箇所のスポーツセンターやプール施設に1台ずつ導入しています。
 
「BISTA」を設置する場所は、現場のスタッフの判断に任せています。AEDと一緒に地域の皆さまの目に見える場所に置いている施設もあれば、職員がすぐに初動対応できる事務室内に置いてあるケースも。「BISTA」にはキャスターが付いていますので、置き場所の変更はとても簡単で、発災時も柔軟に対応できるはずです。

ー 「BISTA」の使い方は、どのように浸透したのでしょうか。

濱田 様:

メーカであるファシル株式会社に、各施設の責任者向けのレクチャーをしていただきました。「BISTA」の理想的な設置の仕方、格納された備蓄品一つひとつの説明と使い方をお話しいただき、説明を受けた責任者が各施設に周知しています。

ー 「BISTA」の活用方法をお聞かせください。

濱田 様:

日常での活用方法としては、災害訓練の際にBISTAを含めた初動確認をし、中身を全部出して一つひとつの使い方を確認する計画になっています。その際に機器の点検や備蓄品の期限確認・入替も行う予定です。

災害対策には正解はないからこそBCPやDCPの策定と備蓄が重要

ー 今後の「BISTA」活用の展望についてお聞かせください。

濱田 様:

「BISTA」には、今後より一層AEDのような役割を期待したいと考えています。今やAEDは公共施設ならどこにでもあり、利用者のほとんどが「心臓に電気ショックを与える救命装置」と認知しています。「BISTA」はまだ導入したばかりですが、今後「災害時に必要な物資が入っている箱」としての認知がさらに広まるとよいなと考えています。

最終的なゴールでは、災害時にはまず「BISTA」のある場所に行けばよいという認識を施設内にも広めていきたいです。

ー 「BISTA」に期待することをお聞かせください。

濱田 様:

繰り返しになりますが、AEDのように、「BISTA」が至る場所に自然と存在するようになるといいですね。「BISTA」の設置場所が増えれば、より多くの人が災害に対する意識を持てるようになり、施設に対する安心感も高まるはずです。そうした意識の高まりが災害対策になり、ひいてはいつか起きると言われている南海トラフ地震対策にも繋がっていくのではないでしょうか。

ー 災害対策に取り組んでいる読者に向けて、メッセージをお願いします。

濱田 様:

災害対策に決まった正解はありません。ここまで備蓄すれば絶対に安心だというボーダーもありません。

だからこそ、みなが当事者意識を持ってディスカッションし、BCPやDCPといった計画を策定すること、そして計画に沿って「BISTA」のような災害用備蓄を準備していくことが重要だと確信しています。

<BISTA導入施設>
・名古屋市緑スポーツセンター:https://www.jpn-sports.com/midori/
・名古屋市東スポーツセンター:https://www.jpn-sports.com/higashi/
・名古屋市千種スポーツセンター:https://www.jpn-sports.com/chikusa/
・名古屋市香流橋プール:https://www.jpn-sports.com/kanarebashi/
・名古屋市志段味スポーツランド:https://www.jpn-sports.com/shidami/
・名古屋市鳴海プール:https://www.jpn-sports.com/narumi/

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<取材にご協力いただいたお客様>
株式会社JPN:https://www.jpn-sports.com/
・濱田代表取締役
・五十嵐様(千種スポーツセンター)
・髙橋様(東スポーツセンター)
・伊藤様(香流橋プール)

<担当販売店>
株式会社押村商会:https://www.oshimura.co.jp/
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