夏の酷暑から従業員を守るために
プラス前橋工場の熱中症ゼロを支える
「アイストラスト」の活用法とは

左から、プラス前橋工場 田部井様 齋藤様

気候変動の影響により夏の酷暑は年々深刻化し、もはや労働災害として無視できない企業リスクとなっています。プラス株式会社の前橋工場でも、群馬県特有の地理的影響や大型機械の稼働によって現場温度が40度を超えることもあり、従業員の健康と生命を守ることが重要課題となっていました。

こうした背景から導入されたのが、特殊低温保冷剤を使用した超冷感ウェア「アイストラスト」です。長時間の冷却効果と作業効率を両立できる同製品は、従来の保冷グッズで課題となっていた持続性や着用感を克服し、女性スタッフの比率が高い現場でも高く評価されています。今回は前橋工場の副工場長・田部井と管理部門を担当する齋藤に、現場の声を生かした熱中症対策の取り組みと「アイストラスト」の導入効果について伺いました。

森林に囲まれた立地でも避けられない酷暑問題に取り組む、
プラスの前橋工場

田部井 様:
私たちが働いている前橋工場は、緑と水辺に囲まれた約14万坪もの広い土地に建設された産業複合施設「PLUSLAND(プラスランド)」内にあります。工場だけでなく、物流拠点や研修センター、宿泊施設なども備えた複合施設で、自然と産業がバランスよく共生していることが特徴です。

工場では、デスクやチェア、収納用品をはじめ、会議テーブルやローパーティションなど多様なオフィス家具を製造しています。工場の設立は1991年と、業界大手の工場と比べれば比較的若い拠点ですが、確かな実績を積み重ねてきました。

齋藤 様:
正社員と派遣社員を合わせ、現在は約300名が前橋工場に在籍しており、そのうち製造スタッフが210名ほどを占めています。前橋工場の特色として、お客さまごとの要望にあわせたカスタマイズ対応を実現できる点が挙げられます。既製品の量産に加えて、多様なニーズに合わせて柔軟に設計・製造できる体制を整えているのです。

田部井 様:
工場敷地内には約4万本の森林が広がっており、一見すると自然豊かな涼しい環境に思われるかもしれませんが、実際には近年の気候変動と猛暑の影響を強く受けています。特に塗装後に製品を乾燥させる乾燥炉は170度近くの温度に達するため、その出入口から漏れる熱気で作業現場の温度は40度を超えることもあります。

もちろん空調設備は整っていますが、モーターやオイルを使用する大型機械が熱源となり、夏季は厳しい環境です。また関東山地に囲まれた群馬県特有のフェーン現象の影響もあり、直近の2025年8月には40.1℃を記録するなど、全国ニュースで取り上げられるほどの暑さに悩まされています。

熱中症は労働災害として無視できない課題
現場の声を尊重し、設備改善とルール変更で対応

齋藤 様:
熱中症は、決して軽視できない労働災害です。社員が体調を崩して倒れてしまうことは会社としてあってはならないことであり、「社員を守る」という姿勢で取り組んでいます。私自身も労働基準監督署(監督署)などに足を運び、熱中症対策について相談しながら実効性のある取り組みを模索してきました。 その成果もあり、ここ数年は熱中症による搬送者はゼロで、労働災害も600日以上発生していません。

田部井 様:
現場を監督する立場からも、製造に携わる以上は社員の健康管理が経営の根幹だと感じています。暑さ対策はもちろんですが、スタッフが安全に働ける環境を整えること自体が生産の安定性や品質維持にも直結しますので、BCPの観点からも「過剰なくらいの声掛けや配慮を徹底する」ことを意識しています。

田部井 様:
工場建屋内には空調設備を整えていますが、どうしても場所によって温度差が生じるため、風を循環させるために扇風機を設置し、必要に応じてスポットクーラーも導入してきました。また市販の保冷剤や濡らして使う冷感タオルの活用も試みてきましたし、水分補給を徹底するためにウォーターサーバーを現場に多数設置しています。

加えて、従来は作業エリアへの飲料持ち込みを制限していましたが、現在はペットボトルの持参を認め、定期休憩以外にも1時間ごとに自由に水分を取るよう促すルールを設けました。こうした設備の見直しやルール設定は、安全衛生委員会というチームが主体となり、現場から上がってきた声や改善提案を受けて施策を検討、実行しています。

田部井 様:
以前から温度計や温湿度計を設置していましたが、2025年からは暑さ指数(WBGT)を導入しています。管理部が各区画を巡回して測定した暑さ指数のデータを責任者へ報告し、注意喚起を強化しています。

また、水分補給から一歩踏み込んで塩飴なども20種類以上準備しました。水分と塩分をセットで補給できる体制を整えるとともに、森林の維持管理を担うグリーンメンテナンスチームなど、屋外作業を伴う部門にはウェアラブル端末を装着してもらい、位置情報や体温の変化をリアルタイムで把握できるようにしています。

作業を邪魔しない着心地と動きやすさ
女性比率が高い職場でフィット感が評価された

田部井 様:
これまでも首元に巻くタイプの保冷剤を試したことがあったのですが、30分ほどで効果が切れてしまったり、結露で衣服が濡れてしまったりと、頻繁に交換しなければならない手間の問題から、なかなか現場には定着しませんでした。しかし、今回紹介された「アイストラスト」は、2時間ほど持続する保冷剤で交換の頻度を減らせることに魅力を感じました。現場は時間単位で動いていますから、交換頻度を下げることは作業効率に直結します。

また、背中に背負うベストタイプで、ファン付き作業服の内側に装着できる点もポイントでした。過去にもファン付き作業服を導入したことはあったのですが、そもそも周囲が高温だと熱気が服の中に入り込むだけで、むしろ逆効果になってしまうという難点がありました。しかし「アイストラスト」とファン付き作業服を併用することで、涼しい風が循環して冷却効果が格段に高まります。

齋藤 様:
着用感も重視していたポイントです。検討時にサンプルを1着いただき、着用感を確認しました。直接肌に触れるわけではありませんが、メッシュタイプで伸縮性や肌触りが良く、作業の動きを妨げない点が好印象でした。

特に前橋工場は女性スタッフの比率が高いため、着心地の良さや体格や動きに応じてフィットするかどうかは重要です。また、製造現場では体を大きく動かす工程も多く、背負っても違和感なくフィットすることは必須条件でした。

当初は試験的な少量導入を検討していたのですが、これらのポイントが社内で高評価を受け、作業スタッフの約半数に行き渡るようにベスト80着、交換用を含む保冷剤120個の導入が決定しました。加えて、より現場に近い場所で保冷剤を冷やせるようにと、追加の冷凍庫も複数台導入しています。

速乾素材でメンテナンスも容易
衛生面を考慮した水洗いなど、現場では独自の工夫も

田部井 様:
気温が30〜35度に達する作業工程をピックアップし、優先的に「アイストラスト」を配布しています。具体的には、塗装工程やプレス工程や、午後に西日が差し込んでくる厳しい環境には重点的に導入しました。着用するベストは一人ひとりに専用のものを割り当てていますが、着用までは義務化しておらず、現場の自主的な判断に任せています。

田部井 様:
基本的には作業前に「アイストラスト」を身に着け、冷たさを感じなくなったら保冷剤を冷凍庫に戻し、新しいものと交換するサイクルです。保冷剤には表と裏で温度差があり、片面は約0度、もう片面は約5度高くなっています。冷たすぎるとすぐに溶けてしまい持続時間が短くなるため、使用状況や体調に合わせて裏表を変えるようにしているそうです。

保冷剤を冷凍庫に戻す際は、軽く水洗いをする人がほとんどですね。保冷剤は肌に直接触れているわけではないのですが、汗や衛生面を気にする方も多いため、ルール化せずとも水洗いは自然と習慣になっています。ベストについても、1日の作業後に着用した社員自身が洗っています。メッシュタイプの素材で速乾性に優れているため、30分ほど干せば十分です。

導入後も熱中症による体調不良ゼロを維持
従来品よりも確実に使われる装備として定着した

田部井 様:
以前の保冷剤はすぐに効果が切れてしまいましたが、今回のものは2時間程度は持続し、かつベストタイプなのでずれにくく快適だという声を多くもらっています。特に女性スタッフからは、洗いやすさ、乾きやすさを評価する感想がありました。

齋藤 様:
現場からは「ファン付きベストと組み合わせるとより効果的だ」という声が出ており、こうした情報を共有することで安全意識がさらに高まっていると感じます。「アイストラスト」の導入がきっかけとなり、現場の熱中症対策への議論がさらに活性化したことで、より効果的に活かそうという姿勢が広がっているのは、大きな変化だと思います。

田部井 様:
2025年は、現段階で熱中症で体調を崩したという報告はありません。今シーズンは検証的な意味合いが強かったため、80セットを従業員の半数に配布したのですが、使用頻度や持続性の観点からも従来品より確実に活用されている印象があります。

また、以前の首に巻くタイプの保冷剤は、肌に直接触れるため嫌がる人も多く、すぐに効果が切れてしまうことから今年はほとんど使われなくなってしまいました。その点、今回のベストタイプは抵抗感が少なく、作業現場で自然に受け入れられていると感じます。

酷暑の時代に健康と生命を守る
熱中症対策の法改正が進む中で、最新動向に対応していきたい

田部井 様:
プラスグループ全体として、SDGsへの取り組みに力を入れています。私たち前橋工場においても、CO2の削減や省エネといった観点での取り組みを進めており、熱中症対策はその一環として捉えています。

同時に、今後もますます深刻化する夏の酷暑に対して熱中症から従業員の健康と生命を守ることは、企業の使命だと考えています。従業員一人ひとりの安全と健康を最優先に考え、地域やお客さまからの信頼を獲得するためにも、これまで以上に熱中症対策に注力していきたいと思います。

齋藤 様:
管理部門の立場からは、今後も熱中症対策の法改正に対応していきたいと考えています。2025年からは、労働安全衛生規則の改正によって、職場の熱中症対策が義務付けられましたが、こうした法改正は今後も続いていくでしょう。常に最新の情報をキャッチアップし、法令遵守を意識して対策を強化していく予定です。

田部井 様:
暑さ対策は、熱中症を労働災害のひとつとして捉え、企業側が主体的に取り組むべき課題です。今後も新しい商材や技術を積極的に導入し、働きやすい環境を整備することで、従業員の健康と安全を守っていきたいと思います。

その具体的な取り組みの一例として、長時間の冷却効果と作業効率を両立できる「アイストラスト」は有効な選択肢です。現場での使用感も高く評価されており、暑さ対策の強化を検討する企業にとって、導入をおすすめできる製品だと思います。

〈取材にご協力いただいた方〉

プラス株式会社ファニチャーカンパニー
生産本部 前橋工場 副工場長(兼)製造部 部長 田部井 栄治(たべい・えいじ)
(安全管理者)

プラス株式会社ファニチャーカンパニー
経営管理本部 管理部 前橋管理課 担当課長 齋藤 亮(さいとう・りょう)
(衛生管理者)

※インタビュアー:丸山 茜(防災士・災害対策士) 当サイトの運営元であるプラス株式会社ジョインテックスカンパニーにて防災・BCP商材、サービスの企画/推進、「危機対策のキホン」カタログ、オウンドメディアサイト「もっとキキタイマガジン」の企画/監修