建設現場で行うべき熱中症対策とは?
予防法から発生時の応急処置までを解説

近年、気候変動の影響により熱中症の発症リスクは年々高まっています。建設現場では、仕事の性質上、暑さの影響が大きいことから、熱中症の予防対策は重要課題となっています。本記事では、建設業における熱中症の発生状況から具体的な対策、発生時の応急処置まで、建設現場における熱中症対策について幅広く解説します。

建設業における熱中症発生状況

建設現場全体での熱中症の発生状況を統計データから見ていきましょう。

建設業の熱中症発生状況

熱中症は、高温多湿な環境下において、体内の水分及び塩分(ナトリウム等)のバランスが崩れたり、体内の調整機能が破たんしたりするなどして発症する障害の総称です。特に建設業では、熱中症の発生件数が多く、深刻な問題となっています。厚生労働省が発表した「熱中症による死傷者数の業種別の状況(2019~2023年)」によると、2019~2023年の熱中症による死傷者数は、業種別で建設業が最も多く、886人でした。そのうち54人が命を落としています。この数字は、建設現場における熱中症対策の緊急性と重要性を明確に示しているといえるでしょう。

引用:職場でおこる熱中症|職場における熱中症予防情報
引用:令和5年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)| 厚生労働省 [PDF]

事業者として熱中症対策の重要性

すべての事業者には従業員の安全と健康を守る責務があり、熱中症対策もその一環として「職場における熱中症予防基本対策要綱」(2021年策定)に基づく対応が求められています。

熱中症対策の基準となるのが、作業場所におけるWBGT値(暑さ指数)です。WBGT値は、単なる気温とは異なり、気温、湿度、輻射熱を組み合わせた指標で、この値に基づいて適切な作業管理を行う必要があります。

熱中症による労働災害は、適切な予防対策により防ぐことができる一方で、対策を怠れば労働安全衛生法違反となり、重大な事故発生時には管理責任を問われる可能性があります。特に建設業は、熱中症による死傷者数が最も多い業種となっていることから、他業種以上に厳格な対策が求められます。

参考:暑さ指数について|職場における熱中症予防情報|厚生労働省

参考:職場における熱中症予防基本対策要綱の策定について | 厚生労働省 [PDF]

建設現場で熱中症リスクが高くなる原因

建設現場では、以下のような原因から、他業種と比べて熱中症リスクが特に高い傾向にあります。

過酷な作業環境

建設現場では、複数の熱源が重なり合うことで、気象庁が発表する気温以上に過酷な暑熱環境となりがちです。暑熱環境とは、高温・多湿で風通しが悪く、体温が上昇しやすい環境のことです。暑熱環境を生む要素には、以下のようなものがあります。

  • 直射日光による暑熱
  • コンクリートやアスファルトからの照り返し
  • 建物内や仮設囲いでの通気の悪さ
  • 重機や建設機械からの熱

身体への負荷が高い

次のような建設作業特有の条件が身体への負担を増大させます。体温調節機能が追いつかないことで熱中症リスクを高めています。

  • 安全保護具の着用義務(ヘルメット、作業着、安全靴等)
  • 重量物の運搬や人力作業による大きな身体負荷
  • 高所作業・交代要員が少ないなど、こまめな水分補給が難しい作業条件

建設現場で実施すべき熱中症対策

建設現場で取り組むべき熱中症対策には、環境・時間・人の観点からさまざまな方法があります。

作業環境の適切な管理

現場の気象条件を定期的に確認し、作業環境を把握することは、熱中症対策の基本といえるでしょう。事前の対策には、環境省と気象庁が共同で発表する熱中症警戒アラートが重要な指針になります。

また、WBGT値の測定も重要です。WBGT値測定器を設置することで、より正確な熱中症リスクの把握が可能になります。

また、次のような方法で、作業員の体温調節や休息が可能な環境を整えることが効果的です。

  • 日射を遮る簡易な屋根の設置
  • 冷房設備を備えた休憩所の設置
  • ミスト発生装置の導入
  • 飲料水や氷、冷たいおしぼり、シャワーなどの備え付け

参考: 環境省熱中症予防情報サイト – 熱中症警戒アラート

作業スケジュールの柔軟な調整

暑さが厳しい時間帯の作業を避け、熱中症リスクが高い日は作業時間の短縮や中止の検討、休憩時間の追加設定など、柔軟な対応を行う必要があります。暑さに慣れていない作業員には、徐々に作業時間を延ばしていくことで、熱中症リスクを減らすことができます。

作業員の健康管理

睡眠不足、体調不良、前日の飲酒、朝食の未摂取などは熱中症リスクを高める要因となります。作業開始前に作業員の体調を確認し、必要に応じて就業調整や個別の健康相談を行うことが大切です。高齢者や持病のある人には、特に配慮する必要があるでしょう。

また、定期的に現場を巡回し、水分・塩分の補給状況や作業員の様子を確認することも欠かせません。体調不良を訴える作業員には早めに休憩を取らせ、症状に応じて適切な処置を行うことが求められます。

熱中症対策グッズの活用

作業環境や状況に応じた熱中症対策グッズの活用は、作業員の体感温度を下げ、熱中症リスクを効果的に軽減できる即効性の高い方法です。例えば、次のようなグッズがあります。

  • ファン付きの作業服・ヘルメット
  • 速乾性・通気性の高い作業服
  • 冷却ベスト
  • 冷感インナーシャツ
  • クールネックタイ など

こうした複数の対策グッズを適切に組み合わせることで、より高い効果が期待できます。

熱中症についての研修の実施

作業員が熱中症の危険性を理解し、適切な対策を取れるようにするためには、研修を実施することが効果的です。熱中症の主な症状や予防策、応急処置について学びます。作業員一人ひとりが自身の健康を守る意識を高めるだけでなく、周囲の仲間と協力して熱中症を防ぐ体制を築くことができるでしょう。

近年増加している外国人作業員に対しては、多言語での説明資料の用意や、通訳を介した研修実施など、言語や文化の違いに配慮した教育を行うことが重要です。厚生労働省の「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」では、多言語に対応した資料を公開しています。積極的に活用することで、より効果的な熱中症対策が可能になります。

参考:中小企業の事業主、安全・衛⽣管理担当者・現場作業者向け 働く人の今すぐ使える熱中症ガイド | 厚生労働省

実際に建設現場で熱中症が起こったら

熱中症の疑いがある作業員をすぐに日陰や風通しの良い場所へ移動させ、衣服を緩めて体を冷やします。意識があり自力で飲める場合は水分・塩分を補給させましょう。症状が改善しなければ医療機関へ連絡することが必要になります。

呼びかけに応じず、意識がない場合は、迷わず救急車を要請します。救急⾞が到着するまで氷のうや水かけで急速に体を冷やすといった応急処置を行います。熱中症かどうか判断できない場合には、積極的に周囲の人に声かけを行い、速やかに対応することが必要です。

熱中症の重症化を防ぐには、迅速な初期対応が重要です。現場での応急処置の手順を全作業員が理解しておくことが不可欠です。

厚生労働省では、応急処置の方法を紹介しています。これを参考に、応急処置の方法への理解を深めるといいでしょう。

熱中症が疑われる人を見かけたら | 厚生労働省

職場における熱中症予防情報 | 厚生労働省

建設現場の熱中症予防には日々の備えと安全意識の向上が不可欠

建設業は、屋外・高温多湿環境での重労働という特性から、熱中症リスクが常に高い産業です。熱中症の予防には、熱中症への正しい理解を基本として、作業環境や作業時間、個人の健康管理などさまざまな観点から取り組む必要があります。

管理者から作業員一人ひとりにいたるまで、現場全体で熱中症予防の意識を高め、誰もが安心して働ける環境づくりを進めていきましょう。 熱中症対策グッズの活用は、取り組みやすい対策のひとつです。

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