マンションの水害対策8選|浸水を防ぐために管理組合が行うべき対策とポイント

近年、台風やゲリラ豪雨による水害は年々激甚化しており、かつて「数十年に一度」とされていた規模の豪雨が毎年のように発生しています。そして、その被害はマンションも例外ではありません。
2019年の台風19号では、首都圏の複数のマンションが浸水し、停電や断水で生活機能が完全に停止する事態が発生しました。こうした被害を防ぐためには、個々の住民ではなく、マンション全体で水害対策に取り組む必要があります。
本記事では、マンションにおける水害への備えについて、リスクの把握方法から具体的な対策、効果的に進めるポイントまでを解説します。
目次
マンションに水害対策が求められる理由とは
水害とは、大雨や台風による多量の降雨、津波・高潮などがもたらす災害の総称で、河川の氾濫や都市部での内水氾濫など、さまざまな形で建物への浸水を引き起こします。
マンションが水害に対して脆弱とされる主な理由は、建物の構造と立地にあります。
まず構造面では、電気設備・ポンプ室・機械式駐車場といった基幹設備が地下や1階に集中しているため、浸水によってそれらの機能が停止するリスクがあります。
また立地面では、都市部のマンションは駅前や湾岸エリアなど利便性の高い土地に建てられることが多い傾向にあります。こうした場所は、河川や海に近い、あるいは地表面の多くが舗装されて雨水が浸透しにくいなどの理由から、水害リスクが高くなりやすいといえます。
この構造と立地の両方のリスクが現実となったのが、2019年の台風19号です。武蔵小杉のタワーマンションでは、地下の受変電設備が内水氾濫で浸水して建物全体が停電し、エレベーターや給水ポンプも連鎖的に停止しました。水が直接届かない高層階でも生活が困難になり、復旧には多大な時間と費用を要しました。
このような被害を最小限にとどめるには、個別の対応では限界があります。マンション全体で、計画的に対策を講じていくことが欠かせません。
水害については、「企業の水害・浸水対策とは?求められる理由や具体的な方法を解説」でも詳しく解説しています。
なぜ管理組合主導の対策が不可欠なのか
マンションの水害では、電気室やポンプ室などの共用部分が被害の中心となり、その管理責任は区分所有法上、管理組合にあります。したがって、管理組合が方針を定め、管理会社と連携して対策を実行しなければ、実効性のある水害対策は機能しません。
各住戸での備えだけでは不十分であり、共用設備が浸水すれば停電や断水によって建物全体が機能停止に陥ります。
この点を国も重視しており、2020年6月には国土交通省と経済産業省が連名で「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」を公表しました。法的な義務ではありませんが、建築物の管理・運用段階における対策の考え方が示されており、マンションの水害対策の参考情報として把握しておく必要があるでしょう。
参考:建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン令和2年6月|国土交通省・経済産業省
マンションの水害リスクを把握する方法
水害対策を進める前に、どこを優先的に守るべきかを明確にするため、水害リスクを把握することが重要です。マンションの水害リスクは次のような方法で把握できます。
ハザードマップで水害リスクを確認する
最初に確認すべきなのが、国土交通省が運営する「ハザードマップポータルサイト」です。洪水・内水氾濫・高潮など複数の水害リスクを地図上で重ねて表示でき、マンション周辺の全体像を把握するのに適しています。
そのうえで、各自治体が公開しているハザードマップも確認しましょう。より詳細な浸水想定深や避難所の位置が掲載されており、具体的な対策の検討に直結します。
ハザードマップについて詳しくは、「ハザードマップとは?見方や種類、防災担当者がチェックすべきポイントを解説」をご覧ください。
建物内の危険箇所を洗い出す
次は建物内部の点検を行います。地下や1階に設置されている電気室・受変電設備・給水ポンプ・受水槽などは、浸水すると建物全体の停電・断水に直結します。地下駐車場や機械式駐車場も被害が発生しやすいため、設備の配置図をもとに、浸水時の影響範囲を確認しておきましょう。
過去の水害履歴・周辺環境を確認する
過去に周辺地域でどのような被害が発生しているかを把握することも重要です。自治体の公開情報や災害記録を確認することで、ハザードマップだけでは見えない実際のリスクが把握できます。特に低地や河川沿い、湾岸エリアは浸水リスクが高く、都市部では排水能力を超える雨量による内水氾濫にも注意が必要です。
マンションの水害対策8選
水害リスクの把握ができたら、自マンションの状況に応じて、次のような対策を検討しましょう。
1. 止水板・土のうなどの設置
止水板や土のう・水のうといった浸水対策用品は、水の侵入を物理的に防ぐ基本的な方法です。
- 止水板
エントランスや地下への入口、駐車場の出入口など、浸水の経路となりやすい箇所に設置します。アルミニウム製やステンレス製の板を枠にはめ込む形式が一般的で、脱着式・シート式・スライド式など複数の種類があります。実際にマンションでの水害を経験した組合では、迅速かつ確実な対応には止水板の利用が好ましいと考えられるとの声も出ています。注意点として、止水板によっては現地調査が必要なオーダー商品となる場合があるので、水害が予測される時期の前に準備を進めていくとよいでしょう。



- 土のう・水のう
建物の入口に設置することで、浸水の予防・軽減が可能です。防水シートと併用することで、より高い止水効果が期待できます。土のうは事前に土砂や保管スペースが必要ですが、水のうはコンパクトに保管できるため、あわせて備えておくと効果的です。土のうと水のうを選ぶ際には、入居者の年齢、男女比を確認しましょう。高齢者や女性が多い場合には、土を詰める必要がない水のうが運搬、設置を行いやすくおすすめです。注意点として、多くの人手による作業が必要となるため、ニュースなどの情報を参考に事前設置を行うとよいでしょう。



2. 電気設備の浸水保護
地下に電気室がある場合は、防水扉の設置やケーブル貫通部の止水処理など、水の侵入を物理的に遮断する工事を検討しましょう。大規模修繕のタイミングに合わせて実施すれば、コストの最適化も図れます。電気設備の浸水は、建物全体の停電に直結するため、対策の優先度は特に高いといえます。
3. エレベーターチェアの設置
停電や故障によりエレベーター内に閉じ込められた場合に備え、エレベーターチェアの設置を検討しましょう。普段はエレベーター内の優先席として使用できるほか、非常用品を内部に収納できるタイプや、非常用トイレとして使用できるタイプもあり、長時間の閉じ込めへの備えとして有効です。



4. 排水設備の定期点検
共用部の排水口・雨どい・排水溝は、枯れ葉やゴミが溜まると排水機能が低下し、浸水リスクを高めます。台風シーズン前の清掃・点検はもちろん、地下ピットの排水ポンプが正常に作動するかの確認も欠かせません。管理会社への委託内容として、点検頻度や実施内容を具体的に取り決めておくことをおすすめします。
5. 防災マニュアルの整備
水害は地震と異なり、気象予報によってある程度の事前予測が可能です。この特性を生かし、警報レベルに応じた行動を時系列で整理したタイムラインを作成しましょう。作成したマニュアルは管理員・理事会・住民の間で共有し、いざというときに全員が迷わず動ける状態にしておくことが大切です。
6. 損害保険の見直し
管理組合で加入している火災保険に「水災特約」が付いているか、改めて確認しましょう。マンションは水害に強いという思い込みから、水災特約を外している管理組合も少なくありません。ハザードマップ上で浸水リスクが低いとされているエリアであっても、地下に電気設備がある場合は特約の付帯を検討するとよいでしょう。
7. 非常用電源の確保
停電に備え、非常用発電機や蓄電池などの非常用電源の確保も重要です。これらの設備は浸水対策を施したうえで、想定浸水深よりも高い場所に設置します。
最近では、ポータブル発電機や充電式バッテリーなど、比較的導入しやすいタイプの電源も多く、選択肢は広がっています。また、複数台を確保しておくと、より安心です。
非常用電源の種類や保管方法については、「発電機と蓄電池の違いは?特徴、非常用電源としてどちらを選ぶべきかを解説」「非常用電源の浸水対策とは?災害時でも確実に電力確保するための方法を解説」で詳しく解説しています。



8. 防災備蓄品の確保
電気設備が浸水すると停電・断水が同時に発生し、エレベーターが停止するおそれがあります。特に高層階の住民は建物内で孤立状態に陥るおそれあるため、各種防災備蓄品を備えておくとよいでしょう。
備蓄の基本は各住戸での個人備蓄です。保存水(1人あたり1日3リットル)、非常食(1日3食分)、携帯トイレ(1人あたり1日5〜7回分)を最低3日分、さらにモバイルバッテリーや懐中電灯などの停電対策用品もあわせて用意するよう、管理組合から住民へ繰り返し周知しましょう。そのうえで、共用部にも防災倉庫を設け、管理組合として一定量を確保しておくと、個人備蓄が不十分な世帯への補完になります。



防災備蓄品の品目や必要量については、「企業における防災備蓄品‐必要量の目安と選定のポイントは?」で詳しく解説しています。
マンションの水害対策を効果的に進めるポイント

住民への周知と訓練を定期的に行う
どれだけ優れた設備や防災マニュアルを用意しても、住民に知られていなければ、いざというときに機能しません。止水板の保管場所や設置手順、タイムラインに沿った行動の流れなどを、定期的に住民へ周知することが重要です。
地震の防災訓練は多くのマンションで実施されていますが、水害を想定した訓練はまだ少ないのが実情です。対策の定着を進めるためにも、止水板の設置訓練や豪雨時の避難経路確認など、水害に特化した訓練も行うとよいでしょう。
補助金・助成金を活用する
水害対策にかかる費用は管理組合にとって大きな負担ですが、国や自治体の補助金・助成金制度を活用できる場合があります。たとえば東京都では、止水板等の浸水対策設備の導入補助、非常用電源の導入補助、防災備蓄資器材の購入補助、エレベーターチェアの導入補助など、マンション管理組合向けの助成制度が複数用意されています。
参考:マンション管理組合向け助成制度|助成制度一覧|東京都住宅政策本部
対象要件や申請期限は自治体ごとに異なり、「工事着工前の事前申請」が条件となるケースがほとんどです。検討段階で早めにお住まいの自治体窓口へ問い合わせましょう。
マンションの水害対策は管理組合主導で計画的に

マンションの水害対策は、電気設備や駐車場、エントランスといった共用部分が対象の中心となるため、管理組合と管理会社が主導して進めることが不可欠です。まずはハザードマップや建物内の設備状況からリスクを把握し、止水板の設置、電気設備の保護、防災マニュアルの整備、保険の見直し、非常用電源や備蓄品の確保といった対策を、優先順位を付けて進めていきましょう。
水害は事前にある程度予測できる災害だからこそ、備えていれば防げる被害が多くあります。
ジョインテックスカンパニーでは、発電機や蓄電池などの非常用電源、浸水対策用品をはじめ、防災備蓄品を中心に約1,500アイテム掲載の危機対策のキホンカタログの発刊及び、各種防災備蓄品の取り扱い、全国で50名を超える防災士による対策状況に応じたご提案を行っております。水害対策の見直し、強化をご検討の場合は、お気軽にご相談ください。
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