DRP(災害復旧計画)とは? BCPとの違いや重要な理由、策定・運用手順を解説

DRP - Disaster Recovery Plan, acronym business concept

DRP(災害復旧計画)とは、自然災害やシステム障害などの発生時に、ITシステムやデータを迅速に復旧させるための具体的な計画です。デジタル化が進む現代では、わずか数時間のシステム停止でも大きな損失につながるケースが増えており、DRPは企業にとって欠かせない重要な取り組みとなっています。本記事では、DRPの概要、BCPとの違いから具体的な策定・運用手順までを詳しく解説します。

DRPとは

DRPとは、「Disaster Recovery Plan」の略称で、日本語では「災害復旧計画」と呼ばれます。地震や火災、システム障害、サイバー攻撃などの災害発生時に、企業のITシステムやデータを迅速に復旧させるための具体的な計画を意味しています。

DRPの主な目的は、災害によって損傷を受けたITインフラを可能な限り短時間で復旧し、事業への影響を最小限に抑えることです。具体的には、データのバックアップと復元、システムの代替運用、復旧作業の手順書、担当者の役割分担などを事前に定めておきます。

DRPとBCPの違い

DRPとBCPは密接に関連していますが、それぞれ異なる目的と役割を持っています。

BCP(事業継続計画)は、災害発生時に事業全体を継続させることを目的とした包括的な計画です。人員の安全確保、代替拠点での業務継続、顧客や取引先への対応、財務面での備えなど、事業運営に関わるあらゆる要素を対象としています。

一方、DRP(災害復旧計画)は、ITシステムとデータの技術的な復旧に特化した計画で、BCPの一部として位置づけられます。サーバーの復旧手順、データベースの復元方法、ネットワーク回線の確保、システムの代替運用などを定めます。

BCP対策について詳しくは、「BCP対策とは?基礎知識から策定手順、運用のポイントまでをわかりやすく解説」で解説しています。

DRPが重要な理由

現代の企業活動はITシステムに高度に依存しており、システム停止が事業運営に深刻な影響を与える環境となっています。

IBMの調査レポート(2024年発表)によれば、データ侵害を受けた組織の7割が深刻な事業中断を経験し、完全復旧に100日以上を要したケースが多数を占めることが明らかになりました。復旧の長期化は、顧客離れや収益減少、さらには社会的信用にもマイナスの影響を及ぼしかねません。

こうした被害を最小限に抑え、いかに短期間で業務を復旧できるかが事業継続を図るうえで重要であり、あらかじめ適切なDRPを策定しておくことが不可欠です。

参考:データ侵害のコストに関する調査 2024年 | IBM

DRP策定に必要な3つの指標

DRPを策定する際に必ず理解しておくべき3つの重要な指標があります。

RPO(目標復旧時点)

RPO(Recovery Point Objective:目標復旧時点)は、災害発生時にどの時点までのデータを復旧させるかを示す指標です。つまり、「どれだけのデータ損失を許容できるか」を時間で表したものです。

例えば、RPOを1時間に設定した場合は、災害発生の1時間前までのデータを復旧させる必要があります。金融機関のような重要なデータを扱う業界では、RPOを数分〜数秒に設定する一方、一般企業では数時間~1日程度とするケースが多く見られます。

RPOが短いほど、バックアップの頻度やリアルタイム同期の仕組みが必要となり、その分コストも増加します。そのため、業務の重要度と復旧コストのバランスを考慮し、自社に最適なRPOを設定することが重要です。

RTO(目標復旧時間)

RTO(Recovery Time Objective:目標復旧時間)は、災害発生からシステムが復旧して業務を再開できるまでの目標時間です。つまり、「どれだけの時間で復旧させるか」を表した指標です。

RTOは、業務への影響度やシステムの重要度に応じて設定されます。例えば、基幹システムのように事業運営に不可欠なシステムでは数時間以内、優先度の低いシステムでは数日程度のRTOを設定することもあります。

短いRTOを設定する場合には、高度な冗長化や即時切り替え可能な代替環境の整備が必要です。その手段として、近年ではクラウドサービスを活用する企業が増えています。

RLO(目標復旧レベル)

RLO(Recovery Level Objective:目標復旧レベル)は、災害復旧時にどの程度のサービスレベルで運用を再開するかを示す指標です。

災害復旧時には、必ずしも100%の機能を即座に復旧させる必要はありません。初動対応の迅速化を図るためには、サービスの重要度に応じた段階的な復旧が効果的な方法となります。

例えば、ECサイトの場合、第1段階では商品閲覧と注文機能のみを復旧させ、第2段階で検索機能や会員機能を追加し、最終的に全機能を復旧させるといった方法が効果的です。これにより、完全復旧を待つことなく早期に事業を再開することができます。

RPO・RTOについて詳しくは、「RPO・RTOの意味や違いとは?事業継続計画(BCP)における役割を解説」で解説しています。

DRPの策定・運用手順

効果的なDRPを策定・運用するための手順を解説します。

ステップ1 現状把握と優先順位設定

まずは、自社のITシステム全体を把握し、復旧の優先順位を明確にすることから始めます。

業務で使用しているすべてのシステムを洗い出し、事業への影響度でランク分けします。同時に、各システムの現在のバックアップ状況を調査し、現状のリスクを把握します。以上の調査結果を基に、各システムのRPO・RTO・RLOを設定し、限られた予算の中でどのシステムから優先的に対策を講じるかを決定します。

ステップ2 復旧計画の策定

優先順位が決まったら、データのバックアップ方法、代替システムの準備、クラウドサービスの活用など、迅速な復旧を実現する具体的な方法を決めます。災害対策本部長やIT復旧チームリーダーなど、復旧作業に関わる全員の役割を明確に決め、連絡体制と意思決定の流れを整備します。

また、システム停止の発見から復旧完了まで、誰が何をどのように行うかを詳細に書いた具体的な作業手順書を作成し、必要な機器やサービスを事前に準備・確保します。

ステップ3 定期的な訓練・見直し

DRPの運用は、重要システムから段階的に進めます。各システムの対策完了後は必ず復旧テストを実施します。実際の復旧時間が目標値以内に収まるかを確認し、テスト結果を基に手順書を修正して実用性を高めます。

また、DRPは策定して終わりではありません。実際に使える計画にするため、年に数回の復旧訓練を実施することが欠かせません。訓練を通じて、復旧時間の測定や手順書の課題を発見し、改善につなげます。また、新技術の導入や組織変更、新たな脅威の出現に応じてDRPを定期的に見直し、常に最新の状況に対応できる計画として維持していくことが重要です。

効果的なDRPで事業継続力を強化

DRP(災害復旧計画)は、現代企業にとって事業を守るための重要な備えです。システム停止による甚大な損失や多様化するリスクに対応するには、迅速かつ柔軟な復旧体制の構築が不可欠です。

ただし、DRPの策定は一度きりで完了するものではありません。定期的な訓練と見直しを通じて継続的に改善を図り、変化する事業環境や脅威に柔軟に対応できる体制を維持していくことが求められます。

ジョインテックスカンパニーでは、BCP対策における備蓄・管理の課題解決を、さまざまな角度からサポートするソリューションを提供しています。ぜひお気軽にご相談ください。お問い合せ – キキタイマガジン