事業継続力強化計画とは?対象企業や認定取得のメリット・手順を解説

The crisis brings down business. Economic instability, reduced consumer spending, and disrupted supply. Financial strain, declining sales. Survive the crisis.

自然災害の激甚化や感染症の流行など、不測の事態が相次ぐなか、中小企業の事業継続に対する関心が高まっています。そんななか、注目を集めているのが「事業継続力強化計画」の認定制度です。この制度では、防災・減災に取り組む中小企業に対して国が認定を与え、税制優遇、補助金の加点評価、低利融資など、経済的メリットを提供しています。

本記事では、事業継続力強化計画の概要から具体的なメリット、認定取得までの流れ、注意点を詳しく解説します。

事業継続力強化計画とは

まずは、事業継続力強化計画を理解するため、概要とBCPとの違いについて解説します。

事業継続力強化計画の概要

事業継続力強化計画とは、中小企業が策定した防災・減災の事前対策に関する計画を経済産業大臣が認定する制度です。中小企業のための取り組みやすいBCPと位置づけられ、令和元年7月16日に施行された「中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律(以下、中小企業強靱化法)」に基づいて創設されました。

この制度では、自然災害だけでなく、「自然災害以外のリスク」への対策に取り組む企業も支援対象となります。「自然災害以外のリスク」には、サイバー攻撃、感染症のほか、異常な現象に直接または間接に起因するリスクも含まれます。

事業継続力強化計画の認定を受けた企業は、事業継続力強化計画認定ロゴマークを使用することができます。このロゴマークは、企業の防災・減災に対する取り組みを対外的にアピールする際に活用でき、取引先や顧客に対する信頼性向上に役立ちます。

認定の有効期間は3年間で、期間満了前に更新申請を行うことで継続して認定を受けることができます。

事業継続力強化計画 | 中小企業庁

BCPはじめの一歩 事業継続力強化計画をつくろう

事業継続力強化計画の対象企業

事業継続力強化計画の認定対象は、中小企業等経営強化法第2条第1項に定義される中小企業者です。業種によって規模要件が異なり、例えば製造業では資本金3億円以下または従業員300人以下、小売業では資本金5,000万円以下または従業員50人以下の企業が対象となります。資本金と従業員数のいずれかの基準を満たせば対象となり、個人事業主、企業組合、協業組合、事業協同組合等も申請することができます。

BCPとの違い

事業継続力強化計画と混同されがちなのが、BCP(事業継続計画)です。

事業継続力強化計画には国の認定制度があり、認定を受けることで税制優遇や補助金加点などの支援措置を受けられます。一方、BCPには、認定制度がなく支援・優遇措置もありません。

また、事業継続力強化計画は中小企業向けに簡素化されており、A4数枚程度で策定できます。対して、BCPは企業規模を問わない代わりに、一般的に6ヶ月から1年の策定期間が必要です。

BCPについては、「BCP対策とは?基礎知識から策定手順、運用のポイントまでわかりやすく解説」で詳しく解説しています。

事業継続力強化計画の認定を受ける経済的メリット

事業継続力強化計画の認定を受けると、さまざまな経済的メリットを得られます。

防災・減災設備への税制優遇

認定対象期間(令和元年7月16日~令和9年3月31日まで)に認定を受けた企業が、認定を受けた日から1年以内に対象設備を取得し、本来の目的のために現実に使用を開始するに至った場合、特別償却16%が適用されます。対象となる設備には、自家発電設備、制震・免震装置、止水板などがあります。防災・減災設備投資において、税負担の軽減が可能です。

補助金の加点措置

事業継続力強化計画の認定は、補助金の申請において加点要素として評価されます。ものづくり補助金、事業承継・M&A補助金、中小企業省力化投資補助金、小規模事業者持続化補助金などが対象です。特に、申請件数が多く競争率の高い補助金では、メリットとなるでしょう。

詳しくは、各補助金のページをご覧ください。

トップページ|ものづくり補助事業公式ホームページ ものづくり補助金総合サイト

事業承継・M&A補助金

中小企業省力化投資補助金

小規模事業者持続化補助金

日本政策金融公庫による低利融資

設備投資に必要な資金について、日本政策金融公庫から低利で融資を受けられます。基準利率より低い特別利率で融資を受けることができ、設備投資の資金調達コストの低減につながります。

詳しくは、日本政策金融公庫をご覧ください。

信用保証協会による保証枠拡大

認定企業が民間金融機関から融資を受ける際、中小企業信用保険法の特例として信用保証協会による追加の保証を受けることができます。通常の普通保険等とは別枠での保証となるため、既存の保証枠を超えた資金調達が可能になり、事業継続に必要な設備投資や運転資金の確保がより容易になります。

詳しくは、各都道府県の信用保証協会に問い合わせてください。

一般社団法人 全国信用保証協会連合会 | 一般社団法人 全国信用保証協会連合会

損害保険料の割引

過去の保険金支払い実績や、リスク管理体制などに応じて、損害保険会社から保険料の割引を受けることができます。各保険会社が企業の取り組み状況を個別に評価し、割引を検討することで、中小企業の事業継続力強化を後押ししています。

詳しくは、各社のホームページをご覧ください。

参考:-中小企業等経営強化法-事業継続力強化計画認定制度の概要|中小企業庁

事業継続力強化計画の認定取得の流れ

事業継続力強化計画の認定取得は、以下の5つのステップで進めることができます。

1. 目的設定と事業継続の方針策定

まず、どのような目的で策定するのかを明確にします。従業員とその家族の安全確保(雇用責任)、顧客・取引先への継続的なサービス提供(供給責任)、地域社会への貢献継続(地域貢献)などの観点から、自社の事業継続の意義と必要性を整理することが重要です。目的を設定することで、事業継続力強化計画全体の方向性が定まり、具体的な対策を検討する際の指針となります。

2. 災害リスクの把握

国土交通省のハザードマップポータルサイトなどを活用して、事業所の所在地域の災害リスクを把握します。ヒト・モノ・カネ・情報の4つの視点から災害が自社の事業活動に与える影響を想定し、どのような被害が発生する可能性があるかを具体的に分析します。この段階では、地震、水害、火災などの自然災害だけでなく、感染症やサイバー攻撃などのリスクも含めて検討することが重要です。

3. 初動対応手順の策定

災害発生直後の安否確認体制、緊急連絡網、避難手順、重要データのバックアップ体制など、初動対応について具体的に検討します。初期段階での迅速な行動が被害の拡大を防ぎ、早期の事業再開へとつながるため、実践的な対応手順を整理することが重要です。従業員への周知方法や訓練計画についても併せて検討します。

4. 防災・減災対策の計画

リスク分析の結果を踏まえ、ヒト・モノ・カネ・情報を守るための具体的な防災・減災対策を策定します。設備の耐震化、備蓄品の確保、代替拠点の確保、資金調達手段の多様化など、実際に実施する対策を明確にします。各対策には優先順位と実施時期を設定し、計画的に取り組めるよう整理することが重要です。

5. 申請書類の提出

事業継続力強化計画の申請は、原則として電子申請システムから行い、「GビズIDアカウント」が必要です。アカウントの取得に2週間程度、審査の標準的な処理期間は45日程度かかるとされており、補助金申請などを予定している場合は余裕を持った準備が必要です。

申請は1社で行う「単独型」と複数企業が連携する「連携型」があり、単独型は電子申請システムのみ、連携型は電子申請システムまたは所轄の経済産業局への書類提出が可能で、申請書、チェックシート、参考書類などを準備して提出します。

参考:事業継続力強化計画の申請方法等について | 中小企業庁

事業継続力強化計画の認定取得にあたっての注意点

事業継続力強化計画の策定・申請にあたっては、以下の点に注意が必要です

計画の実効性を重視した策定

認定を受けることが目的ではなく、実際の災害時に機能する計画を作ることが本来の目的です。現実的でない対策や過度に複雑な手順は、いざというときに役に立ちません。自社の規模と実情に合わせた、実行可能な計画を策定しましょう。

従業員への周知・訓練

策定した計画は、従業員に周知徹底し、定期的な訓練を実施することが欠かせません。全従業員が計画の内容を理解し、災害発生時に迅速かつ適切な行動をとれるよう、継続的な教育と実践的な訓練プログラムを組み込むことが大切です。

定期的な更新・見直し

事業環境の変化や新たなリスクの出現に応じて、計画内容は定期的に見直すことが重要です。認定の有効期間は3年間のため、更新申請のタイミングで内容を見直すことも有効な方法です。常に最新の状況に対応できるよう、継続的な改善と適切な管理を心がけましょう。

事業継続力強化計画制度の認定取得は中小企業にとって有効な選択肢

事業継続力強化計画制度の認定を受けることで、経済面での支援と防災対策の強化を同時に進められます。補助金申請を検討している企業はもちろん、将来的な事業リスクに備えたい中小企業にとっても、有力な選択肢となるでしょう。 ジョインテックスカンパニーでは、防災対策の基礎や実践ノウハウをわかりやすくまとめた「コラム – キキタイマガジン」でも情報発信中です。企業の防災対策に関心がある方は、ぜひチェックしてみてください。