オフィスの地震対策を見直そう!
被害を出さない職場づくりとは
企業には従業員の安全を守る義務と地域に対する社会的責任があります。世界でも上位に入る地震大国である日本では、震災を想定したオフィスづくりをしていかなければなりません。地震をなくすことはできませんが、被害を最小限にすることは可能です。企業がオフィスにおいて実施すべき地震対策について、その重要性および理由、対策のポイントについて解説します。
目次
オフィスの地震対策の重要性
初めに、オフィスにおける地震対策の重要性をいくつかの観点から確認していきましょう。
- 企業の社会的責任
従業員を雇用し利益を得る企業には、従業員の安全を確保する義務があります。有事の際にも従業員の生命を危険から守らなければなりません。さらに社会の一員として、その企業が立地する地域の他企業・地域組織と連携を行うことで早期復旧を図ろうとする動き、つまり共助防災への取組みが求められます。
- 帰宅困難時への対応
震災やその他不測の事態が発生した場合、特に都市部においては、一斉に従業員を帰宅させることで交通機関や道路などの一層の混雑を招き、二次被害を生み出す原因となります。社会的な状況にも配慮し、冷静に事態を見極めた対応が必要です。
- 救済・救援活動を実施できる体制
ケガ人や急病人などが助けを求めた場合には、人道的な立場から、企業として救済や救援活動を速やかに実施できるよう体制を整備しておくことも大切です。
- 事業の継続による社会的な安定の確保
商品やサービスを通常どおり提供することは、自社の利益の確保のためだけではなく、社会に安定をもたらすことにも役立ちます。オフィスは有事の際に従業員・顧客・地域社会を守る基地となります。その機能を果たすためにも、あらゆる状況を想定した対策を整備していくことが大切です。
大規模な地震による、オフィス被害の実態
今後の地震対策の参考にするため、過去の大規模な地震による被害状況を確認しておきましょう。
▶大規模震災における被害の状況
阪神・淡路大震災では、午前5時46分という早朝だったため自宅での被災が多数発生しています。住宅被害は約64万棟、6,434人の死者のうち窒息・圧死が77%を占めました。地震後、計285件の火災が発生。出火原因の分かった火災のうち、最も多かったのは電気機器等が関連する火災、次いで、ガス・油等燃焼機器関係となっています。東日本大震災では死者1万5,859人、行方不明3,021人の被害で、死因は溺死9割超、圧死・窒息死、凍死など5%弱、焼死が約1%となっています。東京消防庁が行った都内の中高層建物のオフィスへのアンケートでは、20%がオフィスで転倒・落下・移動が発生したと回答。特に中高層階においてオフィス家具類や家電製品などの転倒・落下・移動が多く発生しています。
▶震災においてオフィスで想定されるリスク
震災発生時に、オフィスで想定されるリスクとしては以下のようなものがあります。
- 天井の破損:最近は配線の組み換えができる構造の天井が多く見られますが、そうした天井が脱落するケースが発生しています。震災後に「システム天井が落ちた」といった声も聞かれています。
- エレベーター停止:業務稼働時に地震が発生した場合には、エレベーターの緊急停止により多くの人が閉じ込められる危険性があります。
- オフィス家具、大型家具などの転倒:オフィスには一般家庭以上に大型・大重量のオフィス家具や機器があり、下敷きになると大ケガをする恐れがあります。
- 棚からの書籍・備品の落下:書籍や備品は軽いものであっても、落下・散乱により避難の妨げとなります。
- サーバーの停止・損傷:業務停止を余儀なくされ、復旧が困難になることも予測されます。
- 企業資産的価値のあるデータの消失:顧客情報をはじめとする重要データの消失は、業務継続の大きな障害となります。
安全なオフィスづくりのための地震対策のポイント
安全なオフィスを構築していくために、地震対策のポイントを紹介します。
- 防災担当者の選任
地震対策を体系的に進めていくためには、「安全配慮義務」「東京都帰宅困難者対策条例」「BCP」などへの理解が深い防災担当者の選任が必要です。各部署内やパートごとにもそれぞれ担当者を選任し、企業内の安全ネットワークを構築していきます。防災担当者は安全確認ルートの策定や社内への周知徹底、備蓄品の管理などを実施し、地震やその他の災害に備えます。
- 避難経路、避難所の確認
出入口や廊下、階段などの避難経路の障害物を定期的に確認し、避難経路を確保しておきます。あわせてオフィス内の整理整頓を行い、日ごろから有事の際、避難の邪魔にならないように心がけておきます。社内で安全性の高いスペースを確認しておき、一時的な避難場所を確保しておくと、揺れが収まるまで待機することができます。避難通路についての詳細は、「オフィスの避難通路の幅はどの程度確保しておく必要がある?」をご覧ください。
- オフィス家具の耐震対策
先にご紹介したアンケートでも見られたように、オフィス家具・備品の固定は非常に重要です。機械設備の固定、家具や扉への留め具設置など、見落としがちな個所もしっかりと確認しておきます。また、窓ガラスに飛散防止フィルムを貼付するといった対策も必要です。
- データのバックアップ
現代企業ではデータが大きな資産価値を持ちます。拠点分散やクラウドストレージの活用などで、データの消失や破損といった事態に備えるようにしていきます。
- 防災教育、避難訓練の実施
防災担当者だけではなく、全社員が地震への備えをしておくことが重要です。防護、初期消火、救出・救助、応急救護、避難、情報収集など、防災教育と避難訓練を定期的に行っていきます。防災シナリオに基づいた図面上訓練と、その機能を確認するための実地訓練を繰り返しながら、より精度の高い避難行動の実現を目指します。さらに地域と連携し、役割分担や協力体制の策定が求められます。
- 備蓄品の準備
備蓄品は従業員1名について、非常食3食×3日分・水は1日3リットル×3日分必要です。その他、毛布・マスク・医薬品なども十分準備しておく必要があります。災害はいつ発生するか分かりません。非常食や水については定期的に賞味期限を確認し、必要に応じて入れ替えを行うことが大切です。防災備蓄品についての詳細は、「企業における防災備蓄品‐必要量の目安と選定のポイントは?」や「防災備蓄品の準備で企業が抱えがちな悩みと解決するためのポイント」をご覧ください。
- オフィスレイアウト
オフィスのレイアウトを設計する際には、防災を意識した配置をする必要があります。ワークスペースであるデスク周辺からは背の高い家具を排除し、避難経路が確保できるよう家具を配置しましょう。転倒の恐れがある家具を間仕切として使用しない、家具の上に物品を積み上げないなどのルールも徹底します。
【参考】
【関連コラム】オフィスの避難通路の幅はどの程度確保しておく必要がある?
【関連コラム】企業における防災備蓄品‐必要量の目安と選定のポイントは?
【関連コラム】防災備蓄品の準備で企業が抱えがちな悩みと解決するためのポイント
オフィスの地震対策に万全を期すことは企業の務め
日本は世界でも有数の地震国であり、30年以内に高い確率で巨大地震が発生するともいわれています。従業員の命と事業を守るため、また地域貢献のためにも、可能な限りの防災対策を実施する義務があります。自社として万全の対策を講じておきましょう。
キキタイマガジンを運営している「プラス株式会社ジョインテックスカンパニー」では、
「モノ」、「コト」、「ヒト」、「情報」の4つのソリューションを提供しています。
4つのソリューションについてはこちらをご覧ください。
防災備蓄品の選定や入れ替えについて、ご相談のお問い合わせはこちらから。