介護・福祉施設での災害時における
職員の役割と対応のポイントを紹介

介護・福祉施設での災害時における職員の役割と対応のポイントを紹介

多くの高齢者や身体の不自由な利用者が集まる介護・福祉施設では、大規模災害が発生した際の被災リスクが一層高まります。介護・福祉施設における防災対策は重要であると認識している一方で、具体的にはどういった対策が必要かわからないというケースもあるのではないでしょうか。
そこで本記事では、介護・福祉施設における災害対応のポイントを詳しく解説します。

災害時における介護・福祉施設職員の役割

万が一介護・福祉施設で災害が発生した場合、そこで働く職員にはどのような役割が求められるでしょうか。

▶利用者の安全確保

災害発生直後は、利用者の命を最優先にしながら安全に施設外へ避難できるよう誘導しなければなりません。
介護・福祉施設では歩行が困難な利用者も多いことから、そのような利用者の介助をしながら避難場所へ誘導し、安全を確保することが求められます。

▶利用者の応急処置や健康管理

建物の倒壊やモノの落下、避難時の転倒などによってケガをした利用者がいた場合、すぐに適切な応急処置を施す必要があります。
また、避難生活中においては、非常食や保存水などの提供、排せつのサポート、薬の確保と投与、体調変化の観察といった利用者の健康管理が平常時同様に求められます。

▶利用者のメンタルケア

大規模災害の発生時には利用者が精神的な不安に陥ったり、避難生活によってストレスを感じたりすることがあります。また、焦燥感や怒りなどのネガティブな感情をあらわにする利用者も出てくるでしょう。
こういったネガティブな感情を緩和するメンタル面でのケアも求められます。

介護・福祉施設における災害対応のポイント

災害発生時において、介護・福祉施設の職員は具体的にどのような行動を心がけるべきなのでしょうか。災害対応のポイントを解説します。

▶安全な避難のポイント

利用者がケガをすることなく安全に避難するためには、落ち着いた行動を取るよう呼びかけるとともに、あらかじめ避難場所を選定しておくことが大切です。また、災害発生直後は避難経路にモノが落下していたり、建物の一部が倒壊していたりするケースもあるため、障害物があれば撤去しておきます。
さらに、エレベーターがある施設では、中に人が閉じ込められていないか確認することも忘れないようにしましょう。

▶応急処置・健康管理のポイント

利用者の命と健康を守るためには、非常食や保存水など必要な備蓄品の品目と量の把握、備えが基本となります。
また、利用者の健康状態に応じて医療機関との連絡体勢を整備しておくことも大切です。そのうえで、利用者一人ひとりに必要な薬を把握し準備しておくとともに、医療機器が正常に動作するか確認し、必要な機器の稼働を止めることのないよう非常用電源も確保しておかなければなりません。

▶メンタルケアのポイント

利用者のメンタル面でのケアにおいては、職員が落ち着いて行動し、情報を明確に伝えることが大切。それにより利用者に必要以上の不安を与えることなく、混乱防止につながります。
また、利用者にできるだけ寄り添い、不安感の払拭に取り組むことも重要です。さらに利用者の心の安定のためにも、家族への連絡は忘れないようにしましょう。

災害時に適切に対応するための事前対策

上記のような必要な対応にあたって、事前にできる具体的な対策としてどのようなものがあるのでしょうか。次のようなものが考えられます。

▶緊急時の対応マニュアル作成

災害発生時でも落ち着いて行動ができるよう、緊急時用の対応マニュアルを作成しておきましょう。
マニュアルに記載する内容の一例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 避難場所
  • 避難経路
  • 避難の誘導方法
  • 自力での歩行が困難な利用者の介助方法
  • 医療機器の動作確認方法
  • 医療機関・家族への連絡の方法 など

▶医療機関との連携

災害発生時は混乱に陥り、正常な判断ができなくなるケースも考えられます。そこで、どのような場合に医療機関へ連絡を取るべきか、明確な基準を策定しておきましょう。
医療機関によっては多くの救急患者が搬送され、受け入れができなくなることも想定されます。その場合、代わりにどの医療機関へ連絡を取るのかも、マニュアル化しておくことをおすすめします。

▶訓練・シミュレーション

災害を想定し、対応マニュアルに沿って訓練やシミュレーションを実施しておきましょう。
定期的に訓練を行うことで、災害発生時の行動を覚えられ、いざというときでもスムーズに避難を誘導でき、利用者の命を救うことにつながります。

▶必要な備蓄品の把握

非常食や保存水、医薬品、衛生用品、避難補助用品など、必要な備蓄品の品目と量を把握し準備しておきましょう。また、避難生活が長引くことを想定し、ラジオやモバイルバッテリー、非常用電源なども用意しておくと安心です。
介護・福祉施設に必要な事前対策については、「介護施設に必要な防災対策とは?解決すべき課題と取り組みのポイントも解説」も参考になります。


防災対策同様、事業を継続するためのBCP対策もあらゆる企業に求められますが、提供するサービスが利用者の健康と生活、ひいては生命維持に直結する介護・福祉施設においては、事業継続はより一層重要です。
 介護・福祉施設におけるBCP対策については、「介護施設のBCP策定はどのように進める?課題や注意点も解説」で詳しく解説しています。ぜひこちらも参考にしてください。

【参考】

【関連コラム】介護施設に必要な防災対策とは?解決すべき課題と取り組みのポイントも解説
【関連コラム】介護施設のBCP策定はどのように進める?課題や注意点も解説

「スマート介護」で災害への事前対策とBCP対策を網羅

今回は、万一災害があった場合における介護・福祉施設における職員の役割や事前対策のポイントなどを紹介しました。さまざまな対策が求められますが、日々膨大な量の業務に追われる中で、いつ来るかわからない災害への対策はどうしても後回しになってしまうという施設もあるでしょう。
しかし、災害はこのあとすぐに来るかもしれません。災害対策は、今すぐにでも着手すべき重要な取り組みです。加えて介護・福祉施設においては2024年4月からBCP策定が義務付けられているため対応が急がれます。
※2024年4月からのBCP策定義務化については、「介護施設・事業所におけるBCP策定が義務化!取り組む際の注意点を解説」をご覧ください。
 
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【参考】

【関連コラム】介護施設・事業所におけるBCP策定が義務化!取り組む際の注意点を解説