ゲリラ豪雨とは?発生のしくみや想定される被害、企業が行うべき備えを解説

日本各地で突如として発生するゲリラ豪雨は、予測が難しく短時間で大量の雨をもたらします。この現象は企業活動に甚大な被害をもたらすリスクがあるため、適切な対策が不可欠です。本記事では、ゲリラ豪雨の発生メカニズムから想定される被害、そして企業が今すぐ取り組むべき効果的な対策までを詳しく解説します。
目次
ゲリラ豪雨とは
ゲリラ豪雨は、その名前が示す通り、突如として局地的に発生する激しい雨のことです。最大の特徴は、発生場所や時間の予測が難しい点にあります。現代の気象予報技術をもってしても、発生のごく直前まで予測できないことがほとんどです。近年、特に夏場を中心に発生頻度が増加し、各地で深刻な浸水被害や土砂災害を引き起こしています。
ゲリラ豪雨の発生のしくみ
ゲリラ豪雨は、積乱雲の急速な発達によって引き起こされます。暖かく湿った空気が上昇気流によって一気に上空へ持ち上げられると、空気が冷やされて水蒸気が凝結し、大量の雨滴が形成されます。特に夏場は、地表が太陽光で熱せられ、上昇気流が発生しやすくなるため、ゲリラ豪雨が発生しやすいといわれています。
局地的大雨、集中豪雨、線状降水帯との関係
一般にゲリラ豪雨と呼ばれている現象は、気象庁の正式な用語では「局地的大雨」と呼ばれています。
局地的大雨とは、単独の発達した積乱雲によって発生し、ピンポイントでの予測が難しく、狭い範囲に短時間で激しい雨をもたらします。
一方、「集中豪雨」は、ゲリラ豪雨より広い範囲で数時間から数日間にわたり強く降る大雨を指します。山や谷などの地形効果によって積乱雲が同じ場所で次々と発生し、特定の地域に継続的に雨をもたらします。
近年、全国各地で甚大な被害をもたらしている「線状降水帯」は、集中豪雨の特殊なケースです。複数の発達した積乱雲が線状に連なり、同じ場所に猛烈な雨を継続的に降らせます。広範囲に甚大な被害をもたらす危険性が非常に高い現象といえます。
スコール・夕立との違い
ゲリラ豪雨、夕立、スコールはいずれも短時間に降る雨ですが、その特徴と発生メカニズムには違いがあります。
夕立は、主に夏の午後から夕方にかけて発生する一時的な雨です。日中の地表加熱による上昇気流が原因ですが、必ずしも激しい雨を伴うわけではなく、多くの場合、短時間で終わります。
スコールは、熱帯地域特有の現象で、スコールラインと呼ばれる雷雲の集団によって引き起こされ、こちらも短時間で通り過ぎます。
これらに対してゲリラ豪雨は、夕立と異なり時間帯を問わず発生し、スコールより狭い範囲に集中した猛烈な雨量をもたらします。
都市部でゲリラ豪雨が発生しやすい理由
都市部では、郊外と比べてゲリラ豪雨が発生しやすいとされています。アスファルトやコンクリートで覆われた地表が日中の熱を蓄え、強い上昇気流を生み出すヒートアイランド現象が原因です。この現象が積乱雲の急速な発達を促し、高層ビル群による風の流れの変化も相まって、局地的な豪雨が形成されやすい環境を生んでいます。
ゲリラ豪雨で発生しうる被害
ゲリラ豪雨は、その突発性と局地的な集中豪雨によって、さまざまな被害を引き起こす可能性があります。企業活動への影響と合わせて解説します。
建物への浸水被害
短時間に大量の雨が降ることで、排水能力を超えた雨水が道路や建物に流れ込み、さまざまな浸水被害をもたらします。建物の浸水は、什(じゅう)器や電子機器、書類などへの被害が大きく、清掃や消毒にも多大な労力とコストが必要となるため、事業継続に深刻な影響を及ぼすことがあります。また、目に見えない場所でのカビや腐食を引き起こす原因となり、建物の耐久性低下につながります。
地下施設への浸水被害
地下施設は、雨水が一気に流れ込むことで急速に水位が上昇し、危険な状況に陥ります。多くの企業ビルでは、電気設備や通信設備、サーバールームなど重要インフラが地下にあり、浸水すると建物全体の機能停止を招きます。地下倉庫に保管されている在庫や重要書類も、取り返しのつかない被害を受ける可能性があります。
土砂災害(土砂崩れ、がけ崩れ)
山間部や丘陵地に立地する企業施設では、ゲリラ豪雨による土砂災害のリスクが高まります。土砂崩れやがけ崩れは建物の倒壊や埋没、道路の寸断など深刻な被害をもたらし、従業員の安全も脅かします。道路の寸断により、事業所が長期間孤立し、物資の供給や従業員の避難が困難になるおそれがあります。
交通インフラやライフラインへの影響
ゲリラ豪雨の結果として、停電や断水、通信障害などのライフライン障害が発生し、事業継続に影響を及ぼします。道路冠水による交通網の遮断や鉄道の運休は、従業員の出勤・退勤や物流機能を麻痺させ、事業活動全体に大きな影響を与えるでしょう。
企業が行うべきゲリラ豪雨への備え
ゲリラ豪雨に備え、企業が行うべき備えを紹介します。
正確かつタイムリーな情報の入手
ゲリラ豪雨への備えの基本は、正確な情報をタイムリーに入手することです。気象庁では、次のような情報サービスを提供しています。
- キキクル(危険度分布):土砂災害や浸水の危険度を5段階の色分けで視覚的に表示。紫色(「危険」)は警戒レベル4相当で、企業としての避難判断や事業中断の検討が必要な状況を示します。
- 雨雲の動き・雷活動度・竜巻発生確度(ナウキャスト):今後数十分間の雨雲の動きをリアルタイムで予測。
気象庁 | 雨雲の動き・雷活動度・竜巻発生確度(ナウキャスト)
- 今後の雨(降水短時間予報):15時間先までの各1時間雨量を予報し、より長い時間軸での大雨の動向把握が可能。
これらの防災気象情報は、多くの場合、自治体からの避難指示等に先立って発表されます。企業独自の避難判断や事業中断を判断するための重要な情報として活用できます。
BCP(事業継続計画)の策定・組み込み
ゲリラ豪雨による事業中断のリスクに対応するためには、BCPの策定が不可欠です。まず、ハザードマップを確認し、自社施設の浸水・土砂災害リスクを正確に把握することから始めましょう。国土地理院「ハザードマップポータルサイト」を活用することで、効率的にリスク評価ができます。把握したリスクに対して効果的な対策を検討し、BCPに反映させます。
BCPでは、豪雨影響下での業務優先順位と復旧目標時間を明確にし、代替手段を事前に用意しておくことが重要です。また、従業員の安全を確保するための避難計画や、警戒レベルに応じた具体的行動指針を定め、これらを実行する責任者を明確にしておくことで、緊急時でも迅速な対応が可能になります。
BCP策定後は、定期的な訓練と見直しを通じ、より実効力を高めていきましょう。
BCPやハザードマップについては、「BCP対策とは?その目的と取り組む際の流れを解説」 「ハザードマップとは?見方や種類、防災担当者がチェックすべきポイントを解説」にて詳しく解説しています。
施設・設備の浸水対策
止水板や土のうの配備、重要設備の高所配置などを検討しましょう。特に、地下や1階にある電気設備やサーバー、重要書類などは、上層階への移設やかさ上げを検討することが重要です。排水ポンプや防水シート、懐中電灯、予備バッテリー、蓄電池などの水害対策用品を十分に用意しておきましょう。これらの備蓄品は定期的に点検し、使用期限や動作確認を行うことが重要です。
水害・浸水対策や備蓄品については、下記の記事にて詳しく解説しています。
企業の水害・浸水対策とは?求められる理由や具体的な方法を解説
工場・倉庫を浸水から守る対策7選!日頃からできる水害への備えを解説
企業が蓄電池を導入するメリットとは?災害時以外の活用方法も紹介
必要な備えでゲリラ豪雨による被害を最小限に
ゲリラ豪雨は予測が難しい自然現象ですが、適切な備えによって被害を軽減することが可能です。企業防災の観点からは、従業員の安全確保と重要業務の継続のためにBCP策定や浸水対策を行うことが重要です。ハザードマップを参考にゲリラ豪雨発生時のリスクを見極め、適切な対策を実施しましょう。
ジョインテックスカンパニーでは、水害対策用品や防災備蓄品など防災用品約1,400アイテムを掲載した「危機対策のキホン」カタログをご用意しております。企業の防災対策のために、ぜひご活用ください。
次のコラムでは、ゲリラ豪雨の対策方法について解説します。ぜひご一読ください。
前回の記事ではハザードマップの活用方法を解説しました。合わせて読むことで水害対策をより具体的に進めていくことが可能です。こちらも合わせてご一読ください。
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