発電機と蓄電池の違いは?特徴、非常用電源としてどちらを選ぶべきかを解説

近年、気候変動に伴う自然災害が増加し、企業や施設では事業継続計画(BCP)の重要性が高まっています。なかでも停電対策は、業務継続や人命の安全に直結する重要課題です。そこで注目されているのが、「発電機」と「蓄電池」の非常用電源です。しかし、「どちらが適しているのか」と悩む担当者も多いのではないでしょうか。本記事では、両者の違いや選定のポイントまで実務に役立つ情報をわかりやすく解説します。

発電機・蓄電池の特徴と違い

発電機と蓄電池は、どちらも停電時に電力を供給する非常用電源として重要な役割を果たします。自然災害の増加に伴い、事業継続計画(BCP)の観点から、企業や施設での非常用電源の必要性はますます高まっています。

BCPや停電対策については、以下の記事で詳しく解説しています。

BCP対策とは?その目的と取り組む際の流れを解説

停電に対する企業の備えとは?損失を回避するための対策を解説

まずは、両者の基本的な仕組みと特徴を見ていきましょう。

発電機とは

発電機は燃料(軽油、ガソリン、都市ガスなど)を燃焼させ、その動力で発電機を回転させて電気を生成する装置です。燃料さえあれば、長時間の電力供給が可能という特徴があります。

業務用発電機には、主に以下のタイプがあります。

  • ディーゼル発電機:燃費が良く高出力なため、大型施設で主流
  • ガスエンジン発電機:環境に配慮した設計
  • ポータブル発電機:移動可能で応急対応向け
  • 常用・非常用兼用発電機:平常時も活用できるコージェネレーションシステム

発電機は稼働時にエンジン音や排気ガスが発生するため、適切な設置場所の確保が必要です。また、定期的なメンテナンスも欠かせません。

蓄電池とは

蓄電池は、あらかじめ電気をためておき、停電時にその電気を使って電力を供給する装置です。

業務用蓄電池には、以下のような種類があります。

  • リチウムイオン電池:高エネルギー密度・長寿命
  • 鉛蓄電池:比較的安価
  • NAS電池:大規模施設向け

また、ソーラーパネルと連携して給電できるタイプもあります。UPS(無停電電源装置)機能を備えた蓄電池システムは、停電を自動検知して瞬時に切り替わるため、サーバーなどの重要機器の保護に適しています。

蓄電池は、稼働時に騒音や排気ガスが発生しないため、顧客対応や業務継続の妨げになりにくいというメリットがあります。

蓄電池ついては、下記でも詳しく解説しています。

企業が蓄電池を導入するメリットとは?災害時以外の活用方法も紹介

発電機・蓄電池の違い

前述の通り、発電機と蓄電池では、電力供給の仕組みが大きく異なります。この特性に基づく違いは、以下の通りです。

蓄電池と発電機の比較表

比較項目発電機蓄電池
電力供給方式燃料を燃焼させて発電事前に充電した電力を供給
電力供給時間燃料補給で長期間稼働が可能蓄電容量に依存(数時間~十数時間)
始動性始動に数秒~数十秒必要瞬時に切替(UPS機能付きの場合)
環境性エンジン音・排気ガス発生静音・排気ガスなし
初期導入コスト比較的安価(蓄電池と同等出力で比較した場合)比較的高額(特に大容量)
維持コスト燃料費・定期メンテナンス費用比較的低い(ただし、バッテリー交換は必要)
設置条件広いスペースが必要 屋内使用不可省スペース 屋内外の両方で設置可能
平常時活用常用発電(コージェネ)可能ピークカット・再エネ活用可
代表的な用途大規模施設・長期停電対策 法定設備としてサーバー保護・小規模設備用 短~中時間の停電対策

発電機と蓄電池のメリット・デメリット

発電機と蓄電池には、それぞれに異なるメリット・デメリットがあります。

発電機のメリット・デメリット

発電機は、燃料さえあれば長時間の電力供給が可能で、大規模施設の重要負荷に対応できるほどの大きな電力容量を確保できます。導入コストが比較的安価で、実績も豊富なため、多くの施設で標準的な非常用電源として採用されています。

一方で、始動までに時間がかかるため瞬時の電力供給ができません。騒音・振動・排気ガスの発生により屋内環境での利用には不向きです。さらに、定期的な試運転やメンテナンス、燃料の備蓄管理が必要という課題もあります。

蓄電池のメリット・デメリット

蓄電池には、瞬時に電力供給を開始できる即応性と、静音・無排気で設置場所を選ばない利便性があります。日常的な電力ピークカットや再生可能エネルギー活用にも利用できるため、平常時も活用することで経済的なメリットがあります。

しかし、供給可能時間が蓄電容量に依存するため長期停電には不向きで、大容量システムでは初期導入コストが高額になる点が課題です。また、バッテリーには寿命があり定期的な交換が必要なことや、充放電サイクルの制約、低温環境での性能低下といった技術的な制約もあります。

発電機・蓄電池 どちらを選ぶべきか

設備や用途によって、適切な非常用電源は異なります。それぞれの特性を踏まえ、どのようなケースで発電機や蓄電池が適しているのかをみていきましょう。

発電機が適しているケース

発電機は、長時間の電力供給が必要な大規模施設や、災害時の拠点となる重要施設に適しています。特に、医療機関、データセンター、防災センターなど、停電が人命や重大な業務に直結する場所では、長期間の電力確保が可能な発電機が不可欠です。

また、高層ビルや特定用途の施設などの建物では、法令により非常用発電設備の設置が義務付けられている場合があります。このような場合は、要件を満たす発電機の導入が必須となります。

医療機関の非常用電源については、下記で詳しく解説しています。

病院に非常用電源が不可欠な理由とは?災害時に回避できるトラブルも解説

蓄電池が適しているケース

蓄電池は、停電時に瞬時に電力供給を開始できる特性から、サーバーやネットワーク機器など無停電での運用が求められる設備を持つオフィスや小規模施設に適切な選択肢となります。

また、騒音や排気ガスが発生しないため、都市部や住宅地、顧客対応スペースに近い施設でも導入しやすいのが特徴です。平常時にはピークカットや再生可能エネルギーの有効活用にもつながり、環境配慮型経営を志向する企業にとっては大きなメリットとなるでしょう。

発電機と蓄電池の併用が効果的なケース

発電機と蓄電池を併用するハイブリッド型の利用が効果的なケースもあります。

例えば、UPS機能付き蓄電池で瞬時の電力供給を確保しつつ、発電機が起動するまでの橋渡しとして活用する方式は、データセンターなどで広く採用されています。

また、蓄電池をメイン電源とし、屋内での使用に適していない発電機をバックアップ電源として組み合わせることで、汎用性の高い大容量の電源確保が可能になります。

発電機・蓄電池を選定する際のポイント

非常用電源の選定では、以下のポイントを確認することが重要です。これらを総合的に評価し、施設の特性や予算に応じた非常用電源を選択しましょう。

必要な電力継続時間

想定される停電の長さ(数時間〜数週間)に応じて、必要な容量を見極めましょう。多くの場合、短時間の停電には蓄電池、長時間の停電には発電機やハイブリッド型が適しています。

重要負荷の特定

停電時でも必ず電力を供給すべき設備の容量合計を把握しましょう。例えば、サーバーやセキュリティ機器、重要な生産設備、医療機関であれば生命維持装置などが重要負荷に該当します。必要最小限の電力に絞ることで、コストを抑えつつ、確実な対応が可能になります。

瞬時切り替え機能の必要性

サーバーやセキュリティ機器など、瞬断が許されない機器がある場合は、UPS機能付きの蓄電池が不可欠です。一瞬の電力途絶でもシステムダウンやデータ損失のリスクがあるため、即時切り替え機能の有無は大きな選定ポイントとなります。

設置環境の確認

設置スペースや騒音・環境規制などの条件を事前に確認しましょう。発電機は、排気設備や燃料タンクのスペースが必要なうえ、定期的なメンテナンス作業を行える余裕も考慮する必要があります。

さらに詳しい選定のポイントは、企業・施設・店舗などそれぞれの特性に応じた内容を解説したウェビナー動画でご紹介しています

【ウェビナー動画】一般企業向け「自家発電機の選び方のポイント」セミナー

【ウェビナー動画】介護・福祉事業所向け「自家発電機の選び方のポイント」セミナー

【ウェビナー動画】店舗・商業施設向け「自家発電機の選び方のポイント」セミナー

非常用電源の選定には発電機・蓄電池の特徴を知ることが第一歩

企業や施設における非常用電源の選択は、事業継続計画(BCP)に直結する重要な取り組みです。蓄電池は瞬時の電力供給と静音性に優れ、発電機は長時間の電力確保が可能という特性を持ち、企業や施設の用途に応じた選択が効果的です。

非常用電源の選定には、企業や施設の規模や想定される停電時間、設置環境などを総合的に考慮する必要があります。しかし、専門知識が必要な分野だけに、導入を検討しても判断に迷うことも少なくありません。

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前回では落雷による停電について解説しています。選び方と合わせてお読みください。