防災の日とは?意味・由来と当日実施したい企業防災の取り組み5選

自然災害が激甚化する現代、企業の防災対策は経営の重要課題となっていますが、防災意識の維持は難しいのが現実です。そこで活用したいのが「防災の日」です。関東大震災の教訓から生まれたこの日は、企業が防災体制を組織的に強化する貴重な機会となります。この日を活用して、企業防災の強化につなげられないかと検討する方もいるでしょう。
本記事では、防災の日の由来や企業が活用すべき理由を解説するとともに、具体的な5つの取り組み例を紹介します。
目次
防災の日とは
防災の日は、1960年(昭和35年)の閣議決定により、毎年9月1日と制定されました。
9月1日という日付は、1923年(大正12年)に発生した関東大震災に由来します。この震災は、死者・行方不明者が10万人以上に達し、空前の大惨事となりました。さらに、1959年(昭和34年)には「伊勢湾台風」が発生し、戦後最大規模の被害をもたらしています。これら2つの大災害を踏まえ、国民の災害への備えと防災意識を高める目的で制定されたものです。
また、例年8月31日から9月1日付近は、台風の襲来が多いとされる二百十日にあたり、「災害への備えを怠らないように」との戒めも込められています。
防災週間との違い
防災の日を含む8月30日から9月5日までの1週間が、防災週間です。
防災の日が1日限りの啓発活動であるのに対し、防災週間は継続的に防災意識を高める期間として設定されています。
この期間中、国や自治体、企業、学校などが防災訓練や講習会、展示会、防災用品の紹介、防災キャンペーンなど多様な活動を実施し、災害への備えを具体的に見直す機会として広く定着しています。
企業が「防災の日」を活用すべき理由
防災の日は、企業防災を見直すために適したタイミングだといえます。
防災対策は、日常業務のなかで継続的に取り組むのが理想ですが、実際には後回しになりがちです。だからこそ、毎年同じ時期に訓練や備蓄点検を実施することで、防災体制の維持が継続しやすくなります。
法令で義務付けられている消防訓練や防災管理も、この時期に合わせて実施することで無理なく効率的に進められるでしょう。
さらに防災週間中は多くの自治体が啓発活動を展開するため、従業員の防災意識向上にも相乗効果が期待できます。
企業防災については、「企業防災はなぜ重要?防災と事業継続から考える具体的な取り組み」で詳しく解説しています。
防災の日に実施したい取り組み5選
防災意識が高まりやすい防災の日を効果的に活用するための、具体的な取り組みを5つご紹介します。
1.BCP・防災マニュアルの見直し
防災の日を機に、既存のBCPや防災マニュアルが現在の実態や法令要求事項に合っているかを検証しましょう。組織体制の変更、新規事業所の設置、設備更新などがあれば、それに対応したマニュアル更新が必要です。また近年の災害事例を踏まえ、想定災害・リスクの見直しや対応手順の改善も行うといいでしょう。
BCP・防災マニュアルについて詳しくは、「BCP対策とは?基礎知識から策定手順、運用のポイントまでわかりやすく解説」「防災マニュアルの作成方法とは?BCPとの違いや押さえるべきポイントも解説」をご覧ください。
2.避難・消火訓練の実施
防災の日を活用した避難・消火訓練は、防災体制の見直しや従業員の意識向上に効果的です。
従来の形式的な訓練に加え、実践的なメニューがあれば取り入れることで従業員の災害対応力を高められます。消火訓練では初期消火の実技だけでなく、消火設備の点検や使用手順の確認もあわせて実施しましょう。
3.災害図上訓練(DIG)・避難所運営ゲーム(HUG)の実施
地図やシナリオを使って災害対応を検討する防災訓練手法があります。従来の避難訓練では得られない気づきが得られるとして活用が広がっています。代表的な手法として、次の2つがあります。
- 災害図上訓練(DIG)
地図を用いて、被害状況や避難経路、危険箇所などを具体的に想定しながら防災対策を話し合う訓練です。Disaster(災害)、Imagination(想像力)、Game(ゲーム)の頭文字を取って命名されました。想定外の事態に対応する力を養い、参加者の当事者意識を高める効果があります。 - 避難所運営ゲーム(HUG)
避難所に見立てた会場で、さまざまなトラブルや課題にどう対処するかを疑似体験します。Hinanjo(避難所)、Unei(運営)、Game(ゲーム)の頭文字を取って命名されました。
事業所が一時避難場所になる場合の運営体制を疑似的に経験でき、より実践的な対応力を養うことができます。
4.安否確認訓練の実施
さまざまな災害シナリオを想定し、通信手段が限定された状況での確認方法や、在宅勤務者・出張者を含めた全従業員の安否確認体制が正しく機能するかを検証します。実際の災害時には通信インフラが麻痺する可能性があるため、複数の連絡手段を準備し、その有効性を確認できるといいでしょう。
安否確認のシステムやツールを利用している場合は、訓練を通じて、操作方法や報告ルートの習熟を図る機会となります。
安否確認について詳しくは、「企業にとって安否確認はなぜ重要?導入や運用時のポイントとは」をご覧ください。
5.備蓄品の点検・見直し
企業における備蓄品は、従業員や来客の人数、事業所の立地などに応じて適切に準備することが求められます。しかし、災害の発生傾向や事業内容の変化によって、昨年までは十分だと思われていた備蓄が不十分になるケースも少なくありません。
例えば、最近の災害動向を踏まえた見直しポイントには、以下のような項目があります。
- 非常用電源
長期停電を想定し、蓄電池や発電機、モバイルバッテリー、燃料などの備えが十分かを確認します。それぞれ特性や設置条件が異なるため、用途や環境に応じて適したものを備蓄することが重要です。
非常用電源の種類について詳しくは、「発電機と蓄電池の違いは?特徴、非常用電源としてどちらを選ぶべきかを解説」をご覧ください。
- 感染症対策用品
マスク、消毒液、体温計などの備蓄も欠かせません。災害時には密集状態となりやすく、感染症拡大のリスクが高まるためです。
- 簡易トイレ・衛生用品
簡易トイレやトイレットペーパー、ウェットタオル、生理用品などの衛生用品の充実も重要です。上下水道の復旧に時間がかかる場合の衛生環境の悪化を防ぎます。
また、点検を通じて保管場所を全従業員に周知し、賞味期限・使用期限の確認や機器の動作確認もあわせて実施します。これにより緊急時に確実に活用できる体制を整えることができます。
防災備蓄品について詳しくは、「企業における防災備蓄品‐必要量の目安と選定のポイントは?」をご覧ください。
防災の日をきっかけに、企業防災を強化しよう
防災の日は、企業にとって防災意識を高める絶好の機会といえるでしょう。紹介した5つの実践的な取り組みを参考に、自社に合った防災強化の方法を検討してみてください。
防災備蓄品の点検や整備を進める際に、内容や数量の選定に迷うことがあれば、ジョインテックスカンパニーのソリューションをご活用ください。
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