【2026年最新】クマ対策8選|企業・学校・町内会など場所別の実践ポイント

近年、全国各地で熊(クマ)の出没による人身被害が増加しており、山間部だけでなく住宅地や市街地周辺でも注意が必要な状況となっています。学校の通学路や企業敷地、病院周辺など、これまで比較的安全と考えられていた場所でも目撃情報が相次いでいます。
このような背景から、国や自治体もクマ対策を強化しています。企業や地域においても、従業員や住民を守るためのクマ対策がこれまで以上に求められています。
本記事では、クマ被害の最新動向や基本的な考え方を整理したうえで、場所や状況ごとに押さえておきたい実践ポイントを解説します。
目次
なぜ今、クマ対策が急務なのか
クマ被害の最新情報
環境省の最新データによると、2025年度のクマによる人身被害(速報値)は238人(死亡13人)で、いずれも過去最多を記録しました。それまで最多だった2023年度の219人(死亡6人)をさらに上回り、死亡者数は倍以上に増えています。地域別では北海道・東北6県が全体の7割強を占めますが、中部・北陸や関東北部でも被害は発生しています。
参考:R07年度におけるクマの人身被害件数(速報値)|環境省[PDF]
被害の深刻さは捕獲数にも表れています。同じく環境省の最新データによると、2025年度の許可捕獲数(速報値)は計14,720頭に達し、それまで最多だった2023年度の約9000頭を大きく上回りました。捕獲されたクマの99%以上が捕殺されており、出現した個体のほとんどが、危険性が高いと判断されていることを意味します。
参考:クマ類の捕獲数(許可捕獲数)について[速報値]|環境省[PDF]
こうした数字が示すとおり、「出没したら駆除する」という場当たり的な対応だけでは、もはや状況を抑えきれないフェーズに入っているといえるでしょう。
クマ被害増加の原因
クマ被害の急増は、「ドングリの不作」のような一時的な現象だけでは十分に説明できません。一般的には、次の2つの構造変化が指摘されています。
- 人とクマとの境界線の消失
かつて緩衝地帯として機能していた里山が、少子高齢化に伴い放棄され、クマの生息域が人の生活圏のすぐそばにまで広がりました。以前は「山奥」だった場所が「建物のすぐ裏」になっています。
- 人を恐れないクマの出現
ゴミ置き場や放任果樹など、人間の生活圏を安全な「エサ場」として学習したクマは人間への恐怖心を失い、従来の「追い払い」が効きにくい個体へと変質しています。
クマ被害に対する国の取り組み
こうした状況を受け、国はクマ対策を段階的に強化しています。
2024年には対策方針の公表やクマ類の「指定管理鳥獣」への追加が行われ、2025年には市街地での迅速な対応を可能にする「緊急銃猟制度」が創設されるなど、制度整備が急ピッチで進められました。
参考:鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律施行規則 の一部を改正する省令(概要)[PDF]
さらに2026年3月には、「クマ被害対策ロードマップ」が策定され、2030年度までに地域ごとの対策強化を集中的に進める方針が示されました。
政府の取り組みの最新情報は、こちらから確認できます。
クマに関する各種情報・取組 |野生鳥獣の保護及び管理[環境省]
クマからの被害を防ぐ対策8選
国の制度整備が進む一方で、対策の現場となるのは各組織や地域です。ここでは、具体的な対策を紹介します。
1. 誘引物(ゴミ・果樹など)の管理・除去
クマが人里に来る最大の理由となるのは、食べ物をはじめとした誘引物の存在です。これを適切に管理することは、基本的かつ重要な対策だといえます。具体的には、以下のことを行いましょう。
- 生ゴミ(残飯・油など)
収集日の当日朝に出し、それまでは屋内で保管することを徹底しましょう。フタをロックできるゴミ箱や、囲い付きの集積場を導入するとさらに効果的です。
- コンポスト(生ゴミを堆肥にする容器)
肉・魚・果物など、強いにおいを放つものの投入を控えましょう。定期的に土や発酵促進剤を入れることで、においを抑えられます。
- 果樹・農作物
収穫しないカキ・クリなどの放任果樹は、伐採や枝払いを進めましょう。落下した果実も放置せず、速やかに回収することが必要です。
- その他
ペットフードや肥料なども屋内で保管しましょう。お墓のお供え物も見落としがちな誘引物のひとつです。
2. 電気柵の設置
農地や施設の周囲に電気柵を設けることで、クマの侵入を物理的に防ぐことができます。設置後も草が柵に触れて漏電しないよう、定期的な点検と周辺の草刈りが欠かせません。導入にあたっては、環境省や農林水産省の交付金、自治体独自の補助制度を活用できる場合があります。
3. センサーカメラの設置


センサーカメラを設置することで、クマの出没をいち早く検知し、関係者への迅速な周知につなげることができます。また、「いつ・どこに・どのくらいの頻度で来ているか」を記録として蓄積することで、電気柵の設置場所やパトロールの重点エリアなど、他の対策の精度を高める判断材料にもなります。
4. ヤブ刈り・見通しの確保



建物や通路の周辺にあるヤブを刈り払い、クマが身を隠せる場所をなくします。クマは身を隠せる茂みを伝って移動するため、見通しを確保するだけでも出没リスクを下げる効果があります。除草剤や草刈り機などを広さや利用状況に応じて活用すると、作業を円滑に進められます。
5. クマよけグッズの整備・配布
山菜採り、巡回、農作業など早朝かつ音が出にくい屋外作業を行う際には、個人が携帯できるグッズを備えておくことで、クマとの不意の遭遇リスクを下げられます。主なグッズは、以下のとおりです。
- クマよけ鈴・ホイッスル



音を出して人の存在をクマに知らせ、不意の遭遇を避けるために使用します。クマ被害への対策では、出くわさないようにすることが重要です。クマの出没情報があるエリアでの活動時には装着を呼びかけるなどの対応を検討するとよいでしょう。
- クマ撃退スプレー


クマが接近した際に噴射して撃退するための道具です。至近距離(5〜10m程度)で使用するため、事前に噴射方法や安全装置の外し方を確認しておくことが重要です。緊急時に使用するため、ホルスターを使用する、腰に装着しておくなど、とっさに取り出す・使用することができる状態にするよう周知を行いましょう。
- ラジオ・携帯スピーカー



人の声や音楽を流すことで、周囲にいるクマに人の存在を知らせる効果が期待できます。
6. 行動ルールの周知
クマに遭遇しないための行動ルールを関係者に周知徹底することも重要です。クマの活動が活発な早朝・夕方の単独行動を避け、できるだけ複数人で行動すること、フンや足跡などクマの痕跡を見つけたらすぐに引き返すこと。弁当の食べ残しなどのゴミは必ず持ち帰ることなどです。こうした基本行動を徹底することで、遭遇リスクを下げることができます。
7. 遭遇時の対処法の周知
「遭遇したらどうするか」を関係者に事前に伝えておくことが重要です。遠距離ならゆっくり後退する、至近距離なら首の後ろを守りうつぶせで防御する、走って逃げるのは逆効果、といった基本を、ポスターの掲出や研修で繰り返し周知します。
8. 初動対応フローの整備
いざクマが出没した際に、誰が何をするかが決まっていなければ初動が遅れます。
例えば、「発見 → 通報(110番+自治体鳥獣対策課)→ 退避指示 → 専門家への引き継ぎ」の流れを、あらかじめ文書化しておきましょう。環境省のクマ出没情報マップや自治体の速報など、どこから最新情報を得るかまで含めて整理しておくと、初動対応がスムーズになります。
環境省「クマ類出没対応マニュアル -改定版- || 野生鳥獣の保護及び管理[環境省]」では、さまざまなクマ対策を紹介しています。
【組織・場所別】クマ対策の実践ポイント
組織や場所の特性に応じたクマ対策のポイントを紹介します。
企業・事業所
東京商工リサーチが2026年2月に実施した調査によると、「業務に影響が出ておらず、対応もしていない」企業が90.3%と大多数を占めました。一方で、何らかの対応をした企業は7.8%、「業務に影響が出たが対応できていない」企業も1.8%存在します。
参考:クマ被害対策、企業の7.8%が「対応した」と回答 地区別は東北が9.2%、北海道の2倍と群を抜く | TSRデータインサイト | 東京商工リサーチ
クマに襲われて従業員が負傷した場合は労災保険の対象となり、事業主の安全配慮義務が問われます。特に建設業、配送業務、農林業など屋外での活動が多い業種では、クマ出没を前提にした安全管理体制への見直しが欠かせません。例えば、撃退スプレーの配備、単独作業を避けるルールづくり、出没時に作業を中断する基準の明確化など、日頃の安全管理にクマ対策を組み込んでおくことが重要です。
なお、土木・建設業については、国土交通省東北地方整備局が公表した「工事現場等におけるクマ対策の事例集」(2025年11月)が、参考になります。大音量スピーカーや忌避剤の使用、ドローンによる監視など現場で実践されている具体策を写真付きで紹介しています。
学校・保育施設
文部科学省は令和7年(2025年)10月の事務連絡「クマの出没に対する学校及び登下校の安全確保について」で、これまでクマの出没があまり見られなかった地域も含め、通学路の点検や変更、出没時の安全対策と連絡体制の整備、危機管理マニュアルへの記載を求めています。同通知には北海道教育委員会や岩手県花巻市などの対応マニュアル事例も添付されており、自校のマニュアル作成の参考になります。
参考:(別添2) 学校における危機管理の手引(改訂第3版)の追録[北海道教育委員会][PDF]
遠足や運動会などの屋外活動について、出没情報が出た場合の実施判断フローを事前に整備しておくことも重要です。児童への安全教育では、「クマよけ鈴を鳴らす」「大人にすぐ知らせる」といったシンプルな行動を繰り返し伝えることが効果的です。
病院・介護施設
入院患者や入所者は自力での避難が困難であり、既存の防災計画では想定されていないケースがほとんどです。施設敷地のゴミ集積所や周辺の緑地がクマの誘引物になりうるため、ゴミ集積所の囲い込みや周辺の草刈りなどを優先的に進めましょう。
訪問看護・訪問介護では、山間部への訪問時に単独行動になることが多く、リスクが高まります。出没情報が出ている地域では、訪問の可否を医師・ケアマネジャー・行政と相談して判断することが推奨されています。夜勤スタッフの出退勤時間がクマの活動時間帯(早朝・夕方)と重なる点にも注意が必要です。
町内会
個人単位ではなく、地域全体で対策をそろえることが効果的です。
放任果樹の伐採や生ゴミのルールづくりは「お願いベース」になりがちですが、自治体と連携して地域ルールとして明文化することで実効性が高まります。
出没情報の共有には防災無線やLINEグループの活用が有効ですが、高齢者への配慮から、防災無線や回覧板などデジタル以外の手段もあわせて活用するのが現実的です。
草刈りやパトロールの人手が足りない場合は、センサーカメラの導入も選択肢になります。詳しくは「クマ対策に活用できる補助金・支援制度」のセクションをご確認ください。
自治体
2025年に創設された緊急銃猟制度により、市町村長の判断で迅速な対応が可能になりました。さらに2026年のガイドライン改定では、ゾーニング管理を含む自治体の運用体制強化も打ち出されています。
ただし、市街地での発砲には安全面や住民感情への配慮が必要です。そのため、自治体側で発砲の可否に関する判断基準を事前に整備しておく必要があります。
また、観光地を抱える自治体では、地域の事情を知らない観光客への注意喚起も行いましょう。登山口や観光施設での看板設置、多言語での出没情報の発信など、来訪者がクマのリスクを認識できる仕組みづくりが必要です。
クマ対策に活用できる補助金・支援制度

クマ対策には、電気柵やセンサーカメラ、警戒備品の導入など一定の費用がかかりますが、国や自治体の支援制度を活用することで負担を軽減できます。代表的な補助金・支援制度を紹介します。
- 指定管理鳥獣捕獲等事業交付金(環境省)
都道府県が実施するクマの捕獲事業やゾーニング管理の導入を支援する交付金です。
指定管理鳥獣対策事業交付金事業 || 野生鳥獣の保護及び管理[環境省]
- 鳥獣被害防止総合対策交付金(農林水産省)
電気柵の設置、わなの導入、緩衝帯整備、地域ぐるみの被害防止活動などを支援します。農地被害対策として活用されるケースが多く、自治体や協議会経由での申請が一般的です。
鳥獣被害防止総合対策交付金の支援内容について(令和8年4月改訂)[PDF]
- 学校向け支援事業(文部科学省)
「学校安全総合支援事業」による危機管理マニュアル見直しのための専門家派遣や、「地域ぐるみの学校安全体制整備推進事業」による登下校見守りボランティアへのクマ鈴・ホイッスル等の消耗品支援が活用できます。
- 自治体独自の補助制度
電気柵設置費用やクマ撃退スプレー購入費の助成を行う自治体もあります。制度内容は自治体ごとに異なるため、自治体ホームページで最新情報を確認しましょう。
環境省では、クマ対策に関する支援メニューを紹介しています。
政府によるクマ被害対策 支援メニュー一覧(令和8年1月時点版)[PDF]
クマ対策は最新情報の確認と継続運用が重要

クマ被害が過去最多を更新し続けるなか、「うちは大丈夫」という判断は、組織の管理者として危険な判断になりかねません。クマの出没傾向は年々変化しており、最新情報を常に確認し、必要な対策を継続的に取り入れることが求められます。
ジョインテックスカンパニーの防災備蓄品カタログ「危機対策のキホンカタログ」では、クマ鈴・撃退スプレーなどクマ対策用品も扱っています。防災・防犯用品をはじめとする約1,500アイテムを掲載しており、幅広い防災対策の強化にお役立ていただけます。
プラス株式会社ジョインテックスカンパニーが運営する、企業向け防災・BCP情報サイト「キキタイマガジン」運営事務局です。
キキタイマガジン内の掲載コンテンツについては、特定非営利活動法人日本防災士機構より認証を受け、一定の知識・技能を有する弊社防災士が監修しております。
クマ対策に関するよくある質問
Q1. クマ撃退スプレーはどう選べばいい?
クマ専用の唐辛子成分(カプサイシン)スプレーを選びましょう。噴射距離が5m以上、噴射時間が5秒以上あるものが、性能の目安です。防犯用スプレーや殺虫剤では効果がないため、必ずクマ対策用と明記された製品を購入してください。
Q2. 電気柵はクマ対策にどの程度効果がある?
電気柵は、クマの侵入防止策として特に高い効果があるとされています。農地や果樹園、養蜂場などでは、適切に設置・管理することで被害の大幅な減少につながることが期待されます。
ただし、設置するだけで十分というわけではありません。クマは学習能力が高いため、電気が流れていない状態や、草木が触れて漏電している状態を覚えると、侵入される可能性があります。効果を維持するには、定期的な通電確認や草刈りなどのメンテナンスが必要となります。
Q3. クマに遭遇したらどうすればいい?
まず落ち着くことが最優先です。遠くにクマがいる場合は、静かにゆっくりと後退してその場を離れます。近距離で遭遇した場合は、走って逃げるのは逆効果です。クマ撃退スプレーを持っていれば5〜10mの距離で噴射します。持っていない場合は、うつぶせになり両手で首の後ろを守る防御姿勢をとってください。
Q4. クマ対策に使える補助金はある?
環境省の「指定管理鳥獣捕獲等事業交付金」や農林水産省の「鳥獣被害防止総合対策交付金」があり、電気柵の設置やワナの導入などに活用できます。また、クマ撃退スプレーの購入費や電気柵設置費を独自に助成している自治体も増えています。まずはお住まいの自治体の鳥獣対策担当課に問い合わせてみてください。


