台風とハリケーンの違いは?基礎知識や企業が実施すべき対策を解説

日本で「台風」と呼ばれる自然現象は、海外では「ハリケーン」や「サイクロン」と呼ばれています。同じ気象現象でありながら名称が異なることに、疑問を感じる人もいるでしょう。本記事では、台風の発生時期やメカニズムや、ハリケーン・サイクロンとの違い、台風シーズン前に役立つ実践的な対策までを解説します。

そもそも台風とは

台風とは、北西太平洋(赤道より北で東経180度より西の領域)または南シナ海で発生する熱帯低気圧のうち、中心付近の最大風速が秒速17.2メートル(34ノット、風力8)以上のものを指します。

日本の気象庁では、この基準を満たした熱帯低気圧を「台風」として番号を付け、警戒を呼びかけます。

気象統計によると、30年間(1991~2020年)の平均では、年間で約25個の台風が発生しています。そのうち、約12個が日本から300km以内に接近し、日本に上陸する台風は、さらにその一部、約3個です。

台風は一度発生すると、上空の風や気圧配置の影響を受けながら移動します。通常は、低緯度では東風に乗って西へ進みますが、中・高緯度に達すると太平洋高気圧の縁を回って北上し、さらに偏西風に乗って北東へ進みます。

台風の影響は、直径数百キロメートルにも及び、強風や豪雨、高潮などの現象を伴います。その勢力や進路によっては各地に甚大な被害をもたらす可能性があります。

参考:台風とは | 気象庁

台風が発生しやすい時期

台風の発生時期は年間を通じてありますが、特に7月~10月にかけてピークとなります。この時期は、海水温が最も高くなり、台風の発生・発達に必要なエネルギーが豊富に供給されるためです。

台風の発生メカニズムや構造

台風の発生は、高温の海面から始まります。海水が蒸発して上昇気流が生じ、この過程で水蒸気が凝結して熱を放出し、さらに上昇気流を強めます。地球の自転の影響で北半球では反時計回りの大きな渦となり、台風へと成長します。

台風の特徴的な構造として、「台風の目」があります。台風の目は、中心部に位置し、周囲と比べて風が弱く、ときには晴れた状態になることもある特殊な領域です。この周囲には、「目の壁雲」と呼ばれる領域が存在し、ここが最も風雨が激しく危険な場所となります。一般的に、気象観測で台風の目がはっきりと確認できる台風は、強い勢力を持っていると判断されます。

台風とハリケーン・サイクロンとの違い

ハリケーン、サイクロンは、台風と同様、熱帯低気圧という自然現象を指しています、しかし、台風とは次の点で異なっています。

違い1:発生場所

台風とハリケーン、サイクロンの最も基本的な違いは、発生する場所です。台風は東経180度より西の北西太平洋および南シナ海で発生した熱帯低気圧を指しますが、ハリケーンは、北大西洋やカリブ海、メキシコ湾および西経180度より東の北東太平洋で発生する熱帯低気圧のことです。サイクロンは、ベンガル湾やアラビア海などの北インド洋に存在する熱帯低気圧です。

違い2:最大風速

最大風速の基準にも違いがあります。台風は、最大風速が約17m/s以上の熱帯低気圧を指します。一方、ハリケーンは、最大風速が約33m/s以上の熱帯低気圧を指します。この基準の違いから、17m/s以上33m/s未満の北大西洋の熱帯低気圧は、ハリケーンには分類されません。サイクロンは、最大風速が約17m/s以上の熱帯低気圧を指します。

台風、ハリケーン・サイクロンの強さの比較

台風、ハリケーン、サイクロンの強さを単純に比較することは難しいといえます。

まず、測定方法の違いが、比較を複雑にしています。台風とサイクロンは、「10分間平均風速」を使用するのに対し、ハリケーンは「1分間平均風速」を採用しています。このため、同じ強さの熱帯低気圧でも、測定時間が短いハリケーンの方が、最大風速が早くなる傾向があります。

また、地理的特性も各現象の特徴に影響を与えています。例えば、太平洋は大西洋より広いため、台風はハリケーンに比べて長寿命になりやすく、より広い範囲に影響を及ぼす傾向があります。一方、サイクロンは、ベンガル湾の地形的特徴から、高潮被害が深刻になりやすいという特徴があります。

さらに、気象学的な強さと実際の被害規模は、必ずしも比例しないという点にも注意すべきです。実際の被害規模は風速だけでなく、人口密度や建物構造、防災インフラの整備状況などさまざまな要因に左右されます。

したがって、単純な強弱での比較ではなく、地域ごとに想定される被害の特性が異なることを理解することが重要です。そして、それぞれの地域特性や被害パターンに応じた適切な防災対策を講じることが、台風対策において効果的な方法といえるでしょう。

台風接近に備えて企業が行うべき対策

台風の接近や上陸に備えて、企業が事前に準備しておくべき対策は次の通りです。

従業員の出社・帰宅基準の明確化

出社判断や在宅勤務への切り替え基準をあらかじめ明確にし、従業員へ周知しておきましょう。早期帰宅や時差出勤の対応方針も事前に定めておくことで、混乱の防止につながります。

また、緊急時の連絡網や安否確認システムを整備することも必要です。災害時には通常の連絡手段が使えなくなる可能性も考慮し、複数の連絡手段(電話連絡網、メール、専用アプリなど)を準備しておくことで、従業員との確実な連絡体制を構築できます。

また、鉄道の運行状況や交通機関の通行可否状況などの情報収集方法についても、あらかじめ従業員に周知しておくことが重要です。

企業の安否確認について詳しくは、「企業にとって安否確認はなぜ重要?導入や運用時のポイントとは」で解説しています。

社屋・設備の保全

窓ガラスの補強や屋外看板・設備の固定、排水設備の清掃など、台風被害を最小限に抑える対策を講じましょう。屋上や外壁の点検、防水対策も重要です。定期的な建物点検を実施し、特に、重要な機器やサーバーがある場所は、浸水対策として高所への移動や防水対策を検討しましょう。

水害・浸水対策について詳しくは、「企業の水害・浸水対策とは?求められる理由や具体的な方法を解説」「

工場・倉庫を浸水から守る対策7選!日頃からできる水害への備えを解説」で解説しています。

防災備蓄品の確保

従業員が社内待機を余儀なくされる場合に備え、必要な備蓄品を確保できているか確認しましょう。保存水・非常食(3日分を目安)、簡易トイレ、非常用電源(発電機、蓄電池など)、懐中電灯などの基本的な防災備蓄品に加え、多様な従業員のニーズに配慮した備蓄も重要です。備蓄品は定期的に点検し、消費期限や使用可能期限を管理して、常に使用可能な状態を維持しましょう。

防災備蓄品や蓄電池については、「企業が蓄電池を導入するメリットは?災害時以外の活用方法も紹介」「企業における防災備蓄品‐必要量の目安と選定のポイントは?」にて詳しく解説しています。

これらの対策を実施することで、台風による被害を最小限に抑え、自社の事業継続性を高めることができます。今年の台風シーズンに向けて、既存の対策を見直す良い機会と捉え、防災体制の強化を図りましょう。

台風対策について詳しくは、「台風対策は万全?企業における被害のリスクと具体的な対策について解説」で解説しています。

台風の正しい知識を持ち計画的な備えを

台風とハリケーン、サイクロンは、発生場所や基準となる最大風速が異なりますが、いずれも本質的には同じ自然現象を指し、勢力や進路によっては企業活動に大きな影響を与えるおそれがあります。

企業が台風の被害を最小限に抑えるためには、台風に関する正しい知識を持ち、適切な対策を講じることが必要です。台風シーズン前に今一度、自社の防災体制を見直し、万全の準備を整えておきましょう。 ジョインテックスカンパニーでは、防災用品を中心に約1,400アイテムを掲載した「危機対策のキホン」カタログをご用意しております。企業の防災対策のために、ぜひご活用ください。

前回は、水害から身を守るための方法の1つとして、垂直避難について解説しています。水平避難との違い、どのような状況時に垂直避難が有効か、解説していますので、あわせてご一読ください。