減災とは?防災との違いや企業が実践すべき8つの取り組みを解説

自然災害に際し、企業が従業員の命を守りつつ早期に事業を復旧するためには、災害対策が欠かせません。そのなかでも、近年注目されているのが「減災」という考え方です。「災害は必ず起こる」という前提に立ち、被害を最小限に抑えることを目指します。しかし、「防災」に比べて「減災」はあまり聞き慣れないことから、具体的にどういった対策が必要なのかイメージできない方も多いでしょう。
本記事では、減災の基礎知識から、企業が実践すべき具体的な取り組みまで解説します。

減災とは

災害対策において重要な考え方である「減災」について、その定義と防災との違いを解説します。

減災とは

減災とは、災害の発生を前提として、被害を最小限に抑えることを目的とした取り組みです。内閣府発行の「減災のてびき」では、「災害による被害を、できるだけ小さくする取り組み」と定義されています。

この考え方が注目されるようになった背景には、1995年の阪神淡路大震災があります。科学技術が発達した現代でも、地震の完全な予測は困難です。自然災害を根本的に防ぐことは現実的ではありません。そこで「災害は起こるもの」として受け入れ、発生時の被害軽減に焦点を当てた取り組みが重要視されるようになりました。

参考:減災のてびき(減災啓発ツール) : 防災情報のページ – 内閣府

防災との違い

減災と似た言葉に、「防災」があります。

 防災減災
基本的な考え方災害を未然に防ぐ災害発生を前提とする
目的被害の拡大を防ぎ、復旧を図る被害を最小限に抑える
法的な位置づけ災害対策基本法で明文化実践的な概念として普及

防災とは、災害対策基本法第二条第二号において、「災害を未然に防止し、災害が発生した場合における被害の拡大を防ぎ、及び災害の復旧を図ることをいう」と定義づけられています。災害の予防から発生後の復旧まで、幅広い段階を含む考え方です。

一方、減災は災害の発生を前提として、事前の対策によって被害をいかに小さくするかという点に重点を置いています。

このように、言葉の意味としては違いがありますが、企業が実際に取り組む内容を見ると、避難場所の確保、防災備蓄品の準備、避難訓練の実施など、両者で共通するものがほとんどです。

企業防災の基本や取り組みについては、「企業防災はなぜ重要?防災と事業継続から考える具体的な取り組み」で分かりやすく解説していますので、ぜひご参照ください。

企業が減災に取り組むことの重要性

減災に取り組むことは、企業にとってどういった意味があるのか、その重要性を解説します。

従業員の安全確保

企業にとって、従業員の安全を守ることは重要な役割のひとつです。自然災害であっても、労働安全衛生法の安全配慮義務が免除されることはありません。対策を怠れば、信頼の低下や人材流出といったリスクを招きかねません。さらに「社員を守る」という姿勢そのものが企業倫理として問われる時代です。そのため、減災への取り組みは、企業に欠かせないものといえるでしょう。

事業継続性の確保

企業が自然災害によって甚大な被害を受けると、事業を継続することが困難になるケースもあります。大規模災害を想定して減災に取り組むことで、事業継続に必要な最低限のリソースを確保でき、非常時にもスピーディーな復旧につなげられます。顧客や取引先との信頼関係を維持するためにも、事業を止めない体制づくりが求められています。

事業継続については、「企業防災はなぜ重要?防災と事業継続から考える具体的な取り組み」で詳しく解説していますので、ご参考にしてください。

減災に効果的な取り組み【実践編】

企業が具体的に取り組むべき減災対策を紹介します。まずは、物理的な環境整備を中心にした実践的な取り組みから見ていきましょう。

ハザードマップ活用による災害リスクの把握

減災の第一歩は、自社が置かれている災害リスクを正確に把握することです。オフィスや工場、店舗などがある地域で、どのような災害が想定されるのかをハザードマップで確認しましょう。地震、洪水、土砂災害など、地域特有のリスクを理解することで、その後の対策をより効果的に進められます。

国土交通省と国土地理院が公開している「重ねるハザードマップ」の活用がおすすめです。

詳しくは、「ハザードマップとは?見方や種類、防災担当者がチェックすべきポイントを解説」で解説しています。

耐震基準の確認

オフィスが入居しているビルや店舗、工場などの建物が耐震基準を満たしているかどうかを確認しましょう。

建築基準法はこれまで何度か改正されており、1981年5月以前に完成した建物は「旧耐震」、それ以降に完成した建物は「新耐震」が基準となっています。万が一、耐震基準を満たしていない場合は、賃貸物件なら耐震基準を満たした物件への移転を、自社所有の建物なら耐震補強工事を検討する必要があります。

オフィス家具・設備の固定や配置転換

地震発生時、キャビネットやロッカーなどの大型家具が転倒すると、従業員の負傷や避難経路の遮断を招く危険があります。オフィス家具は壁面への固定器具や転倒防止ベルトなどを使用して確実に固定し、高い場所に重いものを置かない配置を心がけましょう。

また、浸水リスクがある地域では、重要書類や電子機器を上階に移動させ、サーバーや精密機器は床上げや防水対策を施すことが重要です。

避難場所・避難通路の確保

災害発生時に迅速な避難を実現するには、社内での避難体制を整えておく必要があります。従業員の安全を確保できる避難場所を選定し、建築基準法や消防法に基づく適切な幅の避難経路を確保しましょう。備品の放置などで通路が塞がれないよう、日常的な管理も欠かせません。

避難通路の具体的な幅については、「オフィスの避難通路の幅はどの程度確保しておく必要がある?」をご参照ください。

防災備蓄品の整備

大規模災害時は公共交通機関の停止により帰宅困難者が発生する可能性があります。従業員が社内で一時的に避難生活を送れるよう、非常食、保存水、毛布、懐中電灯などの防災備蓄品を準備しましょう。また、長期停電に備えて非常用電源も確保し、通信機器や照明の電力を確保することが重要です。公的支援が始まるまでの期間を考慮し、最低3日分の備蓄を目安とします。

防災備蓄品について詳しくは、「企業における防災備蓄品‐必要量の目安と選定のポイントは?」「防災備蓄品の準備で企業が抱えがちな悩みと解決するためのポイント」発電機と蓄電池の違いは?特徴、非常用電源としてどちらを選ぶべきかを解説」をご覧ください。企業が準備しておくべき防災備蓄品の必要な量や品目については、「サクッとstock」にて、シミュレーションが可能です。ぜひご利用ください。

減災に効果的な取り組み【組織・体制編】

組織としての体制整備も減災には欠かせません。災害時は公的支援に限界があるため、まず自分自身や自社従業員の安全を確保する「自助」、そして近隣企業や地域住民と協力し合う「共助」の考え方が重要です。ここでは、この自助・共助を実現するための組織体制の取り組みについて解説します。

自助、共助について詳しくは「自助・共助・公助が企業の防災対策に重要な理由とは?取り組み具体例も紹介」をご覧ください。

BCP(事業継続計画)の策定

BCPとは、災害や事故などの緊急事態が発生した際に、事業の継続や早期復旧を図るための計画です。重要業務の特定、代替手段の確保、復旧手順の明文化などを含む包括的な計画を策定することで、災害時でも事業への影響を最小限に抑えられます。BCPは定期的に見直しを行い、訓練を通じて実効性を確保することが重要です。

BCPについては、「BCP対策とは?基礎知識から策定手順、運用のポイントまでわかりやすく解説」で詳しく解説しています。

いざというとき落ち着いて行動できるよう、取り決めた内容をマニュアルにまとめておくことも有効です。マニュアル作成の方法については「BCPマニュアル作成のポイントは?マニュアルが必要な理由と活用方法も紹介」「防災マニュアルはどのように作る?取り入れるべき内容や作り方のポイント」をご参照ください。

定期的な社内防災会議・訓練の実施

災害発生時に被害を最小限に防ぐ行動を取るためにも、定期的に防災会議を実施しましょう。万が一の場合の避難方法、安否確認の手順、役割分担などを細かく決めておきます。

また、決定した内容が本当に機能するかを確認するため、避難訓練や安否確認訓練を定期的に実施することが大切です。訓練で課題が見つかれば、計画を見直して改善していきます。このサイクルを繰り返すことで、より実効性の高い災害対策が整います。

安否確認については、「企業にとって安否確認はなぜ重要?導入や運用時のポイントとは」で詳しく解説しています。

地域とのつながり強化

大規模災害の発生時には、近隣の企業や住民とも助け合うことが大切です。例えば自治体の要請に従って自社の施設を避難所として解放したり、備蓄品を配布したりするなどの協力が考えられます。

防災における企業の地域貢献については、「企業防災の一環として地域貢献に取り組む意義とは?取り組み事例も紹介」をご覧ください。

万が一を想定し、事前の対策で減災に取り組もう

企業の災害対策にあたっては、災害が発生した場合を想定し被害を最小限に抑える減災という考え方を理解しておくことが重要です。減災対策には、ハザードマップの確認、家具の固定、防災会議の実施、日ごろからの備えなど幅広い対策が求められます。 なかでも、従業員の命を守るための防災備蓄品の準備は、減災対策の基本です。しかし、日々多くの業務に追われるなかで、備蓄品の準備に手や時間を割くことが難しい企業も多いでしょう。そのような場合には、ツールの活用が有効です。例えば、防災備蓄品選定ツール「サクッとstock」。サクッとstockは必要な人数と日数、カテゴリを選択するだけで、準備すべき防災備蓄品の品目と数量・金額を瞬時にシミュレーションできるツールです。

また、購入後の備蓄品の在庫・期限管理には「サクッとkeep」がおすすめです。賞味期限のある保存水・非常食などの期限が切れる前にメールでお知らせする機能のほか、期限間近の保存水・非常食の寄付申込機能、買替時のおすすめ商品提案機能などが充実しており、防災備蓄品の維持・管理業務の効率化ができます。