BCP対策に活用できる補助金・支援制度とは?種類や申請方法を解説

自然災害や感染症などの緊急事態に備えるBCP(事業継続計画)の策定は、中小企業にとって重要な経営課題です。しかし、設備投資や人材確保にかかるコストが課題となることも少なくありません。そこで活用したいのが、国や自治体が提供する補助金などの支援制度です。本記事では、BCP対策に活用できる補助金をはじめとする支援制度や申請時の注意点まで、実務に役立つ情報を分かりやすく解説します。

BCP(事業継続計画)とは?

BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)とは、企業が自然災害、感染症、サイバー攻撃などの緊急事態に遭遇した場合に、事業資産の損害を最小限に抑えつつ、重要事業の継続や早期復旧を可能とするための方針・体制・手段を定めた計画です。

近年の災害激甚化や新型コロナウイルスの経験を経て、BCPは「あると安心な備え」から「企業経営に欠かせない取り組み」へと位置づけが大きく変化しました。事業を止めないことは、取引先や顧客との信頼維持にも直結するためです。

こうした背景から、実効性のあるBCPを策定・運用する「BCP対策」が強く求められるようになりました。

BCP対策については、「BCP対策とは?基礎知識から策定手順、運用のポイントまでわかりやすく解説」 で詳しく解説しています。

特に中小企業では、大企業と比べてリソースに限りがあるため、適切な事前準備がなければ事業継続が困難になるリスクが高く、一定の投資をしてでもしっかりとした対策を講じる必要があります。

幸い、国や自治体ではこうした重要性を踏まえ、中小企業のBCP策定・実践を支援する各種補助金制度を整備しています。こうした制度を積極的に活用することで、限られた予算でも効果的なBCP対策を進めることが可能です。

中小企業におけるBCP対策の必要性については、「中小企業こそBCP対策に取り組むべき理由とは?取り組み内容も紹介 」で詳しく解説しています。

BCP対策に活用できる補助金・支援制度

BCP対策に活用できる主要な補助金・支援制度を国の制度と自治体の制度に分けて詳しくご紹介します。

【国の制度】事業継続力強化計画認定制度

中小企業が策定した防災・減災の事前対策に関する計画を経済産業大臣が認定する制度で、従来の本格的なBCPより簡易な内容で申請できる中小企業向けのBCP制度です。

認定企業は防災・減災設備への特別償却(20%)の税制措置、日本政策金融公庫による低利融資等の金融支援、ものづくり補助金・IT導入補助金といった補助金の審査時加点など幅広い優遇措置を受けられます。

最新情報は、「事業継続力強化計画 | 中小企業庁」「BCP資金|日本政策金融公庫」をご覧ください。

【国の制度】IT導入補助金

中小企業・小規模事業者等の労働生産性向上を目的として、業務効率化やDX等に向けたITツール(ソフトウェア、サービス等)の導入を支援する補助金です。

通常枠、セキュリティ対策推進枠、インボイス枠など複数の申請枠があり、最大450万円(通常枠)まで補助され、枠ごとに補助率が定められています。

BCP対策関連では、安否確認システム、データバックアップ等も補助対象となります。

最新情報は、「IT導入補助金2025」をご覧ください。

【国の制度】建築物耐震対策緊急促進事業

国土交通省が管轄する「住宅・建築物防災力緊急促進事業」の一部で、多数の者が利用する大規模建築物、災害時に機能確保が必要な建築物、緊急輸送道路沿道の建築物等の耐震診断や耐震改修、建替え等に対して支援を行います。

対象建物は病院、店舗、事務所(オフィスビル)、旅館・ホテル、学校、老人ホーム、マンション等で、一定規模以上の建築物が要件となります。補助金の額や補助率は、対象となる建物の種類や改修内容によって細かく定められています。申請は原則として地方公共団体が行いますが、市区町村の補助制度が未整備の場合は民間事業者が直接申請することが可能です。

最新情報は、「令和7年度 耐震対策緊急促進事業」をご覧ください。

【自治体の制度】BCP実践促進助成金(東京都)

東京都中小企業振興公社が実施する、中小企業者等が策定したBCPを実践するために必要な物品・設備等の導入や基幹システムのクラウド化に要する経費の一部を助成する制度です。具体的には、非常用電源、非常食・防災用品、土のう・止水版等の幅広いBCP関連投資に活用できます。

助成率は1/2~2/3で、助成限度額は上限1,500万円となっています。対象は東京都内に本店または支店を持つ中小企業等で、事前にBCP策定支援事業の受講または事業継続力強化計画の認定が必要です。

最新情報は、「BCP実践促進助成金 | 設備助成-setsubijosei- | 東京都中小企業振興公社」をご覧ください。

各自治体にも、BCPを支援する制度があります。

最新情報は、「支援情報ヘッドライン | J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]」をご覧ください。

BCP対策に補助金を活用する際の5つの注意点

制度要件の確認

補助金・助成金の対象となる設備やサービスが、自社の対策内容に該当するかを確認する必要があります。また、講座の受講や認定取得など、制度ごとの前提条件にも注意が必要です。補助金には対象となる設備・システム・コンサル費用などが定められており、自社の対策内容が該当するか、事前に要項を十分に確認しましょう。BCPの策定が必須条件となっている場合は、未策定の場合は並行して進めなければなりません。

事業実施期間外の支出は支給対象外

補助金・助成金は、対象事業について実施期間を定めるのが一般的です。この期間外の支出は一切支給対象になりません。交付決定前の早期着手や期間後の支出は失格要因となるため、スケジュール管理を徹底し、期間内に確実に事業を完了させる必要があります。

後払い制度への対応

補助金・助成金は事業実施後に支給される後払い制度で、申請から支給まで数か月から長いもので1年程度要する場合があります。事業開始前にまず自己資金での全額準備が必要になるため、つなぎ資金の調達方法や、この期間中の資金繰りを見据えた事業計画を事前に立てておきましょう。余裕をもったキャッシュフロー計画を策定することが重要です。

証憑書類の保管

支払いを証明する領収書や契約書などの書類は、漏れなく保管しておく必要があります。これらの書類に不備があると補助金が受け取れなくなる可能性があるため、しっかりと管理しましょう。

会計検査院の検査が入る可能性

補助金を受けた企業は、会計検査院の検査を受ける可能性があります。適正な事務処理と補助金の趣旨に沿った使用をしていれば問題ありませんが、虚偽申請や目的外使用などの法令違反があった場合は補助金返還や法的処分を受ける可能性があります。透明性の確保はもちろんのこと、正当な目的での使用が求められます。

中小企業のBCP対策は補助金を積極的に活用しよう

BCP対策における補助金・助成金など各種支援制度を効果的に活用するためには、事前要件の確認から申請手続き、事業実施、事後管理まで、各段階での適切な対応が不可欠です。補助金の活用を自社のBCP対策を見直し強化する貴重な機会ととらえ、災害や緊急事態に強い企業体質への転換を図りましょう。

本記事で紹介した制度以外にも、各自治体が独自に実施している支援制度があります。BCP対策を検討する際は、まずは各省庁や自治体のホームページで最新情報を確認することをおすすめします。

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