マンション管理組合の防災対策8選|効果的な進め方のポイントも解説

地震や豪雨などの自然災害が相次ぐなか、マンションの防災対策の重要性が高まっています。マンションは建物の構造が無事でも、共用設備の停止やライフラインの途絶によって生活が維持できなくなるおそれがあり、管理組合が主体となった備えが欠かせません。
本記事では、マンション管理組合が取り組むべき防災対策を8つに整理し、効果的な進め方のポイントとあわせて解説します。
目次
マンション管理組合が防災に取り組むべき理由
マンションの防災対策は、戸建て住宅とは異なる視点が必要です。その理由には、次の2点が挙げられます。
共有設備の停止による生活への影響
マンションでは、給水・排水・電力・エレベーターといった生活機能の多くを共用設備に依存しています。そのため、ひとつの設備が停止するだけで全住民の生活に影響が及びます。実際、令和元年(2019年)の東日本台風では、タワーマンション地下の電気設備が浸水し、全館が停電・断水する被害が発生しました。
こうした共用設備は、区分所有法上、管理組合が管理責任を負うため、管理組合による計画的な防災対策が欠かせません。
在宅避難を支える「共助」の中核として
多くの自治体は、自宅とその周辺の安全が確認できた場合には在宅避難を検討するよう案内しています。加えて、避難所の収容人数には物理的な限界があり、大規模災害時には行政の支援(公助)も直ちには届かないことが想定されます。
公助を待つ間に住民の命と健康を守るには、マンション内での助け合い「共助」の体制が重要です。この共助を機能させるために、管理組合が平時から体制やルールを整備しておくことが求められます。
公助や共助の考え方については、「自助・共助・公助が企業の防災対策に重要な理由とは?取り組み具体例も紹介」で詳しく解説しています。
マンションの災害リスクを把握する方法

マンションの防災対策を検討する前に、自分たちのマンションがどのようなリスクを抱えているかを把握する必要があります。災害リスクの把握には、次の2つの方法があります。
ハザードマップを活用する
マンションの立地がどのような災害リスクを抱えているかを知るには、国土交通省・国土地理院の「ハザードマップポータルサイト」が便利です。洪水・内水・土砂災害など複数のリスクを確認できます。同じエリアでも河川からの距離や標高によって災害リスクは異なるため、自分たちのマンションの所在地をピンポイントで確認することが重要です。
ハザードマップについて詳しくは、「ハザードマップとは?見方や種類、防災担当者がチェックすべきポイントを解説」をご覧ください。
敷地・建物の状況を確認する
ハザードマップで把握したリスクを踏まえ、実際に敷地や建物を歩いて、被害が起きやすい箇所を確認することも重要です。例えば、水害リスクが高いエリアにあるマンションの場合は、玄関や駐車場入口、地下への階段・スロープ、換気口や配管の貫通部など、水の侵入経路になりうる箇所を具体的に確認します。
あわせて、建物が旧耐震基準(1981年以前)か新耐震基準か、エレベーターに地震時管制運転装置があるかといった設備面の仕様も把握しておくと、対策の優先度がより明確になります。
マンション管理組合が取り組むべき防災対策8選

管理組合として取り組むべきマンションの防災対策を8つ紹介します。
1. 防災マニュアルを作成する
防災マニュアルを作成し、発災時に「誰が・いつ・何をするか」を定めましょう。入居者向けには、地震発生時に「安否確認シートを玄関ドアに掲出する」「各階の集合場所に集まり、安否情報をとりまとめる」といった場面ごとの具体的な行動を示し、役員向けには、対策本部の立ち上げ手順や安否確認の集約方法など、組織としての動きを定めます。
自治体が無料で公開しているテンプレートを活用すると、いちから作る負担を大きく減らせます。
参考:中央区ホームページ/マンション防災対策「震災時活動マニュアル策定の手引き」|東京都中央区
防災マニュアルの一般的な作成方法については、「防災マニュアルの作成方法とは?BCPとの違いや押さえるべきポイントも解説」で詳しく解説しています。
2. 安否確認の仕組みをつくる
災害直後に最も急がれるのが、全入居者の安否確認です。例えば、「無事です」「助けが必要です」といった表示のマグネットシールを各戸に配布し、玄関ドアの外に貼り出す方式にすれば、短時間でフロアごとの状況を把握しやすくなります。あわせて、応答がない住戸への対応も事前に決めておくことが大切です。
一人暮らしや高齢者のみの世帯では、自力で動けないケースも想定されるため、本人の希望を確認したうえで、立ち入り確認のルールを管理組合として整備しておくとよいでしょう。
3. 防災備蓄品を整備する
管理組合の備蓄は、各家庭では用意しにくい救助・救護用品を優先するのが基本的な考え方です。特に、水害時における備え、夜間の光源確保、危険個所の表示用品は個人での準備は難しいため、管理組合で備蓄をしておく重要性は高くなります。代表的な品目としては、以下のようなものが挙げられます。
- 停電対策:非常用電源など
- 救助・救出:バール、担架、ロープなど
- 夜間の光源確保:据え置き型ランタン、警告灯、投光器など
- 火災(初期消火)対策:消火器など
- 建物の安全確保:カラーコーン、ロープ、危険個所テープ、土のう・水のうなど
停電対策用品



夜間の光源確保



建物の安全確保



非常用電源の種類については、「発電機と蓄電池の違いは?特徴、非常用電源としてどちらを選ぶべきかを解説」で詳しく解説しています。
これらを保管するスペースの確保も重要です。専用の防災倉庫を設置できれば理想的ですが、共用部の空きスペースや管理員室の一角を活用するケースもあります。いずれの場合も、保管場所と使用方法を住民に周知するために、案内の投函や掲示板への張り出しなど定期的な案内を行うとよいでしょう。実施については、入居者の入れ替わりが多くなる春や秋ごろに実施すると効果的です。
多くの人がいる場所、地域での備蓄品整備については、「共助の時代における防災力の高め方~人が集まる場所の防災備蓄ガイド~」「【自治会・自主防災組織向け】地域防災力向上のための防災備蓄ガイド~備蓄品選定と管理のポイント~」が参考になります。ぜひご覧ください。
4. 自宅での備えを呼びかける
管理組合が共用部分の防災対策を整備しても、各家庭の備えが十分でなければ、マンション全体としての防災力を高めるのは難しいでしょう。保存水・非常食・簡易トイレといった基本的な備蓄、家具の転倒防止といった対策を、繰り返し周知していきましょう。自治体によっては家庭向けに防災備蓄品を対象に補助金をだしていることもあるため、それら情報を広報誌や掲示板、集会の際に案内するといった活動もよいでしょう。



基本的な備蓄品の種類や量については、「企業における防災備蓄品必要量の目安と選定のポイントは?」で詳しく解説しています。
5. 防災訓練を定期的に実施する
防災マニュアルは、作成しただけでは十分に機能しません。年1〜2回程度の訓練を通じて、入居者もしくは住人の防災意識を高めるとともに、実際の動きを確認しておくことが大切です。訓練の際は、地震・火災・水害など災害の種類ごとにテーマを設定すると、より実践的な内容になります。
訓練への参加率を高めるには、炊き出し体験や防災クイズなどイベント要素を取り入れたり、消防設備点検の日とあわせて実施したりといった工夫が効果的です。
6. 防災体制・組織を整える
防災対策を継続的に推進するためには、理事会内に防災担当理事を置くか、防災委員会を設置して専任の体制をつくることが有効です。災害発生時の自主防災組織として、情報班・救護班・物資班などの役割分担と、理事長不在時の代行ルールも事前に決めておきましょう。地域の自治会や行政の防災部門とも日頃から連携しておくと、いざという時の対応力が高まります。
7. 建物・設備の耐震対策を行う
旧耐震基準(1981年以前)のマンションでは、耐震診断を実施し、必要に応じて耐震改修を検討することが重要です。新耐震基準の建物であっても、外壁タイルの剥落やバルコニーの劣化、貯湯式電気温水器の固定状況など、非構造部材や設備面の点検は欠かせません。エレベーターの地震時管制運転装置の有無や、受水槽・配管の耐震状況や老朽化についても確認しておきましょう。
8. 復旧への備えを整える
被災後の復旧にはまとまった費用が必要になるため、地震保険への加入や修繕積立金の活用ルールを事前に検討しておくことが大切です。また、竣工図書(建物の設計図面や設備の仕様をまとめた資料)や修繕履歴を整備しておくことで、被害状況の把握や復旧工事の発注を迅速に進めることができます。
マンションの防災対策のなかでも、水害対策については、「マンションの水害対策8選|浸水を防ぐために管理組合が行うべき対策とポイント」で詳しく解説しています。
マンション管理組合の防災対策を効果的に進めるポイント

補助金・助成金を活用する
自治体によってはマンションの管理組合向けに補助金・助成金制度を設けています。マンションの防災対策には一定の費用がかかりますが、こうした制度を使うことで、進めやすくなります。
例えば、東京都の「東京とどまるマンション普及促進事業」では、災害時にも自宅生活を継続しやすいマンションを登録する制度があります。登録したマンションの管理組合は、非常用電源や浸水対策設備などの導入費用の補助を受けられます。お住まいの自治体の窓口やホームページで、利用できる制度がないか確認してみましょう。
参考:東京とどまるマンション普及促進事業 – 東京都マンションポータルサイト
備蓄品管理を効率化する
備蓄品は、そろえて終わりではありません。賞味期限のチェックや使用期限が近い物品の入れ替え、資機材の動作確認、担当理事が交代した際の引き継ぎなど、やるべきことは少なくありません。こうした管理の負担を減らす方法としては、以下のようなものがあります。
- ローリングストック法の導入
食料や水などの生活物資は、各家庭での備えが基本となります。その際に有効なのが、ローリングストック法です。ローリングストック法では、備蓄品を日常生活で消費しながら、期限切れ前に買い足していくことで、常に一定量を保つことができます。
管理組合としても、防災訓練などの機会を活用してこの方法を周知することで、各家庭での備えを促進でき、結果として共用備蓄への依存を減らし、全体としての管理負担の軽減にもつながります。
ローリングストック法については、「ローリングストック法とは?企業が実施する際のポイントも解説」で詳しく解説しています。
- 効率化ツールの活用
必要量をシミュレーションができるツールや、備蓄品の在庫や期限を一括管理できるツールなど備蓄品管理を支援するツールがあります。こうしたツールを導入することで、管理の手間を減らすとともに、担当者が交代しても管理が途切れにくくなります。

マンションの防災対策を定期的に見直す
防災対策は、一度整えたら終わりではありません。住民の入れ替わりや建物の経年変化、新たな災害リスクの判明など、状況は常に変わっていきます。防災マニュアルや備蓄品の内容、訓練の方法は定期的に見直し、その時々のマンションの実情に合わせてアップデートしていきましょう。
管理組合主導でマンション防災対策を進めよう

マンションの防災対策は、建物の構造が無事でもライフラインが止まれば生活が維持できなくなるという、集合住宅ならではのリスクへの備えです。管理組合が中心となり、自分たちのマンションの状況に合わせて、対策に優先順位をつけ、できるところから進めていくことが必要です。
ジョインテックスカンパニーでは、防災備蓄品を中心に約1,500アイテム掲載した「危機対策のキホンカタログ」をご用意しています。また、備蓄品管理に役立つ備蓄シミュレーションツール「サクッとstock」や、期限管理の効率化が可能な防災備蓄品管理ツール「サクッとkeep」を提供しています。マンションの備蓄品整備・見直しをご検討の際は、お気軽にお問い合わせください。
プラス株式会社ジョインテックスカンパニーが運営する、企業向け防災・BCP情報サイト「キキタイマガジン」運営事務局です。
キキタイマガジン内の掲載コンテンツについては、特定非営利活動法人日本防災士機構より認証を受け、一定の知識・技能を有する弊社防災士が監修しております。
マンション管理組合の防災対策に関するよくある質問
Q1.マンションの防災対策は何から始めればいいですか?
まずはハザードマップで災害リスクを把握し、そのうえで防災マニュアルの作成や安否確認の仕組みづくりから始めるのがおすすめです。優先順位を明確にすることで、効率よく対策を進められます。
Q2.マンションで備蓄すべき防災用品には何がありますか?
管理組合としては、発電機・トランシーバーなどの停電対策用品や、バール・担架などの救助用品、テント・メガホンなどの運営用品を中心に備蓄します。食料や水は各家庭での備えと役割分担することが重要です。
Q3. マンションの防災対策は義務ですか?
法律で一律に義務化されているわけではありませんが、共用設備の管理責任は管理組合にあるため、実質的には計画的な防災対策が求められます。特に近年は在宅避難を前提とした備えの重要性が高まっています。


