72時間の壁とは何か?
企業が取るべき対処法やシーン別の過ごし方

72時間の壁とは何か?企業が取るべき対処法やシーン別の過ごし方

災害による負傷者が出た場合、命を救うためにはできるだけ早期に救命活動を行うことが求められます。具体的には3日以内が目安とされ、これは「72時間の壁」とも呼ばれています。
72時間の根拠は何なのか、企業ができる対策や具体的な取り組みについて解説します。

72時間の壁とは

72時間の壁とは、人命救助におけるタイムリミットの目安を指します。地震や台風、大雨などの災害があった際、被災してから72時間を経過すると生存率が大幅に低下する傾向があることから、人命救助では72時間以内に負傷者を助けなければならないとされています。

▶72時間がタイムリミットの理由

諸説ありますが、ひとつには、国土交通省近畿地方整備局の資料「阪神・淡路大震災の経験に学ぶ 震災時における社会基盤利用のあり方について」のデータ結果が、根拠と言われています。震災発生後1日目の救出者に対する生存者の割合は74.9%、2日目は24.2%、3日目は15.1%。

しかし、これが4日目になると5.4%、5日目に至ってはわずか4.8%にまで低下しているというデータ結果です。このことから、人命救助は早ければ早いほど助かる確率が高く、発生から3日目に当たる72時間後が、生存率を大きく分ける分岐点と考えられるようになりました。また、一般的に「人間が飲まず食わずで生き延びられる限界は72時間」とも言われており、これも72時間の根拠と考えられています。

▶72時間を乗り切るために企業がすべきこと

大規模災害が発生したとき、国や自治体では何よりも人命救助を優先する必要があります。社員の安全を守ると同時に、国や自治体が人命救助に専念できるよう、少なくとも72時間は自社で乗り切れるよう備蓄品を確保しておくことが重要です。

東京都帰宅困難者対策条例にも「事業者に従業者の一斉帰宅の抑制と従業者の三日分の食糧等の備蓄についての努力義務を課します」とあり、3日分、つまり72時間分の備蓄品を確保することが努力義務とされています。

企業にできる72時間の壁への対処法

災害が発生しライフラインに影響が出ると、当然のことながら企業活動もストップしてしまいます。企業が72時間の壁を乗り切り、企業の活動を早期に復旧させるためにはどういった対処が求められるのでしょうか。具体的な対処法について解説します。

▶防災マニュアルの整備

まずは社員の安全を確保することが第一優先となります。災害が発生したとき、社員が安全に避難するためのルートや避難先などをマニュアル化しておきましょう。また、災害時に社員が取るべき行動をまとめ、万が一の際でも一人ひとりが冷静に対処できるような準備が求められます。防災マニュアルの作成については、以下の記事をご参照ください。
防災マニュアルはどのように作る?取り入れるべき内容や作り方のポイント

▶防災備蓄品の準備

労働契約法によって、企業には社員の安全と健康を守る安全配慮義務が課されています。社員の安全と命を守るためにも、72時間の壁を乗り切る3日分の防災備蓄品を確保しておくことが求められます。なお、防災備蓄品の品目と必要量の目安は以下の記事で解説しています。ぜひご参照ください。
防災の基本「非常食」はどう選ぶべき?主な種類や管理・活用の注意点を解説
企業における防災備蓄品‐必要量の目安と選定のポイントは?

【参考】

【関連コラム】防災マニュアルはどのように作る?取り入れるべき内容や作り方のポイント
【関連コラム】防災の基本「非常食」はどう選ぶべき?主な種類や管理・活用の注意点を解説
【関連コラム】企業における防災備蓄品‐必要量の目安と選定のポイントは?

災害発生時に72時間をどう過ごす?シーン別の事例

万が一勤務時間中に大規模災害が発生した場合、被災直後の72時間はどういった行動が求められるのでしょうか。シーン別に解説します。

▶停電

大規模な停電が発生すると、公共交通機関がストップし、多くの帰宅困難者が出てしまいます。帰宅困難者が街にあふれてしまうと、災害救助活動やライフラインの復旧にも支障を来す可能性があります。停電が長期化することが予想される場合、無理に帰宅しようとするより、オフィスで待機する方が賢明です。

オフィスでは、空調のストップによって社員が体調を崩さないよう、夏場は保冷剤やうちわを用意したり、冬場は毛布やカイロなどの防寒具を用意したりと、なるべく電力を必要としない対策アイテムの準備をしておくと安心でしょう。停電に対する備えの詳細は以下の記事で解説していますので、ご参照ください。
停電に対する企業の備えとは?損失を回避するための対策を解説

▶台風

台風が間近に迫っている場合、身の安全を確保するためにも外に出ず、室内で待機することが重要です。公共交通機関がストップした場合も無理に帰宅せず、オフィスで待機するように社員へ指示を出しましょう。強風によって電柱が破損、倒壊するなどして停電が長期化することもあるため、オフィスに待機している社員に対しては日が暮れる前に防災備蓄品を配布しておきます。

なお、出社時間帯の前、もしくは前日の段階から台風が接近している場合などは、出社を見送りテレワークに切り替えるといった対策も有効です。台風への対策については、以下の記事で詳しく解説していますので、ご覧ください。
台風で停電発生!いざというときに慌てないために企業がとるべき対策

▶地震

地震が発生したら、まずは社員一人ひとりが自身の安全確保をすることが大切です。デスクの下に入って落下物から身を守る、揺れが収まるまでむやみに動かないようにするなどの行動が一般的です。揺れが収まっても大きな余震が発生する可能性もあるため、万が一の際に屋外へ避難できるよう避難経路の確保をしておきます。地震によって倒れたオフィス家具や散乱した荷物があるようなら、片付けておきましょう。

負傷者が出た場合は、重症度に応じてオフィス内で手当てをしたり医療機関へ連れて行ったりと、速やかに対応しなければなりません。大規模地震の場合には救急車は来ないものと考え、重傷者を医療機関へ連れていく手段をあらかじめ考えておくことも必要でしょう。なお、地震により停電が発生することも少なくありません。その際は上述のとおり、周囲の状況に応じてオフィスで待機します。地震によって停電が発生した場合の対策については、以下の記事で詳しく紹介しています。ぜひご参照ください。
地震による停電が発生した際のリスクとは?有効な備えも解説

【参考】

【関連コラム】停電に対する企業の備えとは?損失を回避するための対策を解説
【関連コラム】台風で停電発生!いざというときに慌てないために企業がとるべき対策
【関連コラム】地震による停電が発生した際のリスクとは?有効な備えも解説

72時間の壁を意識した防災対策を立てておこう

地震や台風などによって人が命の危機に直面した場合、救助活動が早ければ早いほど助けられる可能性が高くなります。企業としては、大きな分岐点とされる72時間は自社でやり過ごせるよう、最低3日分の防災備蓄品を用意しておきましょう。防災対策の必要性は感じているが、通常業務が忙しく、具体的にどのような備蓄品を準備したら良いのか?どのくらいの量が必要なのか?など、検討を-する時間が取れず、対応が後回しになっている担当者もいるかもしれません。
 
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