台風で停電発生!原因や復旧期間、企業が行うべき事前対策と対処方法を解説

台風の襲来に伴い、広範囲にわたる停電が発生することがあります。特に大型台風の場合、停電が長期化するケースも少なくなく、企業の事業継続に著しい支障をきたす事態となります。本記事では、台風によって停電が発生する主な原因や、企業が講じるべき対策、実際に停電が発生した場合の対応方法について解説します。

台風で停電が発生する原因

台風による停電は、主に以下の要因によって引き起こされます。

電力設備の損傷

台風による停電の主な原因のひとつに、強風による電力設備の損傷があります。強風によって発生した倒木が電柱を倒壊させたり、飛来物が送電線を切断したりする被害が多く見られます。また、落雷による変電設備の損傷や浸水による電気設備の故障も、広範囲の停電を引き起こす原因となっています。

安全機能の作動による停電

電力会社の変電所には漏電や感電事故を防止するため、電気設備の異常を検知すると自動的に送電を停止するシステムが備わっています。また、台風による洪水や高潮の危険がある地域では、二次災害を防止するために電力会社が計画的に停電措置を実施することもあります。これらの安全対策も停電の原因となります。

台風による停電の復旧期間

台風による停電が発生した場合、復旧までの期間はどの程度かかるのでしょうか。

2019年9月に発生した台風15号では、千葉県千葉市で最大瞬間風速57.5m/sを記録する猛烈な勢力で関東地方を直撃しました。この台風により最大約93万軒に及ぶ大規模停電が発生し、特に千葉県では、倒木による電柱の損壊が各地で発生したことから、完全復旧までには約12日間を要しました。

復旧にかかる時間は、台風の規模や被害の範囲、停電の原因などによって大きく異なります。しかし、このような過去の事例からも明らかなように、企業としては長期停電を前提とした対策を講じることが必要不可欠です。

停電が企業活動に与える影響

台風による停電は、企業活動にさまざまな深刻な影響をもたらします。その影響は多岐にわたり、事業の継続性を大きく左右します。

データ損失のリスク

台風による停電でサーバーやPCが突然シャットダウンすることにより、保存していない作業中のデータが失われる可能性があります。これは企業にとって重要な情報資産の喪失につながりかねません。

セキュリティの脆弱化

台風停電時には防犯カメラやオートロックなどのセキュリティシステムが機能を停止することで、物理的なセキュリティが低下します。これにより企業の資産や情報が危険にさらされる恐れがあります。

職場環境の悪化

空調・換気設備が停止することで室内環境が悪化し、断水を伴う場合にはトイレが使用できなくなる可能性もあります。また、エレベーターや自動ドアが作動しなくなることも考えられます。特に高層階では、階段を利用した移動や、物資の運搬が必要になり、大きな影響が出ることでしょう。

通信手段の制限

台風停電時には充電設備が使用できなくなることで、スマートフォンやノートPCのバッテリーが切れてしまい、取引先や従業員との連絡が取れなくなるおそれがあります。これは事業継続において致命的な障害となります。

帰宅困難者の発生

台風時は公共交通機関が麻痺することが多く社員が帰宅できなくなる事態も考えられます。こうした帰宅困難者に対して、会社での宿泊対応が必要になるでしょう。

台風シーズン前に企業がすべき停電対策

過去の例でもわかるように、大規模災害ともなると数日間以上にわたる長期の停電が予想されます。このようなことを想定し、企業としてもできる限りの対策を講じておかなければなりません。台風シーズン到来前に、企業として実施すべき具体的な対策を紹介します。

非常用電源の確保

停電時の重要な対策のひとつが、代替電源の確保です。モバイルバッテリーや蓄電池を用意することで、緊急時の電力供給源として活用できます。従業員数や重要機器の稼働時間を考慮して必要な容量と台数を算出し、ノートPC、スマートフォン、照明などの電源確保に役立てましょう。

より大規模な対応として、サーバーやネットワーク機器には無停電電源装置(UPS)、長期停電に備えた発電機の導入も有効です。これらの設備は、台風シーズン前に定期点検を行い、いつでも使用できる状態に保っておくことが重要です。

蓄電池について詳しくは、「企業が蓄電池を導入するメリットとは?災害時以外の活用方法も紹介」をご覧ください。

通信手段の確保とデータ保護

インターネット接続は、光回線とモバイル回線など異なる種類の接続方法を用意するといいでしょう。いずれかの通信経路が遮断された際にも、もう一方の連絡手段を確保できます。また、重要なデータは定期的にクラウドへバックアップする体制を構築しましょう。顧客管理システムや会計などの重要業務システムはクラウドサービスに移行することで、社内のサーバーが停電の影響を受けた場合でも、外部からリモートでアクセスできるようになります。

防災備蓄品の整備

台風による停電が長期化した場合でも、社員や関係者が社内に安全にとどまれるよう、最低3日分の防災備蓄品を準備しておくことが重要です。代表的な防災備蓄品には、次のようなものがあります。

  • 照明器具 : LEDランタン、懐中電灯、予備電池
  • 食料・水 : 保存水(1人あたり1日3L)、非常食(1人あたり1日3食分のアルファ米や缶詰など)、カセットコンロ
  • 衛生用品 : 携帯トイレ、トイレットペーパー。ウェットティッシュ、マスク、救急セット、毛布

停電時でも安全に加熱調理ができるアイテムは、社内待機が強いられる場合には、心身の健康維持に特に役立つでしょう。たとえば、ヒートパック(少量の水だけで食品を加熱できる)やWILLCOOK(モバイルバッテリーで加熱できる)などです。

関連記事 もしもの時でも温かい食事を持ち運べる電子レンジ「WILLCOOK」

備蓄品は、賞味期限切れによる無駄を防ぐため「ローリングストック法」で管理するといいでしょう。

ローリングストック法や備蓄品の適切な目安量については、「ローリングストック法とは?企業が実施する際のポイントも解説」「企業における防災備蓄品‐必要量の目安と選定のポイントは?」の記事で詳しく解説しています。

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備蓄・施設状況に応じた商品を防災・減災へのノウハウを持つ防災士がご提案いたします。

従業員の出社判断・行動基準の周知

停電により会社と連絡が取れなくなった場合でも、公共交通機関の運行状況や気象警報などの客観的指標に基づいて各自が適切な判断ができるよう、出退勤ルールを定めておきましょう。また、帰宅困難時の社内待機基準や代替オフィスへの移動手順なども含めたマニュアルを整備し、定期的な訓練で従業員の理解を深めることで、台風時の混乱を最小限に抑えることができます。

ここで紹介した対策は、事業継続計画(BCP)の一部として位置づけることで効果を発揮します。BCPについては、「BCP対策とは?その目的と取り組む際の流れを解説」 で詳しく解説しています。

停電や台風への対策については、「停電に対する企業の備えとは?損失を回避するための対策を解説」 「台風対策は万全?企業における被害のリスクと具体的な対策について解説」でも詳しく解説しています。

停電発生時・復旧後の対処方法

事前対策と同様に重要なのが、停電が発生した際の対応手順です。被害を最小化し早期の業務再開へと導くための対処方法について、停電発生時と復旧後に分けて解説します。

停電発生時の対処方法

停電が発生した際には、担当者は以下のような対応を行いましょう。適切に行うことで、二次被害を防ぎ、安全を確保することができます。

  • ブレーカーを落とす

ブレーカーが入ったままの状態では、停電中に倒れた電気機器が再通電することで火災が発生したり、損傷した配線から火花が散って引火したりする通電火災の発生リスクがあります。このようなリスクを防ぐために、停電時にはまずブレーカーを落とすことが基本的な対応となります。ただし、緊急時には手動でブレーカーを落とすことが難しい場合もあります。そうしたケースに備えて、地震の揺れを感知して自動的に電気を遮断する「感震ブレーカー」の設置も有効です。

  • 被災状況の確認と情報収集

支店や営業所、店舗など各事業拠点への影響を把握するため、停電の被害状況や範囲を調査します。最新の情報を入手することで、復旧の見通しを立てやすくなります。

複数の拠点がある場合には、電力会社のWebサイトで停電情報を確認すると効率的です。個別の状況確認に時間をとられることなく、迅速に広域の被害状況を把握できます。

  • 二次被害の防止

ブレーカーを落とすだけでなく、PCや電化製品などの電源コードをコンセントから抜いておきましょう。また、切れた電線やぬれた電気製品、壊れたコンセントなどがあれば、それらに触れないよう社内へ周知することも重要です。

  • 社員への避難・待機の呼びかけ

停電による火災が発生している場合には、社屋の外へ避難するよう呼びかけます。一方、停電以外の異常がなく、外部よりも社屋内の方が安全と判断される場合は、社屋内での待機を呼びかけ、社員の安全を確保します。

停電復旧後の対処方法

停電が復旧した際には、慎重な対応が必要です。特に注意すべき点は以下の通りです。

  • 通電火災の防止

停電復旧時には、電熱器具から可燃物への引火や、損傷・水濡れした配電設備からの出火リスクが高まります。ブレーカーを入れる前に、すべての電源コードがコンセントから抜かれていることを確認し、安全を確保しましょう。

  • 段階的な機器復旧

一度にすべての電気機器に通電を行うと、電力供給が不安定になり、ブレーカーが落ちるおそれがあります。業務上の重要度に応じて機器に優先順位をつけ、時間をおいて段階的に電源を入れていくことが必要です。重要システムの正常起動を確認した後、計画的に業務を再開することで、安全かつ効率的な復旧が実現できます。

  • 機器の安全確認

台風により水濡れや物理的な損傷を受けた機器は、専門家による点検が完了するまで使用を控えることが重要です。安全確認を怠った機器の使用は、単なる故障にとどまらず、火災や感電などの重大な二次災害を招くリスクがあります。被害が疑われる機器は、専門家の判断を仰ぐことを優先しましょう。

【参考】

【関連コラム】企業が蓄電池を導入するメリットとは?災害時以外の活用方法も紹介
【関連コラム】企業における防災備蓄品‐必要量の目安と選定のポイントは?
【関連コラム】ローリングストック法とは?企業が実施する際のポイントも解説

停電の長期化に備え万全の準備をしておこう

台風による停電が発生した場合、被害状況や範囲によっては停電が長期化する可能性があります。こうした事態に備えて、企業は十分な量の防災備蓄品を用意するとともに、停電発生時と復旧後の適切な行動手順を事前に計画し、全従業員に周知しておくことが重要です。

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