【落雷による停電】発生原因や企業活動への影響とは?対処法と備えを解説

台風などの気象災害とは異なり、落雷は突発的に発生し、その予測が困難です。落雷による停電は、企業活動に広範な影響を及ぼすため、事前の備えと発生時の迅速な対応が求められます。本記事では、落雷による停電の原因と企業活動への影響を解説します。さらに、実際に停電が起きた際の対処法と被害を最小限に防ぐための備えについても紹介します。

落雷による停電の発生原因

落雷が停電を引き起こす原因には、主に2つのパターンがあります。

直撃雷による停電

直撃雷とは、送電線や電柱、建物などに雷が直接落ちることを指します。この際、数万〜数十万アンペアの巨大な電流が一度に流れることにより、送電設備が物理的に破壊され、広域停電を引き起こすことがあります。

また、直撃雷は、瞬間的な過電圧である「雷サージ」を発生させます。雷サージとは、通常の電圧を大きく上回る異常電圧のことです。これが、配電設備を経由して、電子機器の故障や電源異常を引き起こします。

誘導雷による停電

誘導雷は、雷が近くに落ちた際に周囲の電線や金属体に電磁誘導によって電圧が発生する現象です。この誘導電圧も、雷サージとして電力系統に伝わります。直撃雷ほどではありませんが、誘導雷によるサージも電力系統の制御装置に影響を与え、一時的な停電や瞬時電圧低下(瞬低)などの電源異常を引き起こします。瞬低とは電圧が一瞬だけ低下する現象で、0.1秒程度の短時間でも機器の誤作動につながります。

こうした誘導雷によるサージは電子機器の制御システムを誤作動させることがあり、電力供給の不安定化や停電につながることもあります。

落雷による停電が企業活動へ与える影響

落雷は、直接的な停電や電気的異常を引き起こし、企業の事業継続を脅かします。具体的には、以下のような影響があります。

データの消失・破損

サーバーやストレージ機器が雷サージによって瞬間的に停止した場合、保存中のデータが失われたり、ファイルが破損したりすることがあります。特に、書き込み処理中のデータベースは高いリスクにさらされます。

ネットワーク機器の故障

社内LANやインターネット接続機器が損傷すると、社内外との通信が途絶え、クラウドサービスの利用やリモートワークが困難になります。ルーターやスイッチなどのネットワーク機器は電源ポートだけでなく、LANポートからも雷サージが侵入する可能性があり、二重のリスクにさらされています。

業務システムの障害

オフィスや工場、店舗などで使用される業務システムや制御機器が雷サージや電源品質変動の影響を受けると、正常な業務遂行が妨げられます。業務システムは、わずか0.1秒の瞬低や瞬断でも再起動が発生し、復旧までに数十分を要することがあります。

複数システムが連携している場合、一部の機器だけが再起動することでデータの不整合が発生し、全システムの再起動や手動復旧作業が必要になるケースも少なくありません。このような障害は、顧客対応の中断やサービス提供の遅延を引き起こし、業務効率の低下や機会損失につながります。

落雷による停電が発生した際の対処法

落雷による停電が発生した場合、企業防災担当者は迅速かつ適切な対応をとることで、被害を最小限に抑え、早期に事業を復旧させることができます。ここでは、停電発生時の初動対応を解説します。

被害状況を確認する

停電発生後、まずは従業員の安全確保を最優先します。エレベーターの閉じ込め確認や、危険区域(機械設備周辺など)の立入制限を行います。

次に、停電の範囲(社内全体か、特定のフロア・部署のみか)を確認し、落雷が原因であるかを判断します。広域停電の場合は、電力会社のウェブサイトや災害情報アプリなどを利用して、停電の原因と復旧見込み時間を確認します。

ブレーカーを落とす

停電が確認されたら、各部署の主要なブレーカーを落とします。これは、停電復旧時に発生する可能性がある通電火災や、サージ電流による機器損傷を防ぐためです。

ただし、社内だけの局所的な停電の場合は、対応が少し異なります。安全ブレーカーだけが落ちている場合は、機器のプラグを抜いてからブレーカーを元に戻し、電源の復旧や機器が使用可能かを確認します。しかし、漏電ブレーカーが落ちている場合は危険信号です。漏電している回路は使用せず、専門家に修理を依頼してください。どちらの場合も、まず電子機器のプラグを抜いてから、ブレーカー操作を行うのが安全です。

重要機器のコンセントを抜く

停電中でも電力が残っている機器については、正常にシャットダウンさせ、ブレーカーを落とすのと同様に電源コードをコンセントから抜いておきましょう。特に、サーバーやデータベースは、データ破損を防ぐため正規の手順で停止させます。また、未使用の電子機器については、電源プラグをコンセントから抜いておくことで、復電時のサージ電流から保護できます。

重要業務の継続可否を判断する

停電の規模や復旧見込み時間に基づいて、業務継続の可否を判断します。完全停止すべき業務と、継続すべき重要業務を明確に区分し、利用可能なリソース(電力・人員・通信手段など)を重要業務に集中させます。常用発電機や蓄電池システムなどの非常用電源がある場合は、燃料残量や起動手順を確認し、安全に運用を開始します。

帰宅・待機判断の指示を行う

停電が夜間や悪天候時に発生した場合、従業員の安全な帰宅や待機について明確な指示を出します。公共交通機関の運行状況、周辺の安全状況、復旧見込み時間などを考慮して判断します。

停電復旧後の対処方法

電力が復旧した際には、安全確認を行ったうえで、計画的に機器を再稼働させることが重要です。特に、以下の点に注意しましょう。

通電火災の防止

停電復旧時には、電熱器具から可燃物への引火や、損傷・水濡れした配電設備からの出火リスクが高まります。ブレーカーを入れる前に、すべての電源コードがコンセントから抜かれていることを必ず確認してください。特に、コピー機やプリンターなど発熱する機器のコンセントは確実に抜いておく必要があります。

段階的な機器の復旧

一度にすべての電子機器に通電を行うと、電力供給が不安定になり、ブレーカーが落ちるおそれがあります。業務上の重要度に応じて機器に優先順位をつけ、時間をおいて段階的に電源を入れていくことが必要です。まず、照明や空調など基本設備から復旧させ、次にネットワーク機器やサーバー、最後に一般的な業務用PCや周辺機器という順序で復旧させると安全です。

機器の安全確認

落雷により物理的な損傷を受けた機器は、専門家による点検が完了するまで使用を控えることが重要です。安全確認を怠った機器を使用すると、単なる故障にとどまらず、火災や感電などの重大な二次災害を招くリスクがあります。重要システムの正常起動を確認した後、安全を確認しながら、業務を再開させましょう。

落雷による停電の被害を最小限にするための備え

落雷による停電は予測が難しいものの、日頃からの適切な準備によって被害を大幅に軽減することができます。ここでは、企業が実施すべき3つの備えを紹介します。

非常用電源の確保

停電時の重要な対策のひとつが、代替電源の確保です。企業規模や業種に応じて、適切な非常用電源を導入しましょう。大規模施設では自家発電機の設置を検討し、中小規模の事業所ではコンパクトな発電機やポータブル蓄電池が有効です。

サーバールームや重要設備には無停電電源装置(UPS)を導入し、瞬低や瞬断からも保護します。これらの設備は定期的な点検と動作確認を行い、燃料や充電状態を常に確認しておくことが重要です。

発電機や蓄電池については、下記の記事で詳しく解説しています。

企業が蓄電池を導入するメリットは?災害時以外の活用方法も紹介

重要機器とデータの保護

落雷による雷サージから企業の機器やデータを守るため、複数の保護対策を講じることが重要です。建物の受電設備には避雷器の設置を検討し、分電盤にはサージ防護デバイス(SPD)を導入します。重要なサーバーやネットワーク機器には専用のサージプロテクター付き電源タップを使用し、LANケーブルやアンテナ線にも適切なサージプロテクターを設置しましょう。

また、重要なデータは定期的にクラウドへバックアップする体制を構築することも必要です。

防災備蓄品の整備

災害時や停電時に公共交通機関が乱れた場合、一時的に社内待機が必要になるケースも考えられます。そのため、保存水(1人あたり1日3L分)、非常食(1人あたり1日3食分のアルファ米や缶詰など)、携帯トイレ(1人あたり1日5回分)などを最低3日分用意しておくことが推奨されます。

停電時でも安全に加熱調理ができるアイテムは、心身の健康維持に役立ちます。例えば、ヒートパック(少量の水だけで食品を加熱できる)やWILLCOOK(モバイルバッテリーで加熱できる)などを用意しておくといいでしょう。

防災備蓄品については、「企業における防災備蓄品‐必要量の目安と選定のポイントは?」にて詳しく解説しています。

落雷による停電リスクに事前に備えよう

落雷による停電は突発的に発生するものですが、適切な事前準備と的確な対応で被害を最小限に抑えることができます。企業の防災担当者は、停電発生時と復旧後の対応について理解し、冷静に対処することが求められます。同時に、日頃から非常用電源の確保や防災備蓄品の整備などの備えをすることで、企業の事業継続力を高めることができるでしょう。 ジョインテックスカンパニーでは、防災備蓄品を中心に約1,400アイテムを掲載した「危機対策のキホン」カタログをご用意しております。企業の防災対策のために、ぜひご活用ください。

前回は落雷とも関連深い「台風」に関するコラム記事を更新しています。落雷への備えと合わせてぜひ、お読みください。