介護施設や老人ホームに防犯・監視カメラは必要?設置メリット・注意点

昨今の介護業界では、入居者の事故や外部からの侵入など、日々さまざまなリスクへの対応が求められています。こうした課題への対策として防犯・監視カメラの導入は有効ですが、プライバシーへの配慮や職員の心理的負担など、導入前に整理すべきポイントも少なくありません。
本記事では、防犯カメラの必要性から設置時の注意点、コストの抑え方まで、導入を検討する担当者が押さえておきたい情報をまとめました。
目次
介護施設や老人ホームで防犯・監視カメラが不可欠とされる背景
介護施設や老人ホームでは、入居者の安全確保や運営の透明性がこれまで以上に求められるようになっています。統計データや現場の課題から、防犯・監視カメラへの関心が高まっている理由を見ていきましょう。
施設内事故の現状
厚生労働省「令和6年度 高齢者虐待防止法に基づく対応状況等に関する調査結果」によれば、養介護施設従事者等による入居者への虐待判断件数は1,220件、4年連続の増加となっています。
また、公益財団法人 介護労働安定センター「介護サービスの利用に係る事故の防止に関する調査研究事業」報告書(平成30年3月公表)によると、施設内事故の約6割は転倒・転落が占めています。
こうしたデータが示すように、介護施設における安全対策の強化は避けられない課題です。防犯・監視カメラの設置は事故の状況把握や原因究明に役立ち、再発防止にもつながることが期待されます。

出典:令和6年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果|厚生労働省

出典:「介護サービスの利用に係る 事故の防止に関する調査研究事業」 報告書 | 公益財団法人 介護労働安定センター
人材不足をカバーする物理的な備え
厚生労働省の推計では、2026年度には約25万人の介護人材が不足するとされており、現場はまさにその渦中にあります。限られた職員で施設全体を見守るには、物理的な限界があるのが現実です。
特に深夜の人手が少ない時間帯は外部からの不法侵入に対する脆弱性が高まるため、警戒を強めなくてはなりません 。玄関や窓にカメラを置くことは犯行を断念させる効果を生み出し、入居者や職員の生命や財産を守るための有効な対策のひとつといえるでしょう。
参考:第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について|厚生労働省
防犯・監視カメラが職員の身の潔白を証明する
カメラの存在は職員を監視するためではなく、むしろ職員の正当な介助を証明する手段となります 。介護現場では家族からの不当なクレームが発生しやすく、記録がない状況では精神的に追い詰められることも珍しくありません 。記録が残ることで、職員が安心して働ける環境づくりにつながります。
介護施設や老人ホームに防犯・監視カメラを導入する4つのメリット

介護施設や老人ホームがカメラ設置によって得られる具体的な4つのメリットについて、詳しく見ていきましょう。
(1) 入居者の安全確保
入居者の転倒や体調の急変は、職員がその場にいないわずかな時間にも起こり得ます。特に夜間帯や死角になりやすいエリアでは、どれだけ注意を払っていても目が届かない場面もあるでしょう。
カメラを設置することで、こうした場面でも入居者の様子を確認でき、異変があった際の迅速な対応が可能になります。職員によるケアを補完する仕組みとして、入居者の安全性の向上につながります。
(2) 不審者の侵入抑制
施設内の出入り口や駐車場にカメラを設置することは、外部からの不審者に対する強力な抑止力として機能します。録画されている事実が心理的な壁となり、犯行を未然に防ぐ確率が高まるため、セキュリティレベルを高められます。
(3) 不適切なケア・内部不正の抑止
介護現場では過度なストレスから、入居者への不適切な対応や物品の持ち出しといった不正が起きるリスクを排除しきれません。カメラの存在はこうした不適切な行為を抑制し、健全な職場環境を維持するための抑止力となります。
(4) トラブル発生時の証拠確保
入居者同士の紛争や家族からの問い合わせがあった際、客観的な記録がない状況では事実確認に多大な時間を要してしまいます。カメラの録画記録があれば、いつ何が起きたのかを正確に把握できるため、施設・職員・入居者それぞれの立場を守ることにつながります。事実を共有して適切な説明を行うことは、関係者との信頼を維持するだけでなく、原因の究明や再発防止策の策定にも役立つでしょう。
【エリア別】防犯・監視カメラの効果を最大化する設置ポイント一覧

カメラ設置による防犯効果を最大化するには、設置場所に応じた機種選びと、死角を作らない配置が重要です。ここでは、効果的なセキュリティ計画を立てるための具体的な基準を紹介します。
| 設置場所 | 設置の狙い | 必須スペック |
| 玄関・受付 | 不審者侵入の把握・業者対応の記録 | 高解像度、顔認証、夜間対応 |
| 駐車場・通用口 | 外部侵入経路の監視・迷惑行為の防止 | 防水・防塵、広角レンズ、暗視機能 |
| 廊下・共有スペース | 内部トラブルや不適切ケアの防止 | 音声録音、動体検知通知 |
| 事務室・貴重品庫 | 現金・個人情報・備品の持ち出し防止 | 連続録画、デジタルズーム |
防犯・監視カメラ導入のデメリット

メリットが多い一方で、導入・設置に伴うリスクや運用上の負担についても正しく理解しなければなりません。以下の3つの視点から、施設が直面しやすい具体的な課題と対策について整理していきましょう。
プライバシー侵害のおそれがある
介護施設は入居者の生活の場であるため、安易な設置はプライバシーの侵害を招くおそれがあります 。特に浴室やトイレなど個人の尊厳に関わる場所への設置は避けるべきとされています。安全の確保だけでなく、プライバシーの保護に配慮した慎重な判断が求められます。
心理的ストレスが増加する可能性がある
カメラの存在は職員に「監視されている」という心理的な圧迫感を与え、職場環境を悪化させる一因になりかねません。信頼関係が揺らぐと職員の意欲が低下し、離職者の増加を招く事態も予想されるのです。事態を防ぐには、設置の目的が職員の粗探しではなく、彼らの身を守るための盾であることを誠実に伝え、相互理解を深める努力を継続しなければなりません。
導入・運用費用が発生する
カメラ本体や工事を含めた導入費用は、1台あたり約2万円から8万円が一般的な目安となっています。クラウド型を選択した際は、これに加えて月額千円から3千円程度のデータ保存料が発生します。
さらに、長期的な保守費用や修理費も無視できない負担となります。特にレコーダー型はハードディスクの寿命に伴う定期的な交換が必要なため、管理の手間が発生するのです。数年先まで見越した予算配分をあらかじめ検討しておくことが賢明です。
防犯・監視カメラ導入をスムーズに進めるためのポイント

運用ルールの整備
導入後のトラブルを回避するには、肖像権やプライバシーを保護する運用ルールの明文化が不可欠です。最低限定めるべき項目は以下の通りです。
- 目的の明示: 防犯や安全確保のためであることを利用目的として通知する
- 書面による同意: 入居者、その家族、職員から同意書を取得し記録に残す
- 閲覧権限の制限: 映像を確認できる人物を特定し、不正アクセスを防止する
- データの管理: 保存期間を定め、期間終了後は速やかにデータを消去する
- 周知の徹底: カメラ作動中であることを示すステッカーを掲示する
居室は入居者の生活空間であるため、原則としてカメラを設置しないのが一般的です。ただし、虐待の疑いがあるなどやむを得ず設置する場合は、撮影範囲を最小限に絞る配慮が必要です。プライバシーマスク機能を使えば、映像内の特定の範囲を黒塗りにして映らないよう設定できるため、たとえばベッド周辺だけを対象とし、着替えの動線は映さないといった運用が可能になります。家族が個別にカメラを持ち込みたいと希望する際も、運用ルールを施設側と書面で事前に合意しておくことがトラブル防止のために必要となります。
職員・家族への説明
カメラ導入にあたっては、職員と家族の双方から理解を得ることが必要です。次のポイントで進めるとよいでしょう。
- 職員への説明
職員に設置を説明する際は、一方的に通達するのではなく、彼らの安全を守るための措置であることを丁寧に伝える姿勢が求められます。不当な疑いを持たれた際、映像がなければ身を守ることができませんが、カメラがあれば事実を示して潔白を証明できるメリットを強調するといいでしょう。閲覧権限者を限定するルールを明示すると安心感があります。
- 家族への説明
入居者の家族から同意を得る際は、設置の目的、撮影範囲、映像の保管期間、および閲覧権限者を明記した同意書を作成しておくと安心です。データの取り扱いや流出防止策を併記することで、プライバシーへの不安を払拭し、同意を得やすくなる傾向があります。無理に承諾を迫るのではなく、施設全体の安全を高めるために協力を求める形で提案することが、信頼関係の醸成につながるでしょう。
コスト抑制の方法の検討(リース・レンタル、助成金の活用)
自社の状況に合わせて、次のように導入方法を使い分けることでコストを抑えることができます。
- 一括購入: 長期間の使用において総額を最も抑えられるため、資金力がある法人に適している
- リース契約: 月々の支払いを一定額に抑えられるため、まとまった初期費用の確保が難しい場合に有力な選択肢となる
- レンタル: 短期間の利用や常に最新機種を使いたい場合に、初期投資を抑えて導入できる。
また、カメラの設置に際しては、自治体が補助金・助成金を提供しているケースがあります。活用することで、自己負担を大幅に軽減できることが期待できるのです。申請は工事の発注前に行うことが条件となるため、募集期間を事前に確認し、計画の初期段階で窓口へ相談することが手続きをスムーズに進めるポイントとなります。
安心と安全をデザインし、信頼される施設運営を実現するために

防犯・監視カメラの設置は、入居者の安全、職員の保護、施設運営の透明性を支えるインフラです。ただし導入にあたっては、プライバシーへの配慮、職員・家族との合意形成、コスト計画の3点を押さえることが欠かせません。
ジョインテックスカンパニーでは、防犯用品をはじめとする約1,500アイテム掲載の危機対策のキホンカタログにて、カメラ各種を取り扱っております。「カメラの導入はまだハードルが高い」という施設には、窓やドアに貼るだけで侵入を検知できる「窓ピタッアラーム」など、手軽に始められる防犯グッズもご用意しています。施設の状況に合わせて、まずはできるところから安全対策を始めてみませんか。
プラス株式会社ジョインテックスカンパニーが運営する、企業向け防災・BCP情報サイト「キキタイマガジン」運営事務局です。
キキタイマガジン内の掲載コンテンツについては、特定非営利活動法人日本防災士機構より認証を受け、一定の知識・技能を有する弊社防災士が監修しております。
介護施設や老人ホームの防犯・監視カメラの設置に関するよくある質問
Q1.老人ホームの居室にカメラを設置することは法律違反(違法)になりますか?
設置自体に違法性はありませんが、「プライバシー権」の侵害に当たらないよう配慮を欠かさないようにしましょう。居室は入居者の生活の場であるため、設置目的を明確にし、本人および家族からの書面による同意が必須となります。また、特定の時間や場所を映さない「プライバシーマスク機能」の活用が推奨されます 。
Q2.職員に「監視されている」と思われず、協力的に導入を進めるには?
「ミスを見張るため」ではなく、「事故発生時の正しい状況把握(職員の正当性の証明)」と「不当な疑いの回避」という、職員側のメリットを丁寧に説明することが重要です。導入前に意見交換会を行い、閲覧ルールを明確に定めることで、心理的な抵抗感を減らすことができるでしょう。
Q3.録画データは一般的にどのくらいの期間保存すべきですか?
事故やトラブル発覚までのタイムラグを考慮し、2週間から1ヶ月程度保存するのが一般的です 。保存期間が長くなるほどクラウド費用やハードディスク容量が必要になるため、施設の状況とコストのバランスを見て判断してください。短すぎると事件発覚時にデータが上書きされているおそれがあるため注意しましょう。
Q4.補助金の申請はどのタイミングで行えばよいですか?
多くの補助金・助成金は「着工(購入)前」の申請が必須です。すでに発注・設置した後の申請は受理されないケースが大半であるため、検討段階で必ず自治体の窓口や販売業者に確認してください。


