【企業向け】冬の防災対策|備蓄品からBCP策定、効果的に進めるポイント

大雪や寒波による停電、交通麻痺など、冬の災害は企業活動に深刻な影響を及ぼします。特に暖房が使えない状況での長時間待機は、従業員の健康を直接脅かすおそれがあります。 こうしたリスクは、防寒備蓄品の整備やBCPの見直しといった事前の備えによって大きく軽減できます。本記事では、冬の災害で企業が直面するリスクと、具体的な対策のポイントを解説します。
目次
企業に冬の防災対策が必要な理由
冬は大雪や寒波、路面凍結など、企業活動に影響を及ぼす災害が発生しやすい季節です。近年は、関東や九州などこれまで雪の少なかった地域でも突発的な大雪が発生しており、冬季災害への備えは全国的な課題となっています。
冬の災害のなかでも大雪による被害と対策については、「企業の雪害対策とは?大雪による被害の種類と事業継続のための備えを解説」で詳しく解説しています。
企業が冬の防災対策を進める目的は、大きく「従業員の安全確保」と「事業継続」の2つです。
安全配慮義務の観点
企業には、労働契約法第5条に基づく安全配慮義務があります。安全配慮義務とは、従業員が安全かつ健康に働けるよう必要な配慮を行う義務のことで、平常時だけでなく災害時にも適用されます。冬季は寒さや感染症など従業員の健康を脅かす要因が増えるため、冬特有のリスクに対応した備えを講じることが、この義務を果たすうえで欠かせません。
事業継続の観点
冬の災害では、停電や交通障害によって業務停止が発生するおそれがあります。復旧にも時間を要しやすいため、被害を最小限に抑えるための事前対策が重要です。
冬の災害で企業が直面する具体的なリスク

冬の災害は、凍結や寒さによる直接的な被害に加え、設備被害や倒木による停電を引き起こすこともあります。企業が直面する具体的なリスクには、次のようなものがあります。
低体温症や感染症による健康被害
冬季に停電によって暖房が停止すると、オフィス内の温度が大きく低下する可能性があります。寒い環境で長時間過ごすことで、低体温症を引き起こすおそれがあり、特に高齢もしくは持病のある従業員は重症化しやすいため注意が必要です。
また、冬はインフルエンザやノロウイルスなどの感染症が流行しやすい時期でもあります。災害時に多くの従業員が同じ空間で待機する状況では、集団感染が発生するリスクも高まります。
停電・交通麻痺による事業停止
停電が発生すると、PCやサーバー、通信機器が使用できなくなり、業務の遂行に影響が出るおそれがあります。
さらに、積雪や路面凍結によって公共交通機関の運休や道路の通行止めが発生すると、従業員の出社・帰宅が困難になり、業務に必要な人員を確保できなくなるおそれがあります。物流にも影響が及び、原材料の調達や商品の配送が滞ることで、製造や販売、サービス提供に支障が出るケースもあります。
冬の災害に備えて企業が取り組みたい対策
企業が冬の災害に伴うリスクに備えるために、取り組むべき具体的な対策を紹介します。
備蓄品の整備
冬特有のリスクに備えるために、基本的な備蓄(非常食、保存水、携帯トイレなど)に加え、以下のような備蓄品を用意します。
公共交通機関や迂回路が限られるエリアでは、従業員が長時間滞在する可能性が高くなります。そうした立地のオフィス・事業所では、備蓄品の量を多めに確保したり、寝袋やコットなどより長時間の滞在に対応できるアイテムを加えたりすることも検討しましょう。また、通常の備蓄に上乗せとなるため、保管スペースや数量をあらかじめ計画しておくことが大切です。
基本的な防災備蓄品の種類や必要量については、「企業における防災備蓄品‐必要量の目安と選定のポイントは?」や「防災備蓄品の準備で企業が抱えがちな悩みと解決するためのポイント」で詳しく解説しています。
防寒グッズ
寒さへの備えの基本は、体温を保持するためのアイテムです。代表的なものを紹介します。
- アルミシート



薄くて軽いため、備蓄しやすいのが大きな利点です。体から放射される熱を反射することで保温効果を発揮します。近年は、「カサカサ」とした音の出にくい静音タイプも登場しており、多人数がオフィス・事業所で一晩過ごすような場面でも使いやすくなっています。毛布・ブランケット・寝袋等と比較すると保温力は低いため、帰宅支援での使用を想定する場合に選択するとよいでしょう。
- 毛布・ブランケット・寝袋



保温力が高く、体を包み込む安心感があります。かさばるため、保管スペースが限られる場合は、圧縮パックで保管するといった工夫が必要です。帰宅困難者がオフィスに一晩以上滞在する可能性がある場合には、寝袋の備蓄も有効です。保温性が高く、床から伝わる冷気の影響を受けにくいため、寒い環境でも体温を保ちやすいという特徴があります。特に、代謝が低く体温の維持が難しい女性や高齢の従業員が在籍する場合は、備蓄を検討しましょう。
- コット・簡易ベッド



床冷えによる体温の低下を抑え、毛布・ブランケット・寝袋の保温効果を高めることができます。また、災害時のオフィス・事業所は土足で出入りすることも多く、床に直接横になるのは衛生面で懸念があります。コットや簡易ベッドで高さを確保することで、衛生的な休息環境を整えることができます。
- 使い捨てカイロ


手軽に配布でき、比較的低コストで備蓄しやすい防寒用品です。電源を使わずに体を温められるため、停電時の寒さ対策として役立ちます。
ただし、保管期間には限りがあるため、定期的に使用期限を確認し、入れ替えを行うことが重要です。
- 湯たんぽ


お湯を使って体を温められ、繰り返し使用できます。毛布やアルミシートと併用することで、寒さ対策を強化できます。
使用にはお湯が必要となるため、断水時や給湯設備が停止した場合は利用が制限される可能性があります。
- ストーブ・燃料


カセットガス式や灯油式のストーブを備えておくと安心です。いずれも室内で使用する場合は一酸化炭素中毒のリスクがあるため、定期的な換気ルールをあらかじめ決めておきましょう。
温かな食事を確保する備え
冬季災害では、冷えた保存水やそのまま食べる非常食によって体が冷えやすくなる場合があります。暖房が停止した環境で温かい食事を確保できるかどうかは、従業員の寒さによる体力低下や不安感を抑えるうえでも重要です
- カセットコンロ、カセットガス



お湯を沸かしてアルファ米やカップスープ、味噌汁などを調理できます。簡易的な調理手段として役立ちます。お湯を沸かして非常食に使用する方が少ない備蓄と時間で多くの人に温かい食事を提供でき、調理用の湯沸かし以外にも、体を拭く、湯たんぽのお湯を沸かすなど多用途に使用することができます。
- 発熱剤付き非常食



水を注ぐだけで加熱できるタイプの非常食です。火や電気を使わずに温かい食事を用意できるため、停電時にも利用しやすい特徴があります。
- 発熱剤



専用袋に発熱剤と水を注ぐことで、レトルト食品や缶詰などを加熱できます。レトルト食品やレンジ対応ペットボトル、缶詰などを同時に温めることも可能で、非常食の選択肢を広げることが可能です。食事に配慮が必要な従業員がいる場合や複数人の食事を加熱する運用を行う際に活躍します。
感染症対策グッズ
冬はインフルエンザやノロウイルスなどの感染症が流行しやすくなります。オフィス・事業所での長時間待機では、感染リスクがさらに高まるため、下記を備えておきましょう。
- 不織布マスク
- アルコール消毒液・除菌シート
- 使い捨て手袋
- ペーパータオル
- ゴミ袋(汚物処理用)
除雪用具
オフィスや事業所へのアクセス確保のため、下記を備えておきましょう。
- 長靴
- 除雪用スコップ
- 融雪剤
- 滑り止め用の砂・マット
- 除雪機
建物・設備の点検
冬は積雪や凍結によって建物・設備が損傷するリスクが高まります。シーズン前に以下のポイントを確認しておきましょう。
- 屋根・建物の耐雪性能
特に老朽化した箇所を中心に確認が必要です。雨どいや排水の詰まりは、積雪や凍結で被害が拡大しやすいため、あわせて点検しておくことをおすすめします。
- 水道管
水道管の凍結破裂は、冬に多発するトラブルのひとつです。保温材の劣化がないか確認し、必要に応じて凍結防止ヒーターの設置も検討しましょう。年末年始など長期休業期間中は建物内の温度が下がりやすいため、水抜き手順の周知や管理体制の確認も忘れずに行っておきたいポイントです。
冬季BCPの策定・見直し
BCP(事業継続計画)とは、災害などの緊急事態が発生した際に、事業の継続や早期復旧を図るための計画のことです。
すでにBCPを策定している企業でも、冬特有のリスクを想定した内容になっているか改めて確認しておきましょう。
BCPについては、「BCP対策とは?基礎知識から策定手順、運用のポイントまでわかりやすく解説」で詳しく解説しています。
主なポイントは、以下の通りです。
- 出社・帰宅の判断基準
「積雪◯cm以上で在宅勤務に切り替え」といった具体的な基準を設け、判断フローを関係者間で共有しておくことで、当日の混乱を軽減できます。
- 帰宅困難者の受け入れ体制
何名が何日間滞在する想定で備蓄量を確保するのか、滞在スペースはどこを使うのかを事前に決めておきましょう。女性専用の休憩スペースの確保や持病のある方への配慮など、要配慮者への対応も検討しておくと安心です。
- 非常用発電機の導入・運用方法
非常用発電機は、複数フロアの照明や通信設備など広範囲の電力を確保する必要がある場合に役立ちます。導入にあたっては、運用面の準備も欠かせません。優先的に稼働させる設備の選定、燃料の備蓄量の確保、操作担当者の決定、訓練を事前に行っておきましょう。
非常用発電機については、「発電機と蓄電池の違いは?特徴、非常用電源としてどちらを選ぶべきかを解説」で詳しく解説しています。
冬の防災対策を効果的に進めるためのポイント

備蓄品の整備やBCPの策定は、一度やって終わりではありません。対策を形骸化させず、いざという時に機能させるために、運用上のポイントを整理します。
冬季環境を想定した備蓄品の管理
冬場は寒さによって備蓄品の性能が低下する点にも注意が必要です。例えば、ペットボトルの保存水は氷点下で凍結することがあり、使い捨てカイロは低温環境では十分に発熱しにくくなる場合があります。さらに、ポータブル電源のバッテリー容量が低下したり、カセットガスの火力が弱くなったりすることもあります。
こうした不具合を防ぐための対応としては、下記が考えられます。
- 凍結や低温の影響を受けやすいアイテムは、空調の効いた室内や断熱性の高い倉庫に移す
- 冬季シーズン前に、動作確認を行う
- 低温に弱いアイテムは寒冷地仕様の製品に切り替える
確認結果は記録に残し、不具合が見つかった場合は備蓄計画に反映するサイクルを回しておくと安心です。
なお、備蓄品の更新・入れ替えの方法については、「ローリングストック法とは?企業が実施する際のポイントも解説」「非常食の入れ替え方法とは?手順と運用負担を減らすポイントを解説」で詳しく解説しています。
冬季を想定した防災訓練の実施
BCPや備蓄計画は、策定しただけでは十分に機能しません。「暖房なし・停電」といった状況を想定した訓練を行うことで、災害時の対応手順を確認できます。
訓練では、防寒対策品の数が不足している、非常食の調理や配布に想定以上の時間がかかるといった、計画段階では見えにくかった課題が明らかになることもあります。訓練後は課題を整理し、BCPや備蓄計画へ反映することが大切です。
本格的な訓練が難しい場合は、「大雪で交通機関が停止した」といった想定で対応手順を確認する机上訓練からはじめる方法もあります。
机上訓練については、「机上訓練とは?図上訓練との違いやメリット、手順、実施のポイントも解説」で詳しく解説しています。
冬の防災対策で、寒さ・雪害に備えよう

冬の災害は、寒さによる健康被害や停電・交通麻痺など、他の季節にはないリスクを企業にもたらします。こうしたリスクに備えるには、防寒グッズや除雪用具といった備蓄品の整備、建物・設備の点検、そしてBCPの策定・見直しを組み合わせて進めることが重要です。
「何を優先して備蓄すべきかわからない」という場合は、まず現状の備蓄内容を棚卸ししてみるとよいでしょう。
ジョインテックスカンパニーでは、冬の防災用品をはじめとする約1,500アイテム掲載の危機対策のキホンカタログにて、アルミシートや毛布、非常食など企業向けの防災備蓄品を各種取り扱っております。まずは現在の備蓄内容を確認し、自社の冬の防災対策を見直すきっかけにしてみませんか。
プラス株式会社ジョインテックスカンパニーが運営する、企業向け防災・BCP情報サイト「キキタイマガジン」運営事務局です。
キキタイマガジン内の掲載コンテンツについては、特定非営利活動法人日本防災士機構より認証を受け、一定の知識・技能を有する弊社防災士が監修しております。
企業が実施すべき冬の防災対策に関するよくある質問
Q1. 冬季の備蓄品の保管場所はどう選べばいいですか?
冬場は倉庫や屋外に近い場所の気温が下がりやすく、保存水の凍結やカイロの発熱不良、ポータブル電源のバッテリー低下といった備蓄品の不具合につながることがあります。凍結や低温の影響を受けやすい備蓄品は、できるだけ室温が保たれる場所を選びましょう。あわせて、1箇所にまとめず複数フロアに分散して保管しておくと、被災時にも取り出しやすくなります。
Q2. アルミシートと毛布はどちらを備蓄すべきですか?
どちらか一方ではなく、併用がおすすめです。アルミシートは軽量・安価で全員分を備蓄しやすく、毛布は保温力が高いという特長があります。アルミシートを全員分+毛布を一定数という組み合わせが、コストと保管スペースのバランスが取りやすい方法といえそうです。
Q3. 冬季のBCP見直しはいつ行うのがベストですか?
冬季シーズン前の9〜10月頃に見直しを行うのが理想的です。このタイミングであれば、備蓄品の補充や訓練の実施にも余裕を持って対応できます。毎年同じ時期に見直すサイクルを定着させることで、対策の形骸化を防ぎやすくなるでしょう。


