自然災害の種類と特徴とは?企業活動への影響や取り組むべき対策を解説

地震や台風、豪雨などの自然災害が頻発し、企業活動への影響が懸念されています。このような状況下で適切な防災対策を講じるには、まず自然災害の種類とそれぞれの特徴を理解することが不可欠です。本記事では、企業の防災担当者向けに、自然災害の基本的な種類や企業活動への影響、対策を詳しく解説します。

自然災害の種類

自然災害とは、地震、津波、火山噴火、台風、豪雨、洪水、土砂災害、雪害などの自然現象によって引き起こされる災害のことを指します。

防災科学技術研究所は、日本全国で発生する自然災害を以下の6種類に分類しています。

災害種別災害種別詳細
1. 地震地震、津波、遠地津波、液状化
2. 火山噴火、溶岩流、火砕流、泥流、降灰、噴煙、噴石、噴気・ガス、その他の火山活動
3. 風水害洪水、強風、大雨、高潮、台風、竜巻、降雹(表)
4. 斜面災害表層崩壊、土石流、斜面崩壊、地すべり、落石・落盤
5. 雪氷災害大雪、雪崩、融雪、着雪、吹雪、流氷
6. その他気象災害長雨、干害、日照不足、落雷、冷害

※参考:国立研究開発法人防災科学技術研究所「災害事例データベース」

人為災害・特殊災害・複合災害との違いや関係

自然現象が原因となって発生する自然災害に対して、人間の活動が原因となる災害として「人為災害」と「特殊災害」があります。

人為災害とは、人間の活動や技術的な要因によって発生する災害で、火災、爆発、交通事故、産業事故などが該当します。

特殊災害とは、自然災害、人為災害以外の災害で、化学(Chemical)、生物(Biological)、放射性物質(Radiological)、核(Nuclear)、爆発物(Explosive)の英語の頭文字を取って「CBRNE災害」とも呼ばれます。テロや大規模な化学物質漏洩事故などが含まれます。

さらに、これらの災害が同時発生や連鎖的に起こる「複合災害」も多く発生しています。例えば、地震によって原子力発電所が損傷し放射能漏れが起きる場合や、豪雨によって工場から有害物質が流出する場合などがそれに該当します。

企業の防災対策を検討する際は、単一の災害だけでなく、こうした複合災害のリスクも考慮に入れることが重要です。特に製造業や化学工業では、自然災害が引き金となって二次災害が発生するリスクが高いため、より慎重な対策が求められます。

自然災害への備えが重要な理由

日本は地理的・地質的特性により、世界でも有数の自然災害多発国として知られています。近年は地球温暖化の影響により、台風の大型化や豪雨の激甚化・長期化が進んでおり、従来の想定を超える災害が頻発しています。

さらに、今後30年以内に約80%の確率で発生するとされる南海トラフ巨大地震や、同じく約70%の確率とされる首都直下地震など、大規模な災害リスクが高まっています。

参考:地震災害 : 防災情報のページ – 内閣府

このような状況下で、企業にとって自然災害への備えが重要な理由は、次の通りです。

事業継続への直接的な影響

災害による事業所やインフラの損壊は、操業停止やサービス中断を引き起こします。設備の破損、在庫の喪失、物流の混乱により、売上減少や取引先・顧客離れに直結し、復旧にかかるコストも含めて企業経営に深刻な影響を与える可能性があります。

従業員の安全確保

企業は従業員の安全を守る責任を負っています。災害時の対応が不十分であれば、人的被害だけでなく社会的信用の失墜にもつながります。

また、従業員の安全確保の取り組みは、地域全体の防災力を高めることにもつながります。災害時には避難拠点としての役割を果たすことができ、CSR(企業の社会的責任)やESG経営の観点からも重要です。

【自然災害別】特徴と企業への影響

主な自然災害について、種類別に特徴と、企業活動への影響について解説します。

地震・津波

日本では、4つのプレートが複雑に重なり合う地理的特性により、世界の地震の約10%が発生しています。地震はそれ自体の揺れによる直接的な破壊だけでなく、津波や液状化といった二次的な災害を誘発し、企業や地域社会に複合的かつ広範な影響を及ぼします。

地震による企業への影響は多面的です。建物・設備の損壊やインフラの寸断といった直接的被害に加え、津波による設備の完全破壊・流失、液状化による地盤沈下、サプライチェーンの広域・長期間寸断など、他の災害では見られない複合的な影響を企業に与えます。特に津波による塩害は電気設備の復旧を困難にし、事業再開までに長期間を要する原因となります。

風水害(台風・豪雨・洪水・竜巻等)

風水害は台風、集中豪雨、洪水、竜巻、高潮など多様な種類があります。

台風は、進路や強度の予測が可能であるため、事前対策を講じることができます。一方、近年増加している集中豪雨は、局地的かつ短時間で発生し、突発的な被害をもたらします。洪水は、台風や前線による長時間の降雨で発生し、浸水被害が広範囲かつ長期化する傾向があります。竜巻や高潮は発生から被害発生までの猶予が短く、対応の難しい災害です。

ゲリラ豪雨については、「ゲリラ豪雨とは?発生のしくみや想定される被害、企業が行うべき備えを解説」で詳しく解説しています。

企業への影響は、建物・設備の損壊、停電・通信障害による業務停止、交通機関の運休・道路の寸断による物流麻痺など多岐にわたります。地下施設を有する企業では、浸水リスクが高いので注意が必要です。都市部では、下水道の処理能力を超える降雨により内水氾濫が発生し、建物内への浸水被害が発生しやすくなります。また、高潮は沿岸部の物流拠点に深刻な影響を及ぼし、竜巻は局地的ながら甚大な被害をもたらします。

台風や水害については、「台風で停電発生!原因や復旧期間、企業が行うべき事前対策と対処方法を解説」「水害によって想定される被害とは?企業がとるべき対策のポイント」で詳しく解説しています。

土砂災害(がけ崩れ・地すべりなど)

日本は国土の約7割が山地・丘陵地で構成されており、急峻な地形と脆弱な地質条件により土砂災害が発生しやすい環境にあります。主に、大雨や地震を引き金として発生します。近年は宅地開発の拡大により、山間部や丘陵地の急傾斜地にも住宅地や事業所が建設され、土砂災害の危険にさらされる地域が増加しています。

土砂災害では、事業所が土砂により完全に埋没・破壊される可能性があります。また、アクセス道路の寸断により事業所が孤立状態となり、従業員の避難や救助活動、復旧作業が困難になります。土砂の除去には大型重機や長期間を要するため、事業再開までの長期間を要する場合もあります。

火山噴火

日本は環太平洋火山帯に位置し、多くの活火山を有しています。火山噴火は地下のマグマが地表に噴出する現象で、噴火の規模や様式によって影響範囲が大きく異なります。火山災害の最大の特徴は、火山灰の広域拡散により噴火地点から数百キロ離れた地域でも深刻な影響を与えることです。

企業への影響として、火山灰による精密機器・電子機器の故障、航空機の運航停止による物流・人流の広域麻痺があります。また、噴石や火砕流による直接的な破壊に加え、微細な火山灰が機械設備に侵入し、復旧後も長期間にわたって設備トラブルが発生する可能性があります。

雪害・その他気象災害(大雪・落雷など)

冬季には日本海側を中心に大雪による被害が発生します。近年は地球温暖化の影響で気象現象が極端化し、記録的な大雪や異常な高温・低温、落雷の激化などが頻発しています。これらは季節性があるものの、発生時期や規模の予測が困難な場合もあります。

企業への影響として、大雪による建物倒壊の危険性、交通・物流網の寸断、除雪費用・暖房費などの運営コスト大幅増加があります。落雷による電子機器・システムの突発的故障は、復旧費用の増大を招くばかりか、データ損失による事業継続への影響が大きい災害です。

企業が取り組むべき自然災害対策

企業がさまざまな自然災害に備えるために、以下の対策を実施することが重要です。

ハザードマップによる災害リスクの評価

企業の立地する地域のハザードマップを活用して、自然災害のリスクを把握することが対策の出発点となります。ハザードマップから想定される被害規模や避難経路を確認し、自社の建物・設備・インフラの脆弱性を評価します。リスク評価の結果を踏まえて、耐震補強・浸水対策・設備の移設など、優先度の高い対策から段階的に実施することが重要です。

ハザードマップについては、「ハザードマップとは?見方や種類、防災担当者がチェックすべきポイントを解説」で詳しく解説しています。

業務継続計画(BCP)の策定

業務継続計画(BCP)は、災害やテロなどの緊急事態が発生した際に、企業が重要な事業を継続または早期復旧するための戦略的な行動計画です。策定時には、まず災害時でも継続すべき中核事業を特定し、必要な人員・設備・システムと、それぞれの代替手段を明確にします。

BCP策定後は、定期的に防災訓練を実施し、定着を図ります。訓練で見つかった課題や事業環境の変化、実際の災害事例から得られた教訓を踏まえて継続的に計画を見直し、改善を重ねていくことが必要です。

BCPについては、「BCP対策とは?基礎知識から策定手順、運用のポイントまでわかりやすく解説」で詳しく解説しています。

防災備蓄品の整備

災害時に従業員の安全を確保し、事業の継続性を高めるためには、防災備蓄品の適切な整備が欠かせません。

食料・飲料水・携帯トイレ・非常用電源・衛生用品などを揃え、従業員数や立地条件、想定される災害の種類・規模を考慮して必要量を算定します。適切な保管場所や保管方法を決めます。

また、備蓄品の品質維持のため定期的な点検・更新を行い、消費期限の管理や入れ替えを計画的に実施することが重要です。いざという時に確実に活用できる体制を整えます。

防災備蓄品については、「企業における防災備蓄品‐必要量の目安と選定のポイントは?」で詳しく解説しています。

自然災害の特徴を理解したうえで適切な対策を

災害はいつか起こるものではなく、必ず起こるものとして捉え、平時からの備えを怠らないことが企業防災の基本です。自然災害の種類と特徴を理解し、リスク評価からBCPの策定、防災備蓄品の整備まで幅広く取り組むことで、災害に強い企業体質を作ることができます。

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